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第六話:運命の邂逅? 刺客は二度現る。の巻。

前回のあらすじ


アラシェ、就職する。

アラシェ、連れ込まれる。

アラシェ、闖入される。

の三本でお送り致しました。


 第六話:運命の邂逅? 刺客は二度現る。の巻。



 扉が開かれると、いらっしゃったのはパツキン縦ロールお嬢様だった。すごく予定調和を感じる。


「話は──聞かせていただきましたのですわ」


 えーっと、確かクランの設立には少しばかり人員が足りないって話だったはず。

 ……話が通ってるとするなら、この子が私のクランに入ってくれるってことでいいのかな。

 とりあえず聞いてみないことには始まらない。尋ねてみる。


「君が私のクランに入ってくれるのかい?」


 金髪縦ロールのお嬢様は澄ましたドヤ顔を器用にも維持したまま答える。


「そのように、話は聞かせていただきました」


「それはありがたいね。じゃあこの書類にサインを──」


「されど! それとこれとは話が違うのですわ!」


 それとこれってどれとどれだよ!!!



 その後、ギルドマスターのドターさんも交えて色々話し合った結果、多分この金髪縦ロールお嬢様が元々のNPC救済キャラらしい事が分かった。

『この街のギルドに行けと神託が下った』とか供述してるし。

 挙句、『わたくしがクランマスターになった方がよろしくはなくて?』とか言い出すもんだから拳で語り合うことになって、さぁ大変。


 とりあえず、ギルド所有の運動場まで移動した。

 なんでか見物人がぞろぞろ着いてきたけれど……。




 運動場はカイハージ街の中心部ロータリーのさらに中心にあるカイハージギルドのさらに中心にある。


 模擬戦や実技試験で使われるらしくそれなりに設備は整っているが、いかんせん屋外だ。屋根がない。

 気になるコンディションは……まあ普通。弱風陽射し弱しの曇天。雨の降る気配は特になし。


 運動場自体は大した広さじゃない。狭いわけでもないけれど。

 周りに観客が居るから狭く感じるのかもしれない。あまり無茶はできないね。


 相対して距離は10mくらい。 金髪縦ロールお嬢様の足がはやいか否かで遠い近いはわかれるけれど、少なくとも一射ほど噛ませる余裕はある距離だ。



 そして金髪縦ロールお嬢様は、うん。重斧装備だね。すごく予定調和を感じる。

 大斧自体は両手持ちに片刃、装飾過多気味(ゴッテゴテ)な感じ。持ち手の根っこに宝玉かなんかがついてるように見える。

 防具は白色の改造ドレスアーマーって感じかな。胸部装甲とすね当ては遠目にも厚く見える。なんというか、煌びやかなのに武骨だ。


 とまあこんなところで情報収集は終了! 始めましょう、闘いを。



 開始の合図がされて、最初に動いたのは相手側。

 ところが(きんぱつ)(たて)(ろーる)(おじょうさま)の足の遅いこと遅いこと、こちらから攻めることに。


 近づいてくるうちに数射、射掛けてみる。

 心臓辺りに一射。首元にも。それから右太腿、左足首。


 器用にも全射弾かれた。

 なかなかの斧遣いだ。


 ……しかも斧に振り回される様子が一切ない。


 ふむ。鎧でバランスを取ってるか、筋力値が高いか、かな。

 ま、鎧でバランス取るにしろ、ある程度は筋力が必要なわけだし。ステータスは筋力よりであろうことはそうなのだけれど。


 とは言っても足の遅さは目立つ。

 相手側に距離を詰める手段がないなら遠距離から攻めればローリスクだ。勝ちは磐石だけれど。

 あとから文句つけられても面倒だしね──


「卑怯ですわ! 正々堂々勝負なさいな!」


 ──実際拳で語り合ってみますか!


 弓をアイテムボックスに仕舞い──。

 構えて、金縦ロ嬢が近づいてくるのを待つ。


 しばらく待ち、斧は届く距離まで近づききった。

 けれど拳の制空権では全く届かぬ距離。


 ……先に動いたのは金縦ロ嬢だった。


「行きますわ、よッ!」


 叫びつつの金縦ロ嬢の横薙ぎを、半歩下がってスウェーバックで回避。しつつ、大股一歩踏み込んで──


「甘いよ!」


 カウンター気味のストレート一閃!


