第十一章 第九幕 人類愛
オメガに突きつけられた問いに、ダニエルはイラついていた。
AIのくせに、バカなのか?
YESを押すわけがない。
そう思った。
……しかし、
「その5%に俺は入っているのか?」
一応聞いてみた。
『もちろんです。私のメンテナンスはあなたしか出来ません』
オメガの機械音がそう告げた。
ダニエルは静かに目を閉じた。
「……少し、考えさせてくれ」
ダニエルはオメガの端末を閉じて、研究所から外に出た。
ダニエルはまだ答えが出せなかった。
いや、まだ認めたくなかった。
俺のせいか?
いいや、違う、そうではないはずだ。
一息入れて、戻れば、何かいいアイディアが出るかもしれない。
外に出ると、空は晴れていた。研究所は丘の上に建っていた。
風がからだを包むのがわかる。
小さな風車が回っていた。
そこから眺める街には、確かに人の息づかいを感じた。
車で街まで降りていくことにした。
そこは多くの人で賑わっていた。
車の音、人々の声、笑い声。
スーパーに行くと、無愛想な店員や、いがみ合う客がいた。
こんな連中なら、消えてもいいだろうかと考えた。
だが、近くに赤ん坊を抱いた女性が泣き出したその子をあやしていた。
とても小さな命だった。
「……」
この子は5%に入るのだろうか?
この子に生きる権利はあるのだろうか?
オメガはどうやって選別するのか?
ここでダニエルは思い出した。
人類愛。自分が削った変数だった。
「……バカは俺自身だった」
ダニエルは丘の上の研究所を見た。
「……これが俺の墓標か」
ダニエルはそう呟いた。




