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第八章第七幕 見られてた。
静香は差し出されたコーヒーを飲んだ。
あたたかい。
でも……。
静香は下を向いて何も言えなかった。
藤三郎はしばらくそんな静香を見ていた。
しばらく何も言わなかった。
コーヒーを一口飲んで、
「……嫌いじゃない。」
まず、
一言だけだった。
静香は顔を上げた。
雨音のせいで
聞き間違えたのかもしれない。
「えっ……。」
思わず藤三郎の顔を見た。
「だから……。」
「嫌いじゃないと言ったんだ。」
藤三郎は頭をかいた。
静香の胸が高鳴った。
店の外では激しい雨が降っている。
なのに、
さっきまで感じていた寒さは消えていた。
二人で照れていた。
ふと、店の端を見ると、
一人の初老の男性がお土産を下げたまま
いつの間にか柱の陰に立っていた。
藤三郎の父親だった。
「嬢ちゃん息子をよろしくな。」
それだけ言うと奥に引っ込んだ。
二人は顔を見合わせた。




