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第八章第五幕 ずぶ濡れ、
ある日。
静香が、東京を出る時、
少し空が曇っていた。
だが、三重に行くことを諦めたくなかった。
だから、予定通りGPZ400に跨った。
だが、
途中から雨が降り出した。
「まずいなぁ」
静香は呟き、
パーキングでカッパに着替えた。
それでも雨脚は強くなる一方だった。
三重に着く頃には、
服の中までずぶ濡れになっていた。
それでも、
立花モーターズへバイクを走らせた。
「こんにちは」静香は藤三郎に言った。
「なんでこんな雨の日に来るんだ?」
藤三郎は驚いた。
店の奥にいくと、タオルを持って現れた。
「ほら」静香に渡した。
「ありがとう」笑った。
店にはお客もなく、親父さんもいなかった。
なぜだろう。気持ちが止められなかった。
「……好きです。」静香は小さな声で、
藤三郎を見つめながら言った。
藤三郎はしばらく何も言わなかった。
それから頭をかきながら、
「正気か?」
「俺はただのバイク屋だぞ」と言った。
静香は顔を赤くして、
藤三郎の顔を叩いた。
「バカ」
静香は店を飛び出した。
藤三郎はあわてて静香のあとを追いかけた。
二人、
ずぶ濡れになった。




