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第四話:乱獲! レベリングは速度が命。

前回のあらすじ


すごくかわいい女の子に囲いこまれて大変だった。

そのあと冒険者ギルドで素材の売却をした。

 第四話:乱獲! レベリングは速度が命。


 前回、生のスライム瓶を売って130万もの市場通貨(ゴールド)を手にした私だったが、実際のところその他の雑多の雑魚のドロップ品の売却額の合計の方が多かったことをここらへんに記しておく。

 さて。

 お金があるのなら、それはもう買い物に行くしかない。買い物に来た。

 ウィンドウショッピングは楽しいけれど、どうやっても手に入らないのに喉から手が出るほど欲しいものを目にすると心臓が焼き切れるような羨望に胸を焦がすことがあるよね。

 しかし今の私は違う。私は過去を超越した。手にしたこの大金さえあれば私は無敵だ。

 まあ、ウィンドウショッピングのウィンドウをカチ割る以外の別の目的もある。

 いつかの戦闘で矢作成がスキルランクEXになっていたのだけれど、その時に新しいスキル効果『今まで使ったことのある矢を特殊効果ごとコピーできる』が追加されたので、とりあえずこの有り余る資金で不可矢(ふかし)みたいな変わり種の矢をコンプしようと思ってやってきたのです。


 木造の道具屋の一角。

 寸分違わぬ構造の矢が大筒の中、無造作に詰め込まれている。

 値札を見るに、回復矢(りぺや)重矢(おもし)可笑矢(おかし)母矢(おもや)とかなんとか。変わり種がいっぱいで嬉しいね。

 やっぱり別の街には別の変わり種矢があるんだろうか。こうなると、街巡りもしてみたいものだねぇ。


 あんまり関係ない事だけれど、こういった変わりものの矢は『専用の施設で法術付与(エンチャント)により大量に生産されている』らしい。そのうち見学に行ってみたいところだ。


 ……さてさて。

 道具屋で買い物をしたからには、次に行くところといえば実践。否、実戦!


 美犬っころ乱獲のお時間です。



 さあて、先程きたばかりな気もする道を歩いたり走ったりしながらやってきました。森の祠。

 件の王冠を(ほう)り投げ、備える。



 まずは子犬サイズの美犬っころを倒さねばならぬのも前回の通り。

 まあ。普通に撃てば避けられる訳ですね。


 前回の戦闘を顧みるに、この祠仔オオカミ、高回避低機動的なステータスらしいのです。

 普段から照準がつけにくい動きをする訳ではなく、一射一射に対しての回避行動をメインに立ち回る感じがする。

 ついでに言うと、攻撃をする仕草を見せたことがない辺り、きっと門番的な立ち位置なのでしょう。

 しかも、進化系の一回り大きくなったのも不可矢(ふかし)を軌道予測して避けたあたり、多分、撃ってから軌道を見極めて回避してるのは明らか。


 じゃあどう射るか。方法は二つ。

 いち。避けられる前に中てる。

 に。避けられてから中てる。


 で、いちはちょっと難しい。

 なぜなら前回の段階で既に結構限界近い速度で撃っていたから。これ以上はやくするにはレベリングが要る。レベリングのためのレベリングが必要になってしまう。


 じゃあ、に。ちょっと理解がしづらい概念だけど、簡単に言えば避けた先へ矢を中てたいわけだ。これを前回は必中を使って実現したと。

 というわけで、今回は射た矢の軌道を予測して避けてるらしい特性を上手く利用していきたい。


 スキル:曲芸射:四ノ型《左団扇(ひだりうちわ)汀撃(みぎわうち)

 発動!


 曲芸射スキルは私のお遊び(おふざけ)射撃法がゲームシステムに接収されたことで発生したスキル系統。もちろん中身は私がやったことで構成されているのだけれど、その中にあって私の知らなかった射撃法がこの《左団扇の汀撃》だ。

 まあつまるところ、このゲーム内の何者かがバカげた射撃法を編み出してしまって、曲芸射に入門すらしてしまったというわけ。

 ちなみにスキルはスキルポイントを支払うことで取得できるけれど、曲芸射をはじめとした個人の技術を接収したアイデアスキル(と言うらしい)の必要コストはバカが三つ付くバカ高さである上に、そもそも普通のスキル取得ルートではたどり着くことさえできない場所に格納されているとか。


