第八章第八幕 両親
静香は大学を卒業した。
三重の小さな企業に就職した。
親は反対したが、静香が押し切った。
静香には三重県で就職したい理由があった。
バイク屋へ行くと藤三郎が花束を持って立っていた。
「……。」
無言のまま差し出した。
「ありがとう。」
静香は受け取って笑った。
藤三郎は少し視線を逸らした。
親父に言われたからしたことだった。
藤三郎と静香は付き合うようになっていた。
ある日、
黒塗りの大きな高級車が立花モーターズの前に止まった。
静香の父と母だった。
娘は一度言い出したら聞かない。
二人は反対しても無駄だと分かっていた。
むしろ反対すると、
意地になるのも知っていた。
その結果、危険な目に遭うこともあった。
だから二人は反対するためではなく、
藤三郎と話をするために来た。
交際するなら、いずれ結婚して欲しい。
生まれた子供には鳳家を継いでほしい。
そして、できることなら店は三重ではなく、
自分たちの近くで開いて欲しい。
それを伝えにきたのだった。
藤三郎は黙って話を聞いていた。
ここで初めて、
藤三郎は結婚を意識した。
実は、鳳家との家柄の差もあり、
最終的には別れることになるだろうと思っていた。
まさか、両親から背中を押されるとは。
立花モーターズの店先は珍しい車に人だかりができていた。




