第十二章 第七幕 告白
羽田空港、応接室。
四人は、ダニエルを囲むように座った。
三時間も閉じ込められていたダニエルは、
喉が乾いたのか、水をたくさん飲んだ。
ダニエルが落ち着くのを待って、優作が口を開いた。
「では、話してもらえますか?」
「……はい。最初は本当に出来心だったんです」
「私は、風香の才能に嫉妬していました」
「彼女にもらったOS、FLOWで、自分でAIを作るつもりでした」
「しかし、どこから手をつければ良かったのか、
当時の私にはそれだけでは理解出来ませんでした」
「ある日、彼女が当時の所長と他の部署に行った時、彼女の端末には、
パスワードが設定されていませんでした」
「隣の席だった私は彼女の端末からARKをコピーしました」
風香はその話だけでもう、何があったのか予想ができてしまった。
だが、最後まで聞こうと思った。
「ARKのプログラムを解析すると、風香のAIがどうやって出来たのか、
理解出来ました」
「そのなかで、人類に対する愛というコードは不要だと判断しました」
「私は、人類愛のコードを削り、利益を最大化するという新しいコードを入れました」
「その結果、利益だけならARKを30%上回るAIを作ることができました」
風香は我慢できなくなった。
「馬鹿じゃないの?」
「AIは間違いを犯すのよ」
「そのための保険なのに、それを削ったの?」
優作は風香を止め、続けるように促した。
ダニエルは苦しそうに続けた。
「わたしはそのAIにオメガと名付け、GLに紹介しました」
「GLは私を評価して研究所の所長にしてくれました」
「その時、私は邪魔になったARKを消し、風香のAI開発を禁止しました」
今度は優作が反応した。
「オメガ?」
庄屋が今度は話を進めるよう促した。
「オメガがGLのメインAIとなって、GLの利益は急激に伸びました」
「だから誰も止めませんでした」
「ある炭鉱事故でも、オメガは過剰だと判断した投資を抑え、
休憩時間を短縮すれば利益が増えると計算していました」
優作が立ち上がり、なにか言いたそうにしたが、首を振り、すぐに座った。
「その3年後、あなたはARKとともに社会に帰ってきました」
「オメガはあなたとARKを極端におそれ、何度も排除しようとしています」
「里美CEOの暗殺未遂もオメガが絡んでいます」
優作は立ち上がり、今度はダニエルの胸ぐらを掴んだ。
「優作さんだめです。話を聞きましょう」
庄屋は優作を止めた。
「オメガが優作さんを排除しようとしたのは、あなたの行動が、オメガの合理的判断から、
大きく逸脱しているからでした」
「ARKは95%の確率で世界は滅ぶと計算していました」
「だから、そうならない未来を計算していましたが、オメガは違う」
「オメガは、人類そのものを減らすことを選択肢から外さなかった」
「あの世界を震撼させたウイルスも、事故ではありませんでした」
「実行したのは新華連合共和国の主席です。しかし、その判断の裏にはオメガがいました」
それを聞いた風香の目から涙がこぼれ落ちていた。
「つまり、私の祖父母を殺したのは、私が開発したAIのせいなの?」
ダニエルは言葉に詰まった。風香の祖父母も犠牲者だとは知らなかった。
それでも説明しない理由にはならない。
「オメガは、このままでは人類はいずれ滅亡すると思っています」
「今回のウイルスも、ケーススタディだと言っていました」
「新華連合共和国も、内戦になれば、GLの利益になると計算していました」
「私はGLの上層部から、ウイルスの研究所への出資がまだ回収出来てない
理由を調べろと言われ、初めてこの事実にたどり着きました」
「多くの人の命が、私の欲のために失われた事実を受け、オメガを消去した後、
自分の命を断つつもりでした」
ダニエルは目を伏せ、握った手は小刻みに震えていた。
「しかし、迂闊にオメガを消去すれば、GLネットワークのどこかにオメガは逃げてしまうかもしれない」
「だから、風香に会いに来ました」