 直撃の手応えアリ。

 大量に血が出たね。ポーション必須級の打撃だ。


 私に、ね。


 ちょっぴりの目測ミスで胸当をぶん殴っちゃったものだから、かたいのなんの。

 拳がジューシーに真っ赤。


 金縦ロ嬢自体は衝撃で数歩後退している。これ幸い、なんて少し距離をとってポーションをぶっかけておく。


「確かに破壊力はありますわね。……ですが、その程度でこのわたくしを倒せるとは思わないことです」


 金縦ロ嬢は何か言ったあとのそのそ近づいてきた。

 足がおそい。

 しばらく待つと、大きく踏み込みつつ攻撃してくる。


「我が斧術、喰らいなさいっ!」


 勢いのまま、大上段からの斬りおろし。

 とはいえ金縦ロ嬢の瞬発力では大したスピードにはならず、らくらく避けて。


「すっとろい!」


 地面を抉る大斧を後目に懐へと潜り込み、柄を両手で掴む。

 そしたら斧を引っ張りつつ足底蹴りを胸鎧に!


 あえなく大斧を手放すことになった金縦ロ嬢。

 斧はそこら辺に突き立てておく。


「斧術がどうかしたかな? 当たらなければどうということもないよ!」


 こちらの煽り文句を聞き、なんて言うか、そう。凶悪な笑みを浮かべる金縦ロ嬢。

 さて、またもやのそのそと近づいてきた。両者徒手である。


「斧を手放したわたくしごとき(・・・)の攻撃を──! まさか避けるなんておっしゃりませんわよねッ! でりぁッ!」


 掛け声とともに放たれた金縦ロ嬢の大振り(テレフォン)なストレートに合わせ、クロスカウンターを頬に仕掛ける。


「その見え見えのパンチはカウンターしてくださいってことかな!」

「いいえ、いいえッ! わたくしの堅さを知らしめるためですのよ!」


 金縦嬢は殴られたのもお構い無しにタックルしてくる。けど。


「でも! 動作が遅いっ!」


 闘牛士みたいに受け流したら、上段に後ろ回し蹴り。


「ぜいあッ!」

「そちらこそ! 見えきった攻撃ですわ!」


 を、片腕でガードされて逆に腰を蹴り抜かれる。いてぇ。

 一度足を地につけて、


「おっと! 危ない危ない」


 金嬢の追撃フックを回避。


「なかなかやりますわね!」

「そちらこそ」


 仕切り直しかな。

 ……こっちから行くよ。


 私を迎え撃つ、金嬢の牽制ジャブ。これは内から拳を当てて逸らす。

 躍起になってまた逆の腕で大振りを放ってくる。それに、また内から拳を当てる。

 金嬢の両腕ははねあげられた形になる。


「がら空きだよ! ぜあッ!」


 不味い状況だと今更に気づいたのか、防御姿勢を取ろうとする金嬢。

 だけれど、もう間に合わない。フックとアッパーの中間のパンチ、スマッシュを顎めがけ打ち上げる。


「ぐっ!?」


 苦悶の声を上げつ上体の反れた金嬢。

 へ、追撃。一歩踏み込む。スマッシュの振り切った姿勢と踏み込みの間に生まれた三次元的な捻じれ──


「ぜれァッ!」


 それを全く正反対に解放して、円弧軌道のオーバーハンドブローを振り抜く。

 金嬢の浮き気味だった上体を地面に叩きつけるような一撃に、


「えぶっ!?」


 金嬢、堪らずダウン。

 しかし堅さは確かなようで、ダメージはさほど大きくはなさそうだ。


 首根っこを掴み持ち上げる。


「は、離しなさい!」

「降参したらね。まいった、なんて言えばいいよ」

「誰が降参などするものですか!」


 おっと。金嬢の苦し紛れの蹴り。

 危うく当たってしまいそうだったので、慌てて放り出したらさあ大変。


「ふン。それで情けをかけたおつもりでして……!?」


 金嬢は、さっき私が突き立てておいた斧のあたりに着地してしまった。


 私としては適当に放り投げただけだったのだけれど、たまたま突き立てておいた斧の近くに飛んでいってしまったもので情けをかけたと思われているらしい。厄介なことになった。


