第九章 第八幕 赤井
風香と赤井はロードキングの仲間が来るまで、
しばらく一緒にいた。
サイクロン業の話を聞くほど、赤井は恥ずかしくなった。
峠最速は自分だと自負して、勝負を挑んだのだ。
だが、風香はサイクロンのテスト走行をしていただけだった。
本気で張り合っていた自分が、急に馬鹿馬鹿しく思えて来た。
「君、赤いゴーストって呼ばれているよ。」
赤井は風香にそう言った。
「え?なんで?」風香は驚いた。
「誰も追いつけないほどのスピードで、
コーナーを駆け抜けていくからさ。」
「誤解があるなぁ、全部AIで制御しています。」
「コケないことが分かっていたら、もっと早く走れる人はたくさんいますよ。」
風香は少し笑いながら言った。
「でもね、バイクに乗るのは楽しいし、新しいシステムを考えるのも楽しいの。」
「ね、アル。」
『僕は風香が楽しそうなら、僕も嬉しいです。』アルファが答えた。
赤井は再び驚いた。
「それ、本当にAIなのか……?」
「もちろん。自分で走ることもできますよ。」
そこまで話してハッと我に返り、風香は口元を手で隠した。
風香は、自分でも少し話し過ぎたと思い、「いけない」と心の中で反省した。
しばらくすると赤井の仲間がトラックで現れた。
「あ、仲間が来たみたいですね、じゃあ私はこれで。」
風香は帰ろうとした。
「あの……、また会えるかな?」
少し、照れながら赤井が言った。
「ええ。またどこかで会いましょう。」風香はそう答えると、
エンジンが唸りを上げた。
次の瞬間には、その音はもう遠ざかっていた。
サイクロンは、その名のとおり、
風のように消えていった。
ロードキング二代目の青山がトラックで迎えに来た。
「青山さんあざっす。」赤井が頭を下げた。
「お前がコケるなんてめずらしいな。」
青山は意味ありげに笑った。
「女のケツでも追いかけていたんじゃないのか?」
赤井は否定したかった。
だが、
実際追いかけていたので否定できなかった。
ロードキングのアジト——
喫茶ヘブンの隣にあるガレージへ、
バイクを下ろした。
「ごめんな、無理させた。」赤井はバイクに謝った。
赤井はサイクロンを思い出した。
「お前も喋ったらいいのにな……。」
そう呟いて、赤井は愛車のタンクに手を添えた。




