第十章 第九幕 暁研究所
風香が暁グループに参加することが決まった。
次の日
優作が拠点に出勤し、会議室のデスクに座ると、
大型モニターに幾何学模様が現れ、
次の瞬間、暁商店街のマップが表示された。
『優作、暁商店街、霧島警備の隣に空き家があります』
「……ああ、そうだな」
『風香は、世界最高水準のAI技術者ですが、
その能力を最大限引き出す必要があります。』
「……」
優作はまずはARKの話を聞くことにした。
『研究効率を最大にするには風香専用の研究施設が必要になります。』
『暁商店街の空き店舗を活用すれば、街の活性化にも活かせます。』
『そして、霧島警備の隣なら風香の安全を確保しやすくなります。』
一緒に話を聞いていた瀬戸は
風香が私を守りなさいとARKに言っていたことを思い出した。
瀬戸は苦笑いをした。
「ARK、わかりやすいぞ」
『……』
『私は論理的に必要なことを言ったまでです。』
優作は全て聞いていた。
「だが、全てその通りだな」
『さすがです』
「だが……」
優作は間を置いた。
「そのラボを建てる資金はどうする?」
「研究施設なら、かなりの資金が必要だぞ」
『……』
『資金はすでに確保済みです。何も問題ありません』
風香が暁グループに参加が決まったのは昨日。
今日は本人もまだ来ていない。
優作は眉を顰めた。
「……どういう意味だ?」
『風香が優作に会うと言い出した時点で、
優作が風香を受け入れる可能性は高いと判断しました。』
『そのため、資金を私が捻出するよう事前に動きました。』
優作はモニターの幾何学模様をみながら、少し考えた。
「俺の時には、働けと言ったじゃないか」
優作はぼそっと聞こえないように言った。
『……優作、聞こえました。』
『当時の優作は自分の足で立つ必要がありました。』
『風香には、今研究施設が必要です。』
『どちらも私の最良の一手です。』
優作は両手を組んで口元を隠し、今までのことを思い出していた。
「……わかった。了承する」
風香が初出勤すると、自分のラボが用意されると聞いてびっくりした。
「私、そんなの要求していないですよ」
風香はあわてて、瀬戸に話した。
瀬戸は優作の方を見た。
それから風香に話した。
「朝、優作さんが席についたら、全てARKが準備していた。」
風香は頭から血が引いていく感覚がした。
「申し訳ありません」
瀬戸は笑いながら、
「いや、もう決定したことだから、それに、これは正しい決断だ。」
「私の仕事は技術を繋ぐことだ。風香や向井さんの技術を繋いで、
新しい何ができるのか、今から楽しみにしているからね」
瀬戸はそう言って席についた。
風香はモニターを睨みつけた。
『風香』
『僕は論理的に必要な用意をしただけです』
『全て暁グループの為の合理的判断です』
風香は何も言えなかった。
瀬戸は風香にこう言った。
「なかなか親孝行な息子だね」
風香の耳は真っ赤になった。
暁商店街は今日も賑わっていた。




