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第十五話:眠り姫、よく寝る。

前回のあらすじ


風呂に入った。

 


 夕食の片付けは当番制です。今日は私の番ということで、やけに広い台所に向かおうとしましたが、ヒトリモさんに止められます。


「疲れているんだろう。代わってやるぞ。……まあ、アラシェに頼まれたんだが」


 どうも、アラシェさまの手回しの様です。


「では、お言葉に甘えましょうか」

「ああ。存分に甘えてくれ」


 ヒトリモさんにお礼を言って、部屋へ戻ることにします。



 部屋に戻ると、アラシェさまが既に寛いでいます。


「ヒトリモは代わってくれた?」

「えぇ。代わっていただきました」


 アラシェさまは、それは良かった、とつぶやくと、自らの膝をぽんぽんと示します。


「膝枕してあげる。おいで?」


 う、抗いがたい申し出です。しかし、私は本を読みたかった身、この誘いは打ち破らねばなりません。


「アラシェさま、私は本を読みたいので……惜しいですが、辞退させていただきます」

「膝枕されながら本を読めばいいのでは?」

「それでは腕が痛くなります」

「……じゃあ、読み聞かせでもしてあげようじゃないか」


 ・

 ・

 ・


「ギァアアア。とばかりに、悲鳴に見間違うかのようなブレーキ音が馬車から響く。

『この乗合所は、何時来ても騒がしいな? ワッツォ君』

『それはそうでしょう。なんと言っても数十年の歴史は伊達でない。今では百を優に超える自動馬車が集うそうですよ』

『……なんにせよ、大した喧騒だ。鬱陶しいことこの上ないな』

 視界を遮る喧騒を避けるべく、我々は出口へと向かう。尤も、外に出たところで落ち着く道理は無いがね」


 無理言って読み聞かせをすることに。

 センカさんには苦労をかけすぎた気がしている。そこで、ヒトリモに何をしてあげるのがいいかを聞くと、『膝枕がいい』と。本を読みたいセンカさんと案を折衷させ、今に至る。


「『私の目は欺けんぞ! 待てェい!』

『足は撒かれましたな、シオン殿。馬力馬車を手配しています。暫しお待ちを』

 むう。運動不足で千載一遇の好機を逃す事になるとは……。いくら動かぬ職と言えど、運動は大事だな。まずはジョギングから始めよう」


 しっかし、なんなんだろう。この本。

 推理モノっぽいんだけれど、シオン? という主人公は音が見えるらしい。どういうことだ。

 ワッツォ君は助手役らしいが、案外ラフに話しかけるし乗り物の手配がヤケに上手い。

 そして、登場人物のことごとくが、ちょくちょく運動を勧めてきたりなんだりする。新手のサブリミナルか?


 タイトルを見る。……『視音探偵シオンと鉄馬車の謎』だそう。シリーズものだろうか。



 といったところで、センカさんから寝息が聞こえてきた。やっぱり疲れてたんだろうね。

 起こさないように、少し不格好な動きで膝を抜く。まあ私はステータスが高いので? こんな動作造作もないけどね?


 疲れた人間をソファで寝かせるわけにはいかない。

 これは持論だけれど、休息は落ち着いた入浴と質のいい睡眠だけで取れるんだ。娯楽でだって疲れるんだよ。


 細心の注意をはらいつつ、センカさんをお姫様抱っこで持ち上げる。そのまま体という体のサスペンションを総動員し、ベッドに運ぶのだ。


 それにしても、センカさんの寝顔はあどけない。普段、シャキッとしている顔は、美しいなんて形容が似合うくらいなのにね。

 ……そういえば、年齢を聞いたことは無かったかも。今度、それとなーく聞いてみよう。


 センカさんの寝顔を見ていると、幾らでも時間が消えていってしまう。

 自分の寝る時間を確保するため明かりを消して、布団に入る。

 おやすみなさい。




 早起きは三文の徳と言うけれど、得としては概算が甘い。早起きするだけで毎朝美少女の寝顔が見れるなら、これに優るものはないね。

 つまり、早起きはプライスレス。健康な生活バンザイ!


 はい。おはようございます。アラシェです。


 センカさんはまだ寝ている。いつもの事でもあるけどね。

 今日は一日ゆっくりしてもらうつもりだから、起こすことはしない。


 さて、おっきい子供たちとちいさい子供たちとフェルデナさんにご飯をあげたら。


 ──暇である。外は生憎の雨天。


 そういえば、昔は暇なとき、何してたんだろうね。

 このゲーム中にはテレビもラジオもない。活版印刷はあるけれど、新聞はない。暇だ。


 本当にすることがない。

 ……仕方ない、アイテムボックスの整理でもするか。



 破城弓・三式。火力がいる場面では専らこれ頼り。

 耐久値が高いからまだ修理には出さなくてもよさそう。テーブルに置いておく。


 初心者の弓。特に敵が強くなければこれ。

 耐久値は無限なので多少無茶しても安心だ。破城弓の隣に置く。


 生スライム瓶。スライムと戯れると増える謎アイテム。個数は数えるのが面倒なくらい。

 この前は売りさばいて資金にしたけど、今度はどうしようかな。


 ゴブリン各種、犬っころ各種、牛馬トカゲのドロップアイテム。端金にもならない下位素材から、市場に出回ってすらいないレア素材まで。いつ何に使うか分からないからとっておくのだ。


