第十一章 最終章 本当の技術者
ダニエルは研究所に戻ってきた。
オメガの端末を開くと、
まだ、YES,NO の表示が出たままだった。
とりあえず、その端末は静かに閉じて、
別の端末で、作業をすることにした。
「……大丈夫、俺はまともだ」
ダニエルは自分に言い聞かせた。
キーボードに手を乗せたが、
目を閉じて思考の海に沈んだ。
ここで、オメガを消去しようとしても、その基本モデルの性質上、
おそらくGLネットワークのどこかに逃げる。
ARKの例からも、それは分かっていた。
つまり、GLネットワークがある限り、オメガは死なないのだ。
問題なのは、GLネットワークも世界中に張り巡らされていることだった。
GLには、通常のインターネットとは切り離された独自の基幹ネットワークがある。
世界中のGL施設を結んでいるが、機密保持のため外部には開かれていない。
「……だめだ、逃げられてしまう」
ダニエルはキーボードから手を離した。
ダニエルには、開発者権限でオメガから見えない保守領域があるが、
それでも第二命令——自分の身を守る。
それを外せなかった。
下手にいじると、またとんでもないことになる。
「これはもう、命懸けなんだ」
自分ではオメガを制御できない。
もう、本当の開発者に会いに行くしかないと思った。
ベースモデルを作った人間なら、わかるかもしれない。
もう、技術者としての恥もプライドもどうでも良かった。
街で見かけた小さな赤ん坊を守れるなら、それで十分だった。
ダニエルはGLに長期休暇申請をし、その足で日本へ旅立った。




