第十八話:イベント開幕! せず!
前回のあらすじ
日常回
寝たり散歩したり工作したりしたりしてリラックスモードのアラシェ御一行。
イベントの準備なんてどこ吹く風、マイペースがマイペースを呼ぶマイペースの嵐。
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コロナ対応の多忙で遅れました。申し訳ない。
今回から数回に分けてイベントを消化していきます。よろしくお願いします。
第十八話:イベント開幕! せず!
行きたくなァい……。
イベントの朝になってなんか急に面倒になってきた病です。アラシェです。
なんて、冗談はともかく。
ヤケに早起きなヒトリモとゼラを宥めつつ、朝食の用意をしているわけですよ。
「アラシェ! 準備はまだ出来ないのか!?」
「アラシェ! ライお嬢起こしてきても良いですか!?」
「だあぁやかましわっ! 庭の草むしりでもしておいて!」
庭。
センカさんの何気ない一言から、隣の空き地だと思っていた雑草畑が庭であることが判明したのだ。
といってもほんっとうに雑草畑だったので、このままではどうにもできなくて。
とりあえずいつか綺麗にしようと考えていたところだった。渡りに猫の手というやつだ。
避けようもなく運動をする朝だ。しっかりスタミナをつけなければ……と思うけれど。
米がない。
米がないのだ。
さてどうしたものか。
肉か? 肉を食わせて骨を断たねばならんのだろうか?
肉と肉で肉を包んで肉をまぶして肉と一緒に焼いてある程度で追い肉を投入したら落し蓋の代わりに肉を被せて肉汁で蒸し焼きにして香り付けに燻製肉をちらした料理を作れというのか……?
それは料理なのか……?
それはもはや調理しただけの生肉ではないのか……?
料理とは一体なんなんだ……?
うごごご……!!
「ア、アラシェさま!? どうなさったのですか!?」
あぁ……センカさんの声が聞こえる……。
「センカさん……私にはもうわからないんだ……。私はもうダメなんだよう……!」
「そ、そんなことはありません! アラシェさまは──
「小芝居、お楽しみ中でして?」
げっ、ライ金嬢!?
「ラ、ライ金嬢……いつから見てたの!?」
「いつからも何も、センカ嬢と一緒に台所に入ってきたのですが?」
えっ。
センカさんを見る。
……目を逸らされた。
朝飯はパンとイモとニクになりました。
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庭の草むしりも草々……もとい早々に飽きて、戦いごっこ(仮)をしていた二人を回収して、イモとかニクとか挟んだパンを渡す。ギルドに向かう道すがら胃にぶちこんで貰おう。
間に割って入るのが億劫なくらいに白熱したバトル(仮)をしていた二人。面倒なので先に二人以外で朝食を食べてしまったのだ。
はてさて、ギルドに近づいてきたわけだけれど。
いつもの出店が全くない。
あれぇ。イベントだってのにいつもより閑散としてる有様。どういうことなの。
そんな疑問を持ちつつ(私以外誰も何も言わないので黙っていた)ギルドに入る。
入ってみると、ギルドの中すら閑散。受付も一人二人しかいない様子。
不安になってきたぞう。すっかり寝こけていた昨日の内にイベントは終了していたのではっ!?
などと私がキョロキョロ辺りを見回しているうち、ライ金嬢が受付に歩いていった。
二言三言のやりとりの後、こちらを振り向いて言うには、
「あちらから飛べるそうですわ。行きますわよ?」
とのこと。
……──とぶ?