 軍服コス。センカさんにもらったやつ。生地がいいので、多分結構な値段だろう。大事に使おう。軍帽もついている。


 軍刀。軍服コスについてきたやつ。

 まあ多分おもちゃでしょう。と思い刃に手を滑らせると、ぱっくり切れた。いや、斬れた。

 ……本物かー。ありがたく貰っておくけどさ、どこで売ってたのよこれ。あとで聞いておこう。


 前に雑貨屋で買った変な矢。使い道はない。


 回復ポーション。以前まとめて買ったが枯渇した。

 最後の一本を手の回復に使う。

 回復はクリスちゃんに任せたいけど、念の為補充しておこう。……そのうち。そのうち補充するよ。


 寝巻き。つまりパジャマ。センカさんに貰ったやつ。とてもかわいらしい。寝る直前に着替えるから、センカさんを除いた住人たちに見られたことはない。


 私服。センカさんが選んでくれたやつら。外用だから、仕方なーく男物。仕方なく、ね。別に某部分のサイズがピッタリだから、とかそういう理由は無い。無い。


 あとは、食料。

 自前のアイテムボックスがあるこの世界で、冷蔵庫やらなんやらの専用保存機具は勢力が弱い。アイテムボックスにぶっこんで置けば場所も取らないし、傷みもしないからね。

 と聞けば便利に思うかもしれないが、実際は問題もある。そもそも、アイテムボックスの容量は無限じゃない。それに、アイテムボックスに入ってたら他人には取り出せないからね。

 そういうわけで、我が家では食事当番用に常備するのが暗黙の了解となっているわけだ。……まあ、たまに融通してもらうこともあるけどね。



 ……こんなもんかな。

 ある程度直ぐに必要なのは、回復ポーションと食料の補充くらいか。



 時刻は──十時。まだ昼にはだいぶ早い。……ステータスでも見ようか。久しぶりに。



 NAME:アラシェ

 レベル:165

 スキル:弓術(EX),

 矢作成(EX),

 必中(A++),

 必殺(A+),

 徹底(EX),

 無心の殺戮(EX),

 非情の射手(B),

 非道(C+),

 外道(C),

 邪道(C++),

 無道(C),

 異端(C),

 掟破り(A),

 ウルフ殺し(EX),

 ゴブリン殺し(EX),

 スライムの友(A++),

 曲芸射(EX),

 遠見(C+),

 千里眼(C),

 自爆(1),

 拳法(D+),

 レイド殺し(B-),

 捨て身の拳撃(D),

 受け身(D),

 睡眠(B)



 なるほどね。

 新スキルは少しだけ。その少しだけの中にも意味不明なスキルがあるけど気にしない。もともとあったやつは少しランクが上がってる。その程度か。


 うーん、そんなに確認する必要もなかったかな。


 強いて言うなら、自爆スキルのランク表記が数字なのが気になる。

 1、って言うとスキル使用回数だろうか? なんだろうね、このカウント。使いすぎるとダメなのかな?



「おはよう……ございます……」


 と、ここでセンカさんが起きてきた。眠気まなこで枕を抱いて、半寝のおぼつかない足取り。


「おはよー。ご飯食べる?」


 まともな返答がかえってくるとは思えなかったが、聞くだけ聞いておく。


「むにゃたべもにゃにゃ……」


 なるほどね?


 とりあえず準備だけでもしておこうと、立ち上が──るのに、失敗した。

 センカさんが寄りかかってきたのだ。……そして、ふたたび夢の世界へ行ってしまった。


 ソファに座った私に、袈裟懸けのごとくもたれ掛かるセンカさん。動きようがない。




 十二時を過ぎたあたり、つまり二時間弱程して、センカさんはちゃんと目を覚ました。


「……はっ! す、すみませんアラシェさま!」

「いいよいいよ、気にしないで。ゆっくり休めた?」

「はいっ! おかげさまで!」


 ……クラン関係の仕事は私のせいで増えたわけだろうし、つまり労働を強いたのは私。そして労働を労ったのも私。これなんてマッチポンプ?


「じゃあ、お昼を用意してくるよ。寝ないで待っててね」


 ちなみに、ヒトリモとライ金嬢はどこか遊びに行った。メイド衆は朝食から見ていない。普段何してるんだろうね。


 調理が終わった昼飯二人前を持ってもどると、センカさんはうとうとしていた。

 まだ寝足りない?


「センカさーん。起きてる?」

「はっ!? ね、寝てないですよ!? 起きてます。起きてます!」


 起きてるらしい。


「そ、そう。じゃあ、どうぞ」


 机に並べた二人分。無論、センカさんに倍食わせるわけではなく、半分は私の昼食だ。


 私は食べ始めるが、センカさんは席を立ってどこかに行ってしまった。

 ……と思ったら、直ぐに戻ってきた。──黒縁メガネを携えて。


「センカさん……そのメガネ、どうしたの?」

「これはですね、冷感メガネです! 眠気覚ましに丁度いいんですよ〜」


 なにそれは……。いや、まあ、朝が弱いセンカさんが自分なりに工夫して得た策なんだろうけど……。

 にしても冷感メガネってなんだ。冷感はともかくメガネである必要ある? 冷感ネックウォーマーとか冷感ハチマキとかそういうのでも良かろうに。


 あ、メガネ自体はすごく似合ってるよ?


【用語解説】


〇『膝枕がいい』

 経験に裏打ちされた確かな情報。


〇得としては概算が甘い

 前提条件が大分キツいので真に受けないこと。


〇おっきい子供たち

 ヒ、ラ、ゼの頭文字を持つ三人。


〇冷感メガネ

 かけると頭全体を包み込む程度のひんやりフィールドを作り出す。縁は色々な種類があるので、ファッションとしても有用。


〇冷感ネックウォーマー

 つけるとひんやりしそうなネックウォーマー。少なくともウォーマーではない。

 アラシェが三秒で考えた謎アイテム。


〇冷感ハチマキ

 つけるとこおりタイプの攻撃が上がりそうなハチマキ。鉄芯を入れておけば確殺狙いの刺突にも耐えられるだろう。

 アラシェが三秒で考えた謎アイテム。


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