第八章 第一幕 鳳家
パンデミックが宣言された。
世界は隔離された。
人々は、分断された世界で、
ただ日常を取り戻すことだけを願った。
多くの人々が感染し、
多くの人々が亡くなった。
長い時間が流れた。
ウイルスは、変異を繰り返し、
そして、
少しずつ威力を失っていった。
やがて世界保健機構は、
パンデミック終了を宣言した。
風香はそのニュースを日本の屋敷で見ていた。
お気に入りのカップで、コーヒーを飲みながら、
静かにテレビ画面を見つめていた。
パンデミックの間に、
最愛の祖父母を失った。
そして今、
旧華族 鳳家の家督を継ぐことになっていた。
祖父母は風香を愛してくれた。
だが、高い教育を受けるため長く海外で暮らしていた。
卒業後はGLのオファーを受け、研究所で研究をしていた。
そのため、子供の時、共に過ごす時間は多くなかった。
それでも、鳳家へ戻ってからの年月は、
風香にとってかけがえのない時間となった。
研究所を辞めたのは正解だったのかもしれない。
自分を愛してくれた
祖父母と暮らすことができたから。
一緒にアメリカに行った母は、
日本食レストランの経営者になっていた。
現地で話題になり、
チェーン店化して行った。
母は店を誰かに任せる事が出来なかった。
だから一緒に帰る事が出来なかった。
それでも母は父を愛していると言った。
離婚する気は全くなかった。
ただ自分の役割を捨てられなかった。
父親は日本で暮らしている。
母はアメリカ。
自分は鳳家。
気が付けば家族はバラバラだった。
祖父母のいない屋敷は、
なんだか居心地が悪かった。
風香は父親に会いに行くことにした。




