第十二章 第一幕 バイク仲間
その日、庄屋は立花モーターズの前に、影山と共に立っていた。
「本当にいいのかな?旧車って調べたけど、かなり高価なんだろ?」
庄屋は影山を不安そうに見た。
「立花の親父さんがいいって言ってるのだからいいんですよ」
「全く、羨ましいくらいです」
立花モーターズのシャッターから藤三郎が出てきた。
「……来たか」
「それで、免許は取ったんだろうな?」
藤三郎はジロリと庄屋を見た。
「はい。なんとか手に入れました」
庄屋は大型免許を藤三郎に見せた。
「ふ、ふふ、やるじゃねぇか」
藤三郎は嬉しそうだった。
「こいつはへそ曲がりだから、大事に乗ってくれ」
「お前は、3代目の正義の悪党だ」
そういうと、藤三郎はZ1を店の奥から引っ張り出してきた。
「俺じゃだめなんですか?」
影山が羨ましそうに言った。
「……」
藤三郎は何も答えなかった。それが答えだった。
庄屋はエンジンを掛けてみた。
一発でエンジンがかかる。
藤三郎の口角があがった。
「あらためて、すごいな」
庄屋はつぶやいた。
影山が言った。
「早速ツーリング行きたいっすね」
庄屋はアクセルを少しだけ捻った。
フゥオーーン
気持ちが良かった。
そこに風香がサイクロンで走ってきた。
「おはよう」
風香はヘルメットを脱ぎながらそう言った。
そして、目がギョッとなった。
それは、藤三郎が毎日磨いて大切にしているバイクに、
庄屋が跨っていたから。
風香は藤三郎へ顔を向けた。
「お父さん。いいの?」
藤三郎は一言だけ、
「ああ、やっとだ」
そう答えた。
風香は、庄屋の前に行き、
「Z1は私が子供の時からずっとあったの。よろしくね」
風香は庄屋にそう伝えた。
「立花さん、大切にします。ありがとうございます」
庄屋は立花に頭を下げた。
フォーン、影山がZ2のエンジンを掛けた。
「ツーリング行きましょうよ、今日は休みだし」
そう言った。
「私も一緒に行きたい」
風香は慌ててそう言った。
よく考えたら、誰かとツーリングに行くことは今までなかった。
これは大チャンスだと風香は思った。
しかし、
「ちょっと待て」
藤三郎が止めた。
風香は少し悲しい気分になった。
次の瞬間
藤三郎は自分のバイクを引っ張り出してきた。
「俺も行く」
臨時休業の札をシャッターにぶら下げて、
四人で初ツーリングに行くことになった。