「確かに、徒手空拳では遅れを取りました。しかし斧さえ持てば、貴方には万に一つの勝ち目もございませんのよ」


 そして金嬢は斧を掲げるように持ちあげる。

 すると、柄についてる緑の宝玉(?)が光を放ち始めた。


「──【我が身を以てこれを捧ぐ】! キスタドル流斧術・終形(ついぎょう)斧破雷同(ふわらいどう)ッ!」


 一瞬。緑の宝玉が強く発光したと思ったら、強い風が金嬢から私側に向かって吹いてきた。


「さしもの貴方とはいえ、この技に真っ向から当たれば真っ二つになることでしょう。……ゆえに! 手心を加えて差し上げますわ!」


 なんて宣言とともに、追い風で加速しつつ斧の横殴りを繰り出してきた。


「なるほど、それが切り札?……受けて立つ!」


「行きますわ……でァッ!」


 速いっ! 今までとは別次元、本気の威力のよう。

 でも残念。見える。伊達に美犬っころと()ってないのさ。


 平たい面での横殴り。美犬っころの引っ掻きとどちらが強いかは分からないが、受けたくないのは確かなもの。

 これに対して、まず五指で受ける。ただし受けすぎないように。折れるよ。

 次に掌で受ける。そしたら前腕で受ける。この当たりで少し回転をかけて次に繋げやすくしておこうね。

 で、肩で受ける。

 最後に、若干ジャンプしながら背中で受ける。そして、大きく吹っ飛ばされる。


 以上、五点接地を応用した横殴りの受け方でした。


 数回の経由をする事で威力を減衰。吹っ飛ばされる事で体内に入るエネルギーをさらに減衰させる。

 私自身の高レベルに由来する防御力もあって、大したダメージを受けずに済んだ。

 けど吹っ飛ばされた。


 砂埃を上げまくりながら着地。べ、別に失敗したとかではない。作戦だ。

 砂埃で隠れている間に超空に一射。金嬢に三射。


 三射は弾かれた様。


「このわたくしの技を耐えきったのですね」

「あの程度は受けられなくちゃあね」


 ……とは言え、さっさと決めてしまいたい。これ以上戦闘を続ければ疲れる。ということで。


「拡散射、喰らえ!」


 矢が空中で分裂増加。対して金嬢は……斧をくるくるとバトンのように回して捌ききった。


「たわいないですわね」

「まだまだいくよ!」


 再度拡散射。追加で左団扇を発動。

 それぞれの矢がまちまちな方向に曲がっていく余りにも面倒な射撃が金嬢を襲う。


「キスタドル流斧術・初形(しょぎょう)過砕旋斧(かさいせんぷ)!」


 対してか金嬢は、何言がつぶやく。

 そうすると金嬢の周りに風の渦巻が発生した。で、矢は散らされる。


 ちょっと悲しいね。対処が面倒な技を繰り出せたと思ったのに、ワンスキルで対応されてしまうのは。


 でも、もうそろそろ時間だ。


 スキル:弓術──


「剛射、発動!」


 重矢(おもし)をつがえ、弓術スキルの剛射、つまり力いっぱいの射撃法で射る。


「その手、もはや通用しないとお分かりにならなくて? ……のあっ!?」


 なんて、余裕ぶっこいて弾こうとした金嬢が重さにびっくりしてるのを後目に。

 私はタイミングをはかっていた。


 風は微弱と言えど、ある。

 空は曇天と言えど、雲の動かない事は無い。

 ならば、晴れの垣間見える事もあるだろう。


 その瞬間が──今だ。


 雲の隙間から日光が降り注ぐ。まぶしい。

 こうなってしまえば、私がさっき超空へと放った矢を視認できる観客は居ない。


 そう。

 スキル、掟破りを使うのに必要な条件。私の一矢は、有意思オブジェクトの視界から抜け出すことに成功したのだ。

 ……さあ、決めさせてもらうよ!


