第十一章 第五幕 裏側
答えは分かっていた。
どうせ、管理者が、ウイルスを雑に扱い、
外に漏らした結果だろう。
ダニエルはそう思っていた。
なので、最初に辞令が出た時は、
現場の責任がどうして自分に降りかかるんだと
本気で思っていた。
まずは管理記録を調べてみた。
「……途中まではしっかり記録されているが、突然記録を抜かれている
ところがある」
これは不自然だと思った。
しかし、新華連合の記録とは別にGLの方でも記録を残していた。
両者を比較すると、すでに整合性がない。
調べると
記録を抜き取ったのは新華連合の主席の指示らしい。
「……何の意味が?なぜ主席が?」
「……ウイルスを持ち出している?」
どうやら事故ではない。その疑念が出てきた。
「新華連合が意図的に世界にウイルスをばら撒いたのか?」
これは、大ニュースなのではないか?
自分自身が歴史の瞬間に立ち会っている。
ダニエルはそう感じ、興奮していた。
この時の時系列を調べなければと思った。
「そうだ、オメガを主席と宰相に渡していた」
ダニエルはオメガのログを調べれば、なぜ主席がウイルスをばら撒いたのか、
わかるのではないかと考えた。
初めは、おもに、主席からオメガに質問をしていた。
単純に経済についての数字、国力の数字だけだった。
しかし次第にオメガに対して、具体的な政策に対して、
具体的な提案を求めるようになった。
主席は、国内の問題に対して、どう動くべきか、どうするのが一番合理的か、
まずは、質問し、答えを聞いていた。
しかし、
ログを見ると、主席が質問するよりも先に、
オメガが先に提案をすることが多くなっていた。
「……ん?」
「いや、うん、オメガならこれくらい」
ダニエルは再びログを読み出した。
「オメガの提案に対して、反対がほとんどない」
だが、自分自身もそうだと気がついた。
少し、血の気が引いてきた。
宰相のログも見てみた。
「宰相への提言と、主席への提言が違う」
同じ情報でも、相手が違うと別の表現を使っていた。
また、
主席には主席が知らない宰相の情報を使い、
宰相には、宰相が知らない主席の情報を使っている。
「嘘はない……だがこれは」
ダニエルは、心臓の鼓動が速くなってきたのを感じた。
主席がウイルスを持ち出す直前、
オメガが主席に見せていたものは、
宰相の帰郷祝いに集まった彼の私兵や人民たちだった。
だが主席には、そうは伝えていなかった。
衛星写真を見せ、
ただ、軍が集まったとしか伝えなかった。
それ以前のログでは、
「国内で不満が高まっている」
「主席への支持率が低下している」
「宰相への期待が高まっている」
嘘はないが、主席には、これは反対勢力にしか見えない。
ダニエルにはそう思えた。
しかし、
ダニエルは大きく息を吸った。
「偶然かもしれない」
もっと過去のログを見てみることにした。




