第八章 第十一幕 異端
立花一家が暁商店街に引っ越してきて、
一年が過ぎようとしていた。
風香は最初、友達ができたと喜んでいた。
しかし、一年が過ぎた頃、誰とも遊ばなくなった。
静香が聞いた。
「風香、お友達は?一緒にあそばないの?」
「だって、……つまらないんだもん。」
「なにが?」
「昨日見たアニメとか、ゲームとか、」
「そんな話興味ないし……。」
「私が十年後の自動運転の話をすると」
「みんなつまらなさそうな顔をするの」
全く話が合わなかった。むしろ、喫茶店で、
大人の相手をしている方がずっと面白かった。
鳳家の風香の祖父は、このままでは、風香が逆に不幸せになる。
そう言ってアメリカ留学を勧めにきた。
「日本は狭い。考え方の話だぞ。」
「アメリカなら風香を受け入れてくれる。」
祖父はそう言って風香の頭を撫でた。
「もちろん、おじいちゃん風香に会えなくなるのは寂しい。」
「だから、連絡はまめに入れて欲しい。」そう言った。
藤三郎は何も言えなかった。
本当は反対したかった。
だが、
風香がこの街で孤独だということを知っていた。
静香は考えていた。
風香はもう答えを出していた。
「私、アメリカに行く」そう言った。
「風香、よく考えた?」静香が聞いた。
「うん」
「友達と会えなくなるよ」
「大丈夫」
風香の意思は堅かった。
静香も一緒に行くことになり、喫茶店の営業は一年で終わった。
しばらくして、
風香と静香はアメリカに行くことになった。
藤三郎は
「会いに行くから。」一言だけ、それだけ言って見送った。
家に帰って、三重から持ってきたZ1を磨いていた。
磨いても磨いても、手が止まらなかった。
奥から、親父が様子を伺っていた。
「アメリカ、行くんだろ?」
「……。」
ただ黙ってZ1を磨き続けた。




