第八章 第十二幕 出発
数ヶ月後
藤三郎は風香に会うために、
アメリカに行くことを決めた。
ただ、
海外に行ったことがない。
英語が喋れない。
そもそも、何をどうすれば、
会いに行けるのか?
それすら分からなかった。
国際電話で、静香と相談したいが、
男の意地がそれをさせなかった。
時々静香から連絡は入るが、
大体は向こうの話を聞いているだけだった。
「……まずは、パスポートが必要だな。」
バイクならエンジンを分解できる。
だが、海外へ行く方法は
何一つ分からなかった。
だから、
そこから始めた。
パスポートを取得し、店で眺めていると、
常連に、
「凶悪犯みたいだな」
と、
写真を見られてからかわれた。
「なんだ?アメリカにハーレーにでも乗りに行くのか?」
と言われたので、
「俺は日本車に誇りを持っている。……まぁチャンスがあれば乗ってくる。」
と言った。
「次は航空券だな。」
藤三郎は、旅行代理店に行き、
アメリカ行きのチケットを手に入れた。
初めての海外、しかも一人旅
藤三郎は緊張した。
ただ娘に会いたい一心だった。
空港には英語ばかり並んでいた。
「……全く読めねぇな。」
藤三郎はとりあえず、
地球の歩き方を開き、
搭乗手続きのページを探した。
「……まずは受付だ。」
何度も航空券のマークを見比べながら、
やっと受付を見つけた。
搭乗券を受け取り、
荷物を預けた。
「ふぅ、やれやれ。」
藤三郎の緊張はまだ続いていた。
セキュリティチェックも初体験だった。
出国検査を行った。
藤三郎は自分の前にいる人を参考に、
なんとか乗り切った。
やっとロビーに来られた。
藤三郎は少し安心した。
ついに、搭乗時間がきて、
飛行機に乗り込んだ。
滑走路の向こうには、
無数の誘導灯が並んでいた。
「……風香。」
一言口にした。
十三時間の旅の始まりだった。