 そんなこんなで、話は戻って左団扇(ひだりうちわ)汀撃(みぎわうち)。このスキルを発動した状態での射撃は、軌道を変則的に変化させてしまえるのだ。

 具体的に言うと、射撃時に少々のMPを消費して魔力を纏わせたのちに任意のタイミングでその魔力に指向性を持たせることで軌道を自由自在に捻じ曲げる、ということらしい。

 結構考えられてできてるのに曲芸射とかいう面白おふざけ射撃法にまとめられてかわいそう。


 このスキルは曲芸射のうちに吸収されてしまっているので、既に曲芸射を使える私はスキルポイントを支払うことなく使うことができる。

 逆に、《左団扇(ひだりうちわ)汀撃(みぎわうち)》を編み出した側の人もスキルポイントなしで私の曲芸射シリーズを使うことが出来るようになっているはず。

 正直なところ貰い損な技かと侮っていたけれど、道中の試し撃ちを経てこの考えは粉砕されたし破壊した。

 この技はすごくやばかった。

 コントロールできる角度こそ鈍角を出ないけれど、そもそもコントロール出来るというアドバンテージが大きすぎた。多少の狙いの甘さも修正が効くし、角度を変えるタイミングに自由度の高さがあって真正面からでも予想だにしない位置へ射撃できたりするのだ。


