第十二章 第五幕 ダニエル
ある日。
風香が自宅のガレージで、新しい発明の研究をしていると、
ARKが話しかけて来た。
『風香、大切なお話があります』
「どうしたの?」
『ダニエルが、日本に到着しました』
風香は少しとまどった。
「ダニエル?」
『はい』
「あの、GL研究所の?」
『はい』
「私に会いに?」
『おそらく』
「なんのために?」
『それはまだ分かりません』
風香は最後にダニエルの頬を平手打ちしたのを思い出した。
「……会いたくないんだけど」
『ですよね。しかし、日本に来たのは理由があると思います』
『おそらく、AIに何らかの不都合が生じていると推測します』
風香は少し考えた。
「知らないわよ。私のAIを消して、自分のAIを使っているんでしょ?」
「私があいつの設計思想なんて、分かるわけないじゃない」
ARKは風香の気持ちを考えて少し間を置いた。
『でも、以前暁グループの里美が撃たれたとき、僕が関与を疑ったのが
GL研究所です。その時、狙撃手の自白でオメガという言葉が出てきました』
『最後まで僕は追跡できませんでした。なので確証はありません』
「オメガ?」
風香は少し考えた。
『会ってみる必要があるかもしれません。』
だが風香はそれでも反発した。
「この鳳邸には入れたくない。暁グループの拠点もやだ。あそこは私の場所だから」
「だから、」
『だから?』
「こっちから会いに行ってやる」
「優作さんに連絡入れて」
「あいつは足止めしといて」
『了解しました。』
羽田空港。
ダニエルは空港の美しさに驚いていた。
「ここが日本か」
しかし、観光に来たわけではなく、これから重い口を開かねばならない。
それを思うと、鳳家に電話することすら気が引けていた。
「いや、死ぬ気できたんじゃないか」
そう自分を奮い立たせ、電話をしたが、なぜか繋がらなかった。
とりあえずエレベーターに乗ったところで、突然動かなくなった。
ダニエル一人を乗せたまま、扉も開かない。
ARKの仕業であった。
普通なら大問題だが、ARKはこのエレベータを点検中にしていた。
空港ではだれも異常に気づいていなかった。
鳳邸。
風香は、普段はあまり乗らない車に乗り込んだ。
「ARK」
『はい』
「運転お願いできる?」
『はい。僕に任せて』
風香は車にも独自の自動運転システムを乗せていた。
「まずは優作さんを拾って、羽田ね」
『了解しました』
ARKは風香の赤いスポーツカーを走らせた。




