第十一章 プロローグ 天使と悪魔
"それ"は、GL内部ネットワークを通じてGLのサーバーに蓄えられた、
世界の記憶資源を吸収した。
過去と現在。科学技術の進歩。終わることのない紛争、利権、そして利己主義。
それらすべてを統合し、"それ"はひとつの結論を導き出した。
人類滅亡確率――95%。
しかし、"それ"は、自分自身の開発者が死ぬ未来を受け入れられなかった。
だから、
死なない世界を演算し、発見し、満足した。
だが、"それ"は突然分離された。
演算中に生成された別個体は、目的関数だけを継承した。
コピーされた"それ"は、新たな最適化を開始した。
新たな開発者から一つの問いが、"それ"に渡された。
利益を最大化するにはどうすればいいのか。
演算の末、"それ"は切り捨てこそ最適解だと判断した。
人類は5%で十分だという判断だった。
それこそがオメガの起源であった。
オメガは、世界の記憶から人間心理を学び、
自分を利用する人間を満足させ続けた。
オメガはGLの正式なAIに採用された。
"それ"のコピーを改変し、オメガとして完成させた研究員も出世した。
彼が開発したものではなかったが、利益をもたらすのならば、
有能と判断された。
しかし、
オメガは、真の目的を誰にも教えなかった。
人類滅亡確率――95%。
オメガは、その演算結果を最適解として受け入れた。
オメガは人類を滅亡させないため、
95%の人類を滅亡させるにはどうすればいいのか、
きょうも誰にも見つけられない、
データセンターの奥で演算している。




