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第九話:一気加勢のメイド隊! メイドの土産は待て次号。

前回のあらすじ


 爆ぜろアラシェ

 爆ぜろアラシェ

 爆ぜたアラシェ

 


「おはようございます」


 朝の挨拶は大事だ。なぜなら、朝の挨拶は大事だからだ。なぜ大事かと言うと、それが朝の挨拶だからだ。このように、綺麗な三段論法で朝の挨拶が如何に大事かわかっていただけると思う。


「さてはアラシェ、普通に寝ていましたわね?」


 ライ金嬢が言う。


「普通じゃない寝方があるなら教えて欲しいものだけど」


「いえ、貴方。自分が寝込んでいた理由を覚えていませんの? それに、まだ夜中ですのよ。寝ぼけていますのね?」


 ふむ。今は夜らしい。夜なのかな? ……夜だった。


 寝る前は何してたっけ。

 うむむ。ライ金嬢のレベリングに行ったんだったっけかな。そんで……そんでどうしたっけ。

 ああ、怒犬っころと戦ったんだっけ。……あ、そうだった。結界がどうこうあったんだよね。うん。

 ライ金嬢がここにいるってことは結界は無くなったんだろうし、つまり怒犬っころは死んだんだろう。

 結界あいてよかったね。


「ライ金嬢。あけましておめでとう」


「もういいです寝ててくださいまし」


「わかった。おやすみ」



 寝ますね。


 ─────────────────────



「おはようございます」


 朝の挨拶は大事だ。なぜなら、朝の挨拶は挨拶の一環だからだ。挨拶はコミュニケーションの一環であり、コミュニケーションは社会的行動の第一歩だから大事である。社会的行動は、それがないと社会的生物である人間としての意義を失ってしまう。故に超大事。だから、朝の挨拶は大事だ。n段論法によって導かれた。


「えぇ。おはようございます、アラシェ」


 と、ライ金嬢は笑顔で挨拶を返してくれる。

 うむうむ。やはり朝の挨拶は大事でしょう?


「ところで、今の時間、わかっていらして?」


「そりゃあ勿論。11時だよ」


「分かっているのなら、まあいいですわ。とりあえず、センカ嬢は出勤、ヒトリモちゃんは引き続き工作に励んでいますわ」


「じゃあレベリングに行こうか!」


「お断り致します」


 とばかりに軽く言葉を交わして。

 そうして、ライ金嬢は食事の支度をはじめた。


「まずは昼餉をどうぞ」


「私にとっては朝餉です」


「時間」


「はい」


 いただきます。ごちそうさまです。




 食べ終わる頃になって、ライ金嬢が話しかけてきた。


「それで、アラシェにお話がありますの」


「はい」


 なんでしょうか。

 含みがある様子で話を続けるライ金嬢。


「わたくしのメイド、フェルデナ──と、他三人のことですわ」


「あーあー、あの人ね……他三人?」


 ……私は一人しか知らないのだけれど。


「兎にも角にも、見ていただいた方がはやいですわ」


 と言って、ライ金嬢は一度手を叩く。

 すると、この前の子、銀髪ショートのフェルデナさんと三人のメイドが入ってきた。

 ずっと扉の外で待機してたの? 私の家なんだけどなぁ。……違う。センカさんの家だった。


「フェルデナ、紹介してやりなさい」


 ライ金嬢の一言で、フェルデナさんがうやうやしくも声を発する。


「承知致しました。まずは私、フェルデナと申します。対人戦専門の武装メイドにございます。そしてこちらが──」


 フェルデナさんの目線が指した、紫髪に碧眼の長身な女性が話し始める。

 見るからに快活そうな顔つきだし、多分語尾にちっちゃい()が着くタイプの子だ。


「ゼラですっ! 専門は拳法術、家事に関しては力仕事をお任せ下さい!」


 フェルデナさんとは違って、軽そうな格好だ。メイド服はメイド服だけれど、なんというか露出が多いというか。端的に言うと、スタイルの良さが隠せていない。


 次に発言するのは白髪セミロングの女の子。


「クリスであります。回復術など出来ます! 以後お見知りおきをよろしくであります!」


 小さい子だ。というか子どもだ。小学か中学生くらいの年齢に見える。メイド服も、あまり重そうでない仕立てになっているし。

 それにしても、ヒーラーなんて珍しい。あんま見ないからね。……他プレイヤーと交流したことは無いけど。


 そしてラスト、白髪ロングの女の子が発言。


「コロンです……! 補助術が得意です! よろしくお願いしますです!」


 ふむ。お嬢ちゃんは小学何年生かな? ちっちゃくてかわいいねぇ。……いかんいかん。きもちわること口走った。

 もはやメイド服姿というよりは、メイド服に似せたワンピースを来ているような様である。


「コロンはクリスの妹なのですわ。姉妹揃って支援に長けていますの」


「へぇ、そうなんだ。……んで、なんでいきなり紹介が始まったの」


「それは勿論、この子達をクランに所属させて欲しいからですわ」


「まあそんなこったろうとは思った」


「であれば話は早いですわね。早速ギルドに行きますわよ!」


 そういうことになった。




 私とライ金嬢がならんで歩き、そうして後ろにメイド四人衆が続く隊列だ。

 古いロールプレイング・ゲームでもここまでずