第十七話:嵐の前の静けさ? 戦士たちの休息。
前回のあらすじ
雨天デートはロマン。
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遅くなりました。
一週間ほど前の話ですが、先月の百合の日に合わせ活動報告に短編を上げておきました。
「アラシェとヒロインと百合」というテーマで、三秒程度で読める文量となっておりますので是非ご覧ください。
第十七話:嵐の前の静けさ? 戦士たちの休息。
対抗戦まで一日を切った、今日。
漫然と、何かしないとな……という気持ちが強くなるけど、何をすればいいんだろう。
とりあえず、肘枕の姿勢でセンカさんの寝顔を見ながら考える。
……この言い方はなんかキモいな。いやでもそのね? 弁解させてもらうと、センカさんってほんとに顔整ってるのよ。もうね、美術品って感じ。
ミケランジェロの彫像見ながら考え事してました、って言ってもキモがらないでしょ? そんな感じ。私キモくない。
美術品で思い出した。軍服コスについてきたよく斬れる軍刀をどんなものか知りたかったんだった。
装備品の性能っていうのは、その品々に合った職業の人にしか見えない。
もっと正確に言うと、初期スキル、私の場合は弓術だけど、その権能として特定の武器性能の鑑定眼が付与されるって感じだ。
だから、剣士系統なら刃物。弓術士なら弓。魔法士なら杖。拳闘士ならナックル。その他諸々。というわけ。
じゃあ生産職ならどうなんだ、と思った人もいるだろう。
生産職は、自分が扱える素材を使った武器に適性があるんだ。
鍛冶師なら金属。裁縫師なら布。大工なら木。その他諸々。ということ。
これの厄介なところは、素材由来というところ。
例えば、初心者の何とかシリーズ。つまり初期装備群は、その殆どが木素材でできている。なので、装備可能職業と大工で鑑定可能。
例えば、銀の剣。これは金属系刃物なので、剣士と鍛冶師。といった感じ。
同じ武器種でも素材が違うと、生産職には見えなくなったりする。面倒だね。
さて。ここで聡い読者諸兄姉は思っただろう。すなわち、『総ての素材を扱い得る生産職は鑑定において最強──?』と。
結論から言うと、最強である。
金属を扱い、布を扱い、そして木を扱う。そんなスーパー生産職がある。
その名も、──細工師。
そう。ヒトリモのサブ職業だ。
正直、あのヒトリモが狙って取ったとは思えないけれど。とにかく、ヒトリモが持っているのだ。
そしてアレだ。今気づいたけど、サブ職業の取り方が分からない。そのうち聞いてみよう。
……今日やることも決まったし、寝直そうかな。おやすみなさい。
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対抗戦も直にやってきますけれど、わたくしは非日常よりも日常を大切にしたい質なのです。
センカ嬢がお休みを取り、それをアラシェが労う限り、わたくしやヒトリモちゃんは自由な時間が続きます。メイド衆にも自由にするよう言いましたから、皆気ままに過ごしていることでしょう。
さて、実はこの度、クラン資金からお小遣いを頂いたのです。
このお金は、メイド衆への労いと、わたくしの趣味に費やすつもりですの。
この街は中央にギルドが存在し、そこから放射状に道が伸びる構造上、近場以外はどこに行くにもギルド経由が一番早かったりします。
つまり、特に行先の決まっていない場合、とりあえずギルドに向かうのがよい、というわけです。
どうしたことでしょうか、この街はゴミが多い。
目に留まったところをことごとく拾ってはいるのですが、やはり人っ子一人の力など無力なのでしょうか、減る気配は全く見えません。
いえ、そもそものお話。ゴミなどご自分のアイテムボックスに放り込んでおけばよいのです。ポイ捨ては罪。有罪ですわ。
あっちへ行っては拾い、こっちへ行っては拾う。そのようにして道を進んでいきまして、ギルドに着くのに普段の数倍程度時間がかかりましたの。
そうして気づきましたわ。……むしろギルド周辺の方がゴミが多い、ということに。
この国でも有数の大きさを誇る、この中央ロータリー。
冒険者ギルドを中心として、その外側に広い歩道。さらに外側には馬車三台が並行して走れる幅の道が横たわります。
そして、またも歩道が現れる訳ですが、それが曲者です。内側の歩道よりもなお広く広い歩道には、露店が多く出店していますの。
露店、これは飲食店も多く含まれるものですが、やはり狙う客層ゆえ、食べ歩き用の包装がなされています。
そうして、露店の周りにはポイ捨てゴミが散らかってしまうのです。
辛うじて、露店の店主たちの手の届く範囲は綺麗になっていますが、それだけです。
さて、毒を食らわば皿まで。ゴミを拾わば隅々まで、ですわ!
じぐざぐじぐざぐ、ゴミからゴミへ移動して、一周を終えるころでした。
露店のおばさまが、
「ちょっとそこのお嬢ちゃん! ちょっと来なさいな!」
とばかりに声をかけてきたのですわ。
「わたくし……でしょうか? なにかありましたの?」
「おばちゃん、さっきから見てたけどね。あなた、してくれてたでしょう? ……ゴミ拾い!」
「えぇ、そうですわ。それがなにかしまして?」
「そう、そうなの。そ〜んなにゴミ拾いしてくれるの、とっってもありがたいのよ! でもとっっても大変そうじゃないの。見かねたわ、これを持って行ってちょうだい」
手渡されたのは、大きな袋と……トングでしょうか?
