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第八章 第二十幕 天才の証明
藤三郎は悩んでいた。
「私、大きくなったら、このバイクに乗る」
風香が言った。
確かに魅力的なバイクだ。
だが、
「これに風香が乗るのか?」
藤三郎はなんとも言えない気持ちになった。
せめてもっと止まるバイクにできないか、
曲がらないと怖いじゃないかと思った。
ブレーキを外しては組み直し、
サスペンションを眺めては首を傾げる。
「なんとかもっと止まれんのか。」
「どうすればもっと曲がる?」
毎日、ハーレーの前で工具を握っていた。
ある日、自分の部屋にこもっていた風香が図面を持って現れた。
それは、風香が描いた一枚のバイクの設計図だった。
エンジンだけはハーレー。
しかし、
アンチロックブレーキ。
前後連動ブレーキ。
コーナリングを考えたオリジナルフレーム。
エンジン以外は、
フルカスタムだった。
藤三郎が考えていた欠点は、
全て消えていた。
「私、これがいい」
風香が口角をあげながら、藤三郎に図面を渡した。
藤三郎は驚いた。
そこには、藤三郎が何年考えても形にできなかった、
理想のバイクが描かれていた。
藤三郎は風香を見た。
目を輝かせてこっちを見ている。
図面を見た。
手が震えた。
「……やるしかねぇな。」
藤三郎は静かに覚悟を決めた。




