第八章 十六幕 理由
藤三郎は固まった。
当然喜んでくれるものと思っていたから。
「だから言ったでしょう。」
静香は苦笑いをしながら言った。
風香は自作のパソコンを組み立てる手を止めることなく言った。
「ノックもなしに部屋に入ってくるなんて、ありえない。」
「今、大事なところだから、出ていって。」
藤三郎は、ショックを隠せなかった。
「……。」
何も言えなかった。
そのまま静かに2階から降りてきた。
「おい。」藤三郎は静香に言った。
「なんなんだ、あれは……。」
静香は微笑みながら、
「だから言ったのに。」
「女の子よ、あの子。」
「ちょっと早いけど。」
「女の子はみんな通る道なのよ。」
そう言った。
「あの子、集中したら他は何も見えなくなるの。」
「風香が組み立てているパソコン。」
「あれね。」
「設計したのも、風香なのよ。」
静香はそう言った。
「風香は……八歳じゃないか。」
藤三郎は絞り出すような声で言った。
「アメリカにいるのには、理由があるの」
今度は静香が真剣な顔で言った。
「……。」
藤三郎は、どうすれば風香と距離が近くなるのか考えていた。
とりあえず、藤三郎は客室に通された。
メイドが全てやってくれる。
なんとも落ち着かなかった。
夕食時、やっと風香が姿を見せた。
さっきまでの不機嫌な表情は消えていた。
「パソコン、出来たのか?」
藤三郎は聞いてみた。
風香は嬉しそうに、
「うん。もう少しで完成。」と答えた。
別に拒絶されていないと感じた藤三郎は安心した。
ただ、その様子を見て、静香は一人くすっと笑った。
ダイニングテーブルに3人。
メイドと執事が周りにいた。
それでも、確かに家族が揃っていた。
藤三郎は、それが嬉しかった。