 スキル:掟破り、発動──


「【我が矢は汝に敗北を(もたら)す】!」



 ──金嬢に、なんかいい感じに威力を調節された一矢が貫くまではいかないけどなんかいい感じのダメージを与えた。



 ……もうちょっとまともな【宣言】しなさい! 私!

 思いつかないからってこんなふわふわな【宣言】なんて……!


 ……次はちゃんと文面考えてから使います。


 疲れた。




 気絶して倒れた金嬢を冒険者ギルドまで運んで、勝手に拇印を押して、空いてるソファーに放り投げてやっと一服。

 といったところで、ギルマスのドターさんが話を始めた。


「クランに必要な三要素。つまり、責任者。副責任者。そして構成員。の内、二要素が揃いましたな」


 待て、その話は聞いていない。特に構成員。


「構成員……初耳です。これも何処かで拾ってこなければならないので?」


「いいえ、既に手は打っております。センカくんにギルドカードを作るよう言ってありますので。ただ……」


「なんです?」


「それでありますが、えぇ、初心者を抱え込むクランは活動が著しく制限されるモノでありますゆえ、精力的な活動にすぐに到ることは難しいかと……」


 ……マジか……。


「左様ですか──」


──「話は聞かせてもらったッ!!」


 既視感──! 一応ここ関係者以外立ち入り禁止だからね!


 入ってきた黒ずくめの子を見る。声質は女の子っぽいけど、どうだろ。



「失礼。私はヒトリモ。『話は聞かせていただきましたわ!』辺りから聞いていた」


 わりと前から聞いてたんだね。


「ま、まあそれは置いておいて、だね。ヒトリモさんも私のクランに入ってくれるのかな?」


「そういうことになる。あら……アラシェ」


 ん? 私の名前を知っている?

 どっかで会ったかな……?

 ゲームはじめてから会ったことある人なんて数える程しかいないんはずだけれど……。

 ま、いいや。さっさと加入してもらおっと。


「ありがとう。じゃ、これにサインしてほしい」





「──という訳で、これからも私専属の受付をして欲しいな。センカさん」


「はっ、はひぃっ!!」




【用語解説】


〇パツキン縦ロールお嬢様

 予定調和。


〇重斧装備

 予定調和。


〇金縦ロ嬢

 金髪縦ロールお嬢様。


〇アイテムボックス

 場所を取らないファンタジー御用達の収納。

 NPCも皆保持している便利スキル。


〇緑の宝玉(?)

 (りょく)魔石(ませき)。風属性の魔力を宿す。


〇魔石

 微量の魔力を呼び水に、大気中から特定属性の魔力を吸い出す機能を持つ。


〇【我が身を以てこれを捧ぐ】

 魔術詠唱。


〇キスタドル流斧術

 コン=キスタドルの前衛斧術を元に、脈々と受け継がれ改善された"攻める者の斧"。

 こと侵攻に於いて右に出る流派は無いと、一時期は血気盛んな国々で隆盛を極めた。

 しかし、近年の魔道技術の向上、大規模魔術の効率化などにより戦争が魔法で行われる様になってからは、あまり日の目を見なくなってしまう。


〇なんかいい感じに威力を調節された一矢が貫くまではいかないけどなんかいい感じのダメージを与えた。

 主人公、アラシェは適当でもどうにかなると思っている。


〇ヒトリモ

 軽度中二病のプレイヤー。嵐 結会(アラシェ)の同級生。

 嵐結会に比べて、よりイケメン。アラシェに比べて、より可愛らしい。

 つまり、アバターメイキングで可愛くした(もしくはしてもらった)勢。

 チョロくは無い。が、本編開始時には既にオチているので実質チョロ。

 名前の由来はソロ(独り)モンより。


〇「──という訳で、これからも私専属の受付をして欲しいな。センカさん」

 無自覚顔面攻撃。


〇はひぃっ!

 はひぃっ!


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