「ゴミ拾い用なのよ。ゴミ袋と、ゴミつかみ。そのゴミ袋に入れればそのまま焼却に出せるの。私たちは店番で動けないから、お嬢ちゃんみたいな親切な子がいると本当に大助かりなの。みんな感謝してるわ。覚えておいてちょうだい」
今までのアイテムボックスに入れていたゴミを移し替えてしまいましょう。
どさりどさりと取り出して、ゴミ袋を埋めていきますと、さて。取り出しきらないうちに、袋が満杯になってしまいましたわ。
お店の前でしたから、先程のおばさまがまた話しかけて来ます。
「まさかそんなにあるとはねぇ! 袋はまだあるからあげるよ。……そうだ、ついでにこれもあげちゃうわ」
おばさまから頂いたのは、ピンバッジでした。
三重の円を象った装飾がなされています。
「これは?」
「組合員証よ。ここらの出店が所属してる、出店組合のね。それを着けておけば、きっとおまけしてくれるわ!」
そういうわけで、ゴミ拾いが組合員証に化けたのでした。
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アラシェに渡された軍刀を眺める。
まず、この目を惹くのは長さだ。
一般的に大太刀と呼ばれる程度の刃渡りがある。
ただし……直刀だ。大刀と呼ぶんだったかな。
ものすごく使いづらそうだな。
腰に佩いても背負ってもきっと抜刀に時間がかかる。
軍刀という触れ込みらしく、護拳がついてはいる。ついてはいるのだが、柄は大大刀らしく長いために、護拳もそれ相応に伸びに伸びている。それはもう面白いほどに伸びている。
それで、性能はどうなんだ?
どうせあのバカアラシェのことだ、戦闘に特化したビルドをするんだろう、と思って、事前に仕入れた情報を参考に細工師をサブ職業として取ったわけなんだが。
ようやっと、日の目を見るわけだな。今まではフェルデナのナイフくらいにしかなってないしな。あとは資金。
よし。鑑定……っと。
《破城刀・二式改》
攻撃 ×1.3
防御 +5
要求力値 450
──たかだか槌ごときに城が破れて、我らが刀に出来ぬはずがなかろう。という発想の元に生まれた異端児。
性質上、持つ者が強ければ強いほど強くなりやすい。
製作者:不明
攻撃値が乗算なんだな、これ。ずるくないか。
……まあ、装備に必要な力の値がだいぶ高い。そこら辺でバランスとってるんだろう。
ちょっとついてる防御値は誤差。気にするだけ無駄。
こんな感じだな。
性能はメモしておいて刀を返すとき一緒に渡せばよかろう。
刀を傘立てに突っ込む。
家を出る。昼過ぎにもなれば、太陽は……ちょっと待てよ。地図、地図……太陽の方向が……王都。よし。太陽は南中し、やや湿気た空気に射す光が眩しい。
カイハージ南。専門店街のとある防具屋。ここで、私は工房を借り受けていた。
「おやっさーん! 来たぞ!」
「おうおう、また来たのか。炉に火は入ってないが、まあ勝手にやってくれ」
「言われんとも勝手にするさ」
……ん?
この前置いていった製作物が幾らか減っている。売れたか?
「おやっさん、盾はアレ、売れたのか?」
「売れてねぇよ。あんな危ないもん売れるか。武器屋に買い取ってもらったんだ」
「ふむ。そうだったか。次はもう少し防御寄りにするよ」
「おう。是非そうしてくれ。……そういや、ストラップは評判いいぞ。服飾屋にも売ってくれって頼まれたんだ。考えといてくれや」
「了解。考えておくよ」
今日来たのは他でもない、そのストラップ作りにだ。
アラシェの直刀をモチーフにする。
木を削って刀の形を型取り、粘土を包むように圧し被せる。
火魔法で焼けば、木が焼け隙間ができる。そこに火魔法で熱した適当な金属を流し込み、少し待てば完成。土産屋でよく見る心惹かれるアレに似た何かだ。
この方法なら、細工のレベルが低かろうと量産も出来る。……というか、火魔法の温度管理の楽さゆえにこれが一番早い。
同じような手順で、盾型のボタンも作ってみた。持ち手の辺りに足が来る、ちょっとオシャレな感じだな。
ついでに他の型も取り出して、大量に作ってみた。
「おやっさん」
「なんだか?」
「色々作っておいたぞ。販路は任せるから好きにしてくれ」
「おう。……っと、こいつは服飾屋向けか? 仕事が早くて助かるぜ」
「勝手に助かってろ。じゃ、いつも通り、売れたら七割は寄越せよ?」
「はっはは、可愛くねぇ奴だな。置いときゃそのうち売れるさ、気長に待ってろ」
店を出る。
アラシェのためにと始めた細工師だったが、案外向いてるのかもしれないな。
【用語解説】
〇細工師
確かに、なんでも鑑定できるという点では最強。
ただし、鑑定能力自体の成長がだいぶ遅いため、練度が低い頃は心許ない性能である。
〇狙って取ったとは思えない
狙って取っている。
〇アイテムボックス
生物の標準装備。まれに非生物ですら保持していることも。
容量は個体によって違うが、最低でも岡持ちひとつ分程度はある。
〇ピンバッジ
出店組合の組合員証。本来ならば組合費的なアレがあるはずだが、屋台のおばさまが何とかしてくれた。
象られた三重の円は内側から、ギルド、道路、出店を表す。
〇大太刀
刃長1メートルは下らない程度の刀。
一時とはいえ、アラシェはこれを腰から提げた。
〇破城刀・二式改
直刀。大大刀。
補正値が高く、武器としては強力。だが、重く、取り回しが悪く、抜刀納刀に時間がかかり、やや耐久も低く、ほぼ無意味な防御値がついている。
〇直刀をモチーフにする
このヒトリモという女、健気属性がある。
〇木を削って〜〜
このヒトリモという女、手先が器用である。
〇可愛くねぇ奴だな
ただし、外見は美少女。なお中身は軽度中二病。
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