第九章 第六幕 未来のバイク
その日、
風香は峠に行くのではなく、のんびり海沿いを走っていた。
「気持ちいい。」
アルファは目的地までルートを案内していた。
不思議なことに、信号は一度も赤にならない。
近づくたびに青に変わり、サイクロンは一度も停止することなく
街を抜けていった。
「今日もついてる。」
風香は口角をあげ、心地よい風を受けながら走り続けた。
ふと、前を見ると、信号のない横断歩道で親子が待っている。
サイクロンを静かに停止させた。
それでも風香は足を下ろさない。
ジャイロが車体を支え、サイクロンは微動だにしなかった。
親子が渡り終えると、風香は自動運転モードに切り替えた。
そっとハンドルから手を離し、背もたれに体を預けた。
「アル、あとはお願い。」
『はい。』
サイクロンは心地よい鼓動を響かせながら走り始めた。
赤井が海沿いを流していると、対向車線を真紅のバイクが駆け抜けた。
「奴だ。」
赤井は迷わずUターンし、ゴーストの後を追った。
風香はそれに気がついていなかった。
赤井はゴーストに近づくと、すぐに異常に気がついた。
「……なんだ?」
信号が、一度も赤にならない。
それだけではない。
ライダーがハンドルから手を離し、
背もたれにもたれかかっている。
「どういうことだ?」
赤井は焦った。信号で止まれば話しかけられると思っていた。
だが、
相手は止まらない……。
仕方なく、赤井はついていくしかなかった。
風香は、目的地を通過する前に、いつもとは違う峠道を選択した。
「アル、峠道よ、モードチェンジして。」
『はい。』
サイクロンの車体が静かに変形を始めた。
後ろをついてきた赤井は驚いた。
「な、なんだ、あれ?」