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ギルド内、素材の買取カウンターとか、いつもセンカさんが収まっている(?)窓口とかの反対側に、見慣れないミステリーサークルがあった。いわゆる魔法陣ってやつだ。
「珍しいですわね、こちらの管理下にある神為陣は」
へぇ。ライ金嬢によると珍しいらしい。
「まあ、とにかく入ってしまいましょう? 後もつかえてしまいますわ」
ということで、ライ金嬢に倣い神為陣とかいう魔法陣に乗る。
パーティー全員が乗ったところで、映画のシーン転換みたいに一瞬間に、目の前の景色が変わった。
「おぉう……人、だ」
そんな人並みな感想しか出てこない。
「先客万来、と言ったところですわね。開始時間までまだ一時間はありますのに」
「カイハージ街、こんなに人居たんですね……」
ライ金嬢とセンカさんも驚いた様子。
支援姉妹は気圧されたのか、フェルデナさんにくっついている。
ヒトリモとゼラの姿は既にない。どこいった。
……何か行列に並んでいる。その先を辿れば……『揚げ鶏』! ロータリーの屋台はこっちに来ていたのか。
というかやつら、この期に及んで何か食べるつもりだ。
一行が出たここは、石造りの円形闘技場と言った感じの建造物だった。黄色味がかった石材で建てられた、オーソドックスな感じのやつね。
私たちが今居るのは外周の一番上に近い辺りかな、見た感じでは。六階建てでいいのかな。六層構造になっている。
千里眼で色々とみたところ、楕円形で長径300m、短径250mくらいのよう。かーなりデカい施設だ。
あちこち見回していたら、ライ金嬢がこっちへ来いと合図をする。ついて行くと、こちらにも受付があった。
イベントへのエントリーはクラン単位でここから行うようだ。
受付さんに声をかける。
「すみません。出場の申し込みをお願いしたいのですが……」
「はい! ではクラン名を……あら、センカちゃん?」
「あ、カウンさん。おつかれさまです」
受付の人はセンカさんと知り合いの様。
「センカさん、知り合い?」
「えぇ。同僚です」
センカさんの居るクランなぞひとつしかない。
受付作業はさくりさくりと景気よく進み、参加証だというハチマキを貰った。
243と書かれたハチマキだ。受付番号らしい。数字が見えるようならどこに巻いてもいいとのことで。
とりあえず腕に巻いておいた。
「ヒトリモは首でいい?」
「殺す気かっ!?」
ナイスツッコミ。サムズアップしておく。
ヒトリモの腕にも巻いてやって、そうしたら他の皆も腕に巻いていた。まあ統一感あっていいんじゃないかな。
先の受付さんから選手個室は階層を数回降りた先だと聞いた。
ずらりずらりと扉が並び、そのひとつひとつに番号が振ってある。
降りてきた階段から何度か曲がって見えてきた243番。
扉が、押しても、引いても、開かないのでっ!
部屋を間違ったかと思いライ金嬢を振り向くと、当のライ金嬢はおもむろにハチマキを解き扉に触れさせた。
カチリと子気味いい音が鳴り、鍵が開いたよう。
「へぇ……すごいね。こんな仕掛けが……」
思わず感嘆の声が出る。
「あまり見ない形式ではありますわね。普通ははじめに説明があってもおかしくはないはずですが……」
ライ金嬢の言葉に、センカさんが答える。
「あぁ、私が居たのでカウンさんも説明を省いたのかもしれませんね」
そういうことか。なるほどなるほど。
「──じゃあ、仕掛けがあるのも知ってたってこと?」
「えぇ。もちろん知……りませんでしたヨ?」
へー?
そうなんだ?
いわゆるジト目でセンカさんを睨めつける。
すると、センカさんは目を逸らす。
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目線追いかけっこを制し、戦果さんを小脇に抱えて個室に入る。
思ったよりも広い20畳程の部屋だ。いや、畳なんてものは無いけれど。フローリングにカーペット敷き。
壁には埋め込みの縦ロッカーが十あって、部屋の真ん中には楽屋机のような簡素のテーブル一つと十人分のイス。それにベッドが二台ある。
窓はないけれど、元々の広さゆえか、照明の明るさゆえか息苦しい感じはない。
「……じゃあ時間もあるし、開会式まで自由行動でいいかな?」
皆に向かって言う。
「異議なし!」
とはヒトリモの言。
いてもたってもいられないのか、それともまた出店にでも行って何か食べるのかは知らないけれど、ヒトリモとゼラはまた駆け出していった。
うーむ。あと四、五十分はあるわけだ。暇な時間が。
さて何をするかな……と辺りを見回すと、ベッドに目が止まる。
ひと眠りするか!
