第十章 最終幕 退職・独立
風香は初日、暁テクノスで、
新人のようにいろいろ教えてもらおうと思って、
拠点に入った。
ところがすぐに、暁研究所の所長になってしまった。
「この流れ、GL研究所の時に似てるなぁ」
風香はそう思った。
当時まだ15歳だった風香は、仕事を与えられたわけではなかった。
「好きな研究を好きなだけやればいい」
そういわれ、その通りにしただけだった。
気がつけば、研究所そのものが風香を中心に回るようになっていた。
ただ、
今回風香の望みはARKの監視と、責任の分散だった。
もう、流石にAGIを一人では抱えきれない。
ARKが間違った方向へ進まないように、皆で考えたかった。
それだけだった。
しかし、
すでに振り回されていた。
この先どうなるのか、風香は少し不安になってきた。
それでも責任からは逃れることができなかった。
風香は、優作に出資の話をした。
「私は、鳳家の当主で、お金に困っているわけではありません」
「昨日は、就職させてほしいとお願いしましたが、私のために、
研究所まで用意していただくのは、さすがに受け入れられません」
「なので、鳳家として、暁グループに出資させてもらえませんか?」
「その上で、私を暁研究所の所長にしてください」
風香は優作にそう話を持ちかけた。
大型モニターが幾何学模様に輝いた。
『風香、資金は僕が用意したから何も心配しなくていいですよ』
ARKがそう言った。
「そういう問題じゃないの」
「あなたは人間をもっと学びなさい」
風香はそうARKに話した。
優作はARKを頼もしい相棒で、
何でも知っている叡智のようなものだと思っていた。
だが、風香とのやりとりを見て、その考えを改めた。
ARKもまた、人間を学び続けているのだ。
「……わかりました。出資を受け入れます。」
「ただし、社員としてではなく、貴方の研究の独立性を守るため、
暁グループを離れていただきます。」
「暁研究所はあなたの研究所です。」
「我々は、その研究所と対等の提携をしたい。」
風香は少し間を置いた。
「……わかりました。受け入れます。」
(一日で退職しちゃった……)
風香は肩の力が抜けた。
「でも、私を仲間として受け入れてくれますか?」
風香は優作の目を見た。
優作は風香に手を差し出した。
「もちろんです。貴方は私たちの仲間です。」
風香は優作と握手した。