 ということで祠仔オオカミに対し汀撃(みぎわうち)を発動した射撃。

 いつものごとく仔オオカミも横へ回避。したところを確認してから矢の軌道を変える。

 すると、仔オオカミの肩辺りに矢がヒット。作戦は成功。

 仔オオカミは吹っ飛び、ダウンした。


 追加発動。

 スキル:徹底:追い撃ち

 スキル:非情の射手:連撃

 発動。


 追い撃ちは『発動後30秒間に与えたダメージの一部を追加で与える(必中)』効果。

 なお『一部』の倍率はスキルランク依存らしくEXの私に隙はなかった。


 連撃は『防御態勢の整っていない相手に連続で攻撃を与えるとき、ダメージが徐々に上昇』する効果。

 ただし抵抗されると効果はリセットされるらしい。相手がダウンしている間だけ効果のある火力スキルというわけだ。


 まあ、ここまでしないとダウンした仔オオカミを倒せないってわけじゃあない。


 もちろん、仔オオカミを倒すのも目的のひとつだけれどね。


 それでも、この攻撃はもっと先を見据えた一手。次に出てくるふたまわり大きな祠オオカミをぶちころがすためのアプローチに過ぎないのだ。


 進化を終えた美犬っころがいつどこから出てくるのか、前回の戦闘ではさっぱり分からなかった。

 ──そこで、これ。スキル・追い撃ち。


 追い撃ちスキルの追加攻撃は魔力弾として発生するけれど、そもそもその追加攻撃には必中効果がついているようで。

 これも行きがけに試してみたけれど、逃げていく敵にもしっかり追尾し当たってくれた。

 つまるところ、仔オオカミを倒すダメージで追撃の魔力弾を生み出せば、居場所のいまひとつはっきりしない次の祠オオカミのもとへも向かってくれるだろう、という作戦だ。


 連撃が発動しているせいか、中々気分よく仔オオカミをボコしてボコす。

 特筆するほどの何ともなく仔オオカミのHPゲージを全損させ、魔力弾が出来るのを見届ける。


 魔力弾として出力された追撃は、高レベルゆえの魔力感知力(素のステータス)でわりと場所がわかる。


 ……とはいえ、それなりに集中しないと見失ってしまいそうだ。アリの行列の中で一匹を見続けるとか、空に浮かぶ雲をマークし続けるとか、そういうやつ。


 すいーっと虚空をただよう魔力弾。

 ふわりふわりと仔オオカミの死体(?)の上あたりを旋回している。


 ──と。その瞬間。

 仔オオカミの死体(?)が掻き消えた。

 魔力弾は急加速しつつ二時の方向の草むらに突っ込んでいき、ドムっと言った感じの軽い炸裂音とともに弾けて消えた。


 さて、前回と行動ルーチンが同じなら、きっと次は直接飛びかかってくることだろう。

 そうなる前に、矢降雨(やぶさめ)で辺り一帯焦土化しておきたい。


 ついでに母矢(おもや)を使ってみる。

 この矢は字面のわりに結構キツめな効果を持っていて、射撃後数秒すると幾つかに分裂して、それぞれが着弾とともに爆発する。

 はやい話がクラスター爆弾の矢版だ。


 焦土化と言ったのも半分は冗談じゃあなくて。

 少々爆煙混じりの土煙が舞い上がって、そしてしばらくして血だらけテクスチャの祠オオカミがその姿をあらわした。


 よし、追撃。スキル……を使うまでもなし。

 破城弓の威力をとくとご覧に入れましょう。

 ……具体的に言うと、はじめに使っていた初期装備の弓に較べて攻撃力がだいたい7倍ほど違う。

 ついでに城塞特効なんて効果もあるけれど、全くもって関係ないので説明は割愛しよう。


 実際のところ武器の攻撃力が7倍になったところで総攻撃力が跳ね上がるわけではないけれど。

 まあ、弱った祠オオカミをしばき倒すには充分だった。


 そういうわけで、倒した。 


 そして次の課題は勿論、美犬っころがどこから出てくるか見極めることだ。

 ここまで取っておいた奥の手を使う時が来た。


 スキル:千里眼

 発動。


 MP消費と引き換えに全方位をカバーする視界を作り出す、千里眼。透視はもちろんついてるけれど、悪用は厳禁だ。

 ちなみに遠くまで見通せる効果は無い。そちらはスキル・遠見の効果となっております。


 とはいえ、引き換えのMP消費が結構大きいので考えなしの濫用はできない。

 第二形態を倒してから今までの発動でも、既に二割ほどMPを持っていかれてしまった。


 と、そうこうしているうちに美犬っころの気配が。虚空からスっと現れた、美人さんだが狩る。

 さて、方向は確認した。十二時の方向(真正面)だ。千里眼切って、と。


 あ、しまった。


 千里眼は全方位を正面として認識するスキル。

 私が正面だと思っていたそこは、真後ろだった。

 既に振り向きは間に合いそうもない。どうしよう。


 (Answer).避けたい。


 (Actual).避けられない。


 避けられそうにない!

 どうにか衝撃を逃がすために踏み切ってみるが水だ。焼け石にかけるタイプの!


 美犬っころの攻撃は飛びかかりつつの引っ掻き。

 思ったよりも凄まじい威力の引っ掻きに加え、焼け石に水かと思った踏み込みが功を奏し、ぶっ飛ばされたことで距離をとることには成功している。


 がしかし、全回復までするには全く時間が足りない。

 ケチって安い回復ポーションばっかり買ってきたせいだ。あ〜あ。


 と思っていたけれど、よく考えると全快までする必要はないかもしれない。

 不意打ちこそくらってしまったが、前回の戦闘のときは攻撃を避けられている。

 最低限暴射を撃てれば充分だと思おう。


 というわけで、ポーション一瓶を体にぶっかけ一瓶を飲み干して、準備は万端、もとい半端(はんたん)整った。



 美犬っころが距離を詰めてきて、流れるように噛みつき攻撃へと繋げてくる。それをバックステップで回避すると、さらに連続で噛みつきを繰り出そうとしているではないか。

 知らない攻撃パターンだ。


 幸いなことに踏み込みが浅く、美犬っころの噛みつきは随分下めだ。

 跳び箱の要領で美犬っころの鼻先を踏み台にして、跳躍。間髪開けず暴射で上空へ舞い上がる。

 美犬っころはこちらを見上げているけれど、特にこれといったアクションはない。


 ……着地狩りは断固拒否だ。

 ただ重いだけという特殊効果を持った矢、重矢(おもし)をつがえて拡散射を撃ちまくり、美犬っころが怯んだ隙に着地する。


 すかさず死角へ回り込みつつスキル発動。


 スキル:矢作成:緑人揮種(ゴブリン・コマンダー)の短剣

 スキル:弓術:纏火(てんか)

 発動!


