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第八章 第九幕 プロポーズ
ある日、藤三郎と静香は二人でツーリングに出かけた。
鳥羽展望台で見た太平洋は吸い込まれそうだった。
藤三郎は、
静香を女性として強く意識してこなかったのかもしれない。
付き合い始めた頃は、
静香を傷つけたくないという気持ちの方が強かった。
だが、
鳳家の両親から背中を押されて、
初めて結婚を意識した。
「海、綺麗だね」静香が言った。
「ああ」
言葉が続かなかった。
静香が手洗いに行った。
「なさけない」藤三郎は小さく呟いた。
プロポーズがこんなに緊張するとは思わなかった。
藤三郎はテラスで待っていた。
静香がジュースを持って現れた。
覚悟を決めた。
「指輪を受け取って欲しい」
もっといろいろ言うつもりだった。
言えなかった。
でも、
静香は少し笑い、少し泣きながら、
「はい。」と言った。




