第八章 第十五幕 My Daughter
藤三郎は静香に連れられて、
アメリカの家、
いや、
屋敷に連れて行かれた。
それは、日本の静香の実家より、大きな屋敷だった。
見上げるほど高い門。
車が敷地に入ってから玄関に着くまで延々と続く並木道。
車が到着すると、執事とメイドが荷物を運んでくれた。
「おかえりなさいませ。」
「ただいま。」
静香は、ごく自然にそう答えた。
「……。」
藤三郎は戸惑った。
「私の旦那様よ。」
静香は振り返り、
屋敷の者たちに藤三郎を紹介した。
「……よろしく。」
藤三郎は小さく言った。
「よろしくお願いします。藤三郎様」
練習したのか?
みんなの声が揃っていて驚いた。
おっと、面食らって大事なことを忘れそうだった。
「風香は?」
藤三郎は静香に尋ねた。
「家の中にいるわ。」
静香は少しだけ困ったように笑った。
だが藤三郎は気が付かなかった。
藤三郎は足早に屋敷に向かった。
屋敷に入る。
だが、
どこに風香がいるのか分からない。
「無駄に広い」思わず声が出た。
静香が笑いながら、
「ほんとよね。」
と言った。
「風香はどこにいるんだ?」
ここまで来ると、
藤三郎は少し苛立っていた。
「怒らないで聞いてね」
静香は小さな声で言った。
「風香は2階の自分の部屋にいるの。」
「でも、勝手に入ると怒るから、気をつけてね。」
藤三郎はここまでの長い道のりを思い出していた。
「……親子だろ。」
静香の制止を聞かず、
藤三郎は2階に上がった。
そして、
風香の部屋をノックもせずに開けた。
満面の笑顔で。
「風香。」
藤三郎は当然喜んでくれると思っていた。
だが、
「……。」
「……最悪。」




