第十章 第一幕 再会
風香は、藤三郎に内緒で、
立花モーターズに行くことに決めた。
祖父母もいなくなった鳳邸はどこか居心地が悪かった。
いつものようにサイクロンに乗り、
暁商店街を目指すも、いつもと様子が違う。
交差点をいくつ通っても、信号は全て赤だった。
「なんで?」風香は戸惑った。
暁商店街までくると、
サイクロンがそれ以上進もうとしなくなった。
「アル、どういうこと?」
『……。』
『現在、その質問には答えられません。』
『帰宅することを推奨します。』
仕方なく商店街の入り口から歩いていくことにした。
すると、サイクロンは自走でついてくる。
「なんなのよ?」風香は訳が分からなかった。
暁商店街の入り口には、Satio スルーという無人コンビニがあった。
店内に入ると
『暁Payの利用を推奨します。』
音声案内が流れる。
風香は勧められるまま暁Payに両替し、ジュースを買った。
「ここだけ別世界みたい。」風香はそう思った。
歩いて行くとみんな振り返って風香を見た。
バイクが後ろからついてくるのだから、目立ってしょうがない。
風香は小走りに立花モーターズを目指した。
店に行くと、藤三郎はバイクを整備していた。
「お父さん。」
そう呼びかけると、藤三郎は一瞬目を見開いた。
「なんで来た。」最初に出た言葉がそれだった。
「会いたかったから来たの。」
風香がそう言うと、藤三郎はそれ以上何もいえなかった。
「お母さんの喫茶店、本当に暁グループの本社になったのね。」
風香は本社の方を見ながらつぶやいた。
「ああ、みんな気のいい奴らばかりだ。」
「わたし、ちょっと挨拶に行ってくる。」
風香は藤三郎にそう言うと、元喫茶店に足を向けた。
本社に入ると、テレビで見たことのある女性が、
コーヒーを淹れていた。
「こんにちは。」風香は少し緊張しながら声をかけた。
里美は振り返ると、穏やかに微笑みながら、
「こんにちは。」と返して来た。
「私、風香と言います。隣の立花の娘です。
いつも父がお世話になっています。」
「立花さんの娘さん?」
里美は驚いた。そんな話を聞いた事がなかったから。
「中にどうぞ、コーヒーは飲めるかしら?」
里美は風香を中の会議室に通した。
中に入ると、庄屋と、優作、それに影山の三人がテーブルを囲んでいた。
その横では赤井が書類をめくっていた。
「……赤井さん?」風香の声に、赤井が振り向いた。
「……風香さん」
それは、本当に久しぶりの再会だった。




