第九章 第九幕 襲名
その日、
赤井のバイクの修理が完了した。
赤井はほっと一息ついた。
真紅のCB400Fourが赤井の愛車だった。
ふと、「あなたの赤いバイクをリスペクトして、赤にした。」
風香の言葉を思い出した。
峠最速を気取っていた自分。
赤いゴーストに勝負を挑んだこと。
その全てが、赤井の黒歴史だった。
「ほんと、リアルドンキホーテじゃねーか。」
自分で自分をつっこんだ。
喫茶ヘブンに入ると、二代目がカウンターから出て来た。
「よう、バイク直ってよかったな。」
「青山さん。ちわっす。」
青山は真面目な顔で言った。
「ちょっと大事な話があるから奥まで来い。」
そこには、ロードキングの旗が飾られた一角があった。
青山はそこに赤井を座らせると、
「最近お前、角が取れていい男になったぞ。」
赤井は少し身構えた。何かあると思った。
「実は俺、この店を親父から継ぐんだわ。」
青山は一度言葉を切った。
「だから、お前に頼みたい。」
「ロードキングの三代目をやれ。」
そう言われた。
赤井は少し考えたが、
「はい。頑張ります。」
そう答えた。
仕事とバイククラブの運営か……。
当分忙しくなるなぁ。
連絡先も聞いていないし、
風香さんとは、しばらく会えそうにないな。
修理されたCBは日の光を受けて輝いていた。
それから数年後。
初代影山の帰還によって、ロードキングは大きな転機を迎える。
その時の物語は、第六章 第四幕で語られている。