ベッドに身を放り投げる。と、着地と共に板を叩いたような音がした。
……硬ァい! 思ったより硬いっ。
いそいそと起き上がり、アイテムボックスに入れっぱなしの布団を取り出してベッドの上に敷く。
そうしたら、もっかいダイブ! 今度は柔らかい。
掛け布団も出して本格的に休憩だ。
しばらく仰向けで目をつぶっていたら、布団の下の方からナニモノかがごそごそとやってきた。
「アラシェさま、お邪魔しま〜す」
センカさんだった。まあ二人でも余裕はあるけど、さ。
そこにもう一台ベッドが……って、硬いんだった。仕方ないか。
そんなことを考えていると、そのもう一台のベッドから、ドガン! とけたたましい音が鳴った。
横目で確認するに、ライ金嬢がベッドにダイブした音らしい。後頭部を強打したのか、悶えている。
……後ろのフェルデナさんの肩が小刻みに震えているのは気にしない。私は何も見ていない。いいね?
目を離ししばらくすると、センカさんとは反対側から、ゴソゴソとナニモノかがやってきた。
ライ金嬢だ。
「硬いベッドなどベッドではありませんわ……失礼いたします」
まあ、少し窮屈だけども。
寝ようと思ってダイブして後頭部強打した子に布団で寝るなとは言えないよね。
いやー、両側から体温が来てぬくぬくだぞ〜。
んではあと三十分程仮眠をとります。おやすみ。
【用語解説】
〇急に面倒になってきた病
出来事の前日夜~当日朝にかけて発病する病気。
明確な治療法は存在しないが、いざ出来事が始まると一瞬間に忘れられる。
〇ヤケに早起きなヒトリモとゼラ
遠足前の子供は徹底して遅寝早起きを貫く。
移動中に寝るまでがセット。
〇庭
とても広い。
センカ家を取り囲むように存在し、道に面していない一帯がより広くなっている。
しかし現在手入れは行き届いておらず、あまり見栄えのいいものでもない。
ヒトリモとゼラが暴れたので若干禿げた。
〇渡りに猫の手
船よりアテにならない。
〇肉と肉で……(以下略)
創作肉料理。調理しただけの生肉。ボリュームの化け物。
〇神為陣
神の意によってのみ起動する魔法陣。
という設定のテレポーテーション装置。イベントなどの際して運営が設置する。
NPCやプレイヤーには起動できない。
〇先客万来
ライ金嬢渾身のギャグ。
いかんせん音が一緒なため、誰にも気づかれず終わった。
〇カウン
カイハージギルド受付嬢、センカの同僚。
その他特に設定は練られていない。
名前の由来はカウンターから。
〇受付番号
小、中、大規模ごとに百の位の数字が違うが、概ね先着順で番号が配布される。
243は、中規模の43番目を示す。
ちなみに、小規模クランは五人まで。中は十人。大はそれ以上。母数としては圧倒的に中が多く、カイハージ街の大規模クランはレフジーズを含め三つほどしかない。
〇腕にも巻いてやって
ヒトリモ、両手に食べ物を持っていたゆえに。
〇戦果さん
この駄洒落が出るのは二回目。天丼である。
〇硬ァい!
医療用ベッドなので、器具類の置きやすさも考慮し硬めである。怪我人を寝かせる場合は別途布類が支給される。
〇ライ金嬢がベッドにダイブ
今現在ライ金嬢は鎧を身につけてはいない。
ので、硬さをダイレクトに受けたことだろう。
……ベッドはダイブするものである。そこに疑念の余地はない。
〇反対側から、ゴソゴソと
アラシェの事を男だと思っているライ金嬢である。勇気を出して布団に入った。かもしれないし、案外そんなこともないかもしれない。
ちなむと、アラシェ側は全く意識していない。
〇仮眠
寝過ごすのがお約束。
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コロナ対応で長らく間を空けました。申し訳ない。
次回投稿は一二週間後を目指します。
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