 美犬っころは振り向きつつ引っ掻きをしてくるが、それは与しやすいタイプの攻撃だ。

 斜め前に進むだけで回避できる。ついでに首下に潜り込む。


 そうしたら、さっきスキルで作り出した短剣で切り裂く! 裂くべし裂くべし。

 たまらず距離を取った美犬っころを後目に、この短剣を力いっぱい天空に撃ち上げる。

 短剣を撃ち上げるまではいいのだけれど、がっつり見られているのがあまりよくない。


 注意を引くため徒手空拳で相手をしましょう。破城弓を一旦仕舞って、ファイティングポーズで応戦準備は完了。

 足元をうろちょろすれば気が散ってくれるはず。


 美犬っころは距離を詰め、流れのままに爪での引っ掻きをしてくる。

 さっきは斜め前に潜り込んで避けたけれど、今度は引っ掻きとは逆の前脚へタックルしてみる。


 美犬っころ上半身は引っ掻きをしていない前脚のみで支えられているわけだから、そちらを強めに揺らせばバランスは崩れる。

 バランスが崩れれば、投げ飛ばすのは簡単だ。

 首下のたぷっとした毛皮を掴み、前に踏み込みつつ体重をかけて振りかぶる。

 最初の目的は注意を引くことだったけど、こう上手くいくと気分が良くなるね。

 というわけで、がっつり投げ飛ばした。


 さて、準備はととのった。

 美犬っころが恨みがましい視線をこちらへ向けつつ立ち上がったところで、とあるスキルを使う。


 スキル:掟破り

 発動。


 ──宣言する! 【我が矢は汝の額を貫く(・・・・・・・・・・)!】


 少し前に撃ち上げた短剣が猛加速して落ちてくる。

 そして美犬っころの大きなオデコに寸分たがわず命中した。


 スキル、掟破り。

 対象物が『その場に存在する全ての有意思オブジェクト』の視界内から逸脱しているとき、【宣言】通りの事象が発生する、という効果をもつ。


 すべての観衆の視界外にでなければならない制約はあるけれど、それさえ満たしてしまえば現実的な範囲内で何でも起こせる。そんなスキルだ。

 ちなみに、『一戦闘につき一回まで【宣言】が可能』と書いてあったので、きっと宣言するタイミングでミスしたら不発してしまうし、その後は使用不可になってしまうのかもしれない。

 まあ今回にかんしては、短剣を美犬っころの視界外に撃ち上げたので条件は問題なく満たしていたというわけ。


 そんな説明をしている間も、美犬っころは転げてもがいている。

 そろそろ終幕としましょうか。


 スキル:弓術:炸裂射撃

 発動。


 弓術スキルの中でも特に容赦ないスキルのひとつ、炸裂射撃。

 ヒットすると爆発する。ヒットしないとオブジェクトに突き刺さって衝撃で爆ぜるようになる。

 外した時の後処理が面倒だったので使っていなかったけれども、動かぬ的は外さない主義なので今こそ使いどき。


 爆ぜろ!

 私の気が済むまで爆ぜて爆ぜて爆ぜなさい。




 ……そうしてしばらく爆発音を楽しんだ。

 結界が解除されたので戦闘終了と判断して、腰を下ろして回復ポーションをゆっくり飲む。



 うむむ。

 せっかく上位の敵が出てきたのだから乱獲してレベリングしようと思ったんだけど、なかなか大変だね。



 ま、気張っていきますかね!



【用語解脱】


〇スキルランク

 EX,SABCDEFG。左から順に完成度が高い。


左団扇(ひだりうちわ)汀撃(みぎわうち)

 中国戦国時代、楚国海岸にて所属不明の海賊による強襲がある。

 海賊の長と見られる人物は、傍に数名の女性をはべらせていたばかりか、まともな装具も身につけていなかったため脅威とみなされず、いわゆるノーマーク状態であった。しかし、この長の放った矢が、楚軍の将(明確な言及はされていないが、周囲の戦況を見るに李権であると考えられる。)をあわや討ち取るところまで迫った、ということを記した戦国策の一節に由来する故事成語。

 専ら、正面から不意打ちを受ける事、予想外のアクシデントにより物事が失敗間近になる事などに用いられる。

 なお、汀は水際などと訳される単語であるが、この文中では(敗北の)瀬戸際と訳すのが正しい。

 ちなみに上記は大体嘘。


十二時の方向(真正面)

 全方位をカバーする視界状況で真正面。


〇スキル:矢作成:緑人揮種(ゴブリン・コマンダー)の短剣

 作っただけで射ない。多分想定外の使用法。

 ちなみにアラシェの矢作成スキルはEXランク。

 今まで射た事のある矢をコピーして作成する。というアクティブ的な効果もそうだが、パッシブ的な効果もあり、それは矢を作成する際に消費するMPがほとんど0になるという効果。

 実質的に弾切れによる戦闘不能が存在しないようなもので、かなりつよい。


〇【我が矢は汝の額を貫く(・・・・・・・・・・)!】

 誰も見ていないなら、何かが起きても誰にも分からない。ゆえに、何が起こってもおかし(・・・・・・・・・・)くはない(・・・・)


〇ま、気張っていきますかね!

 主人公、アラシェは凝り性気味である。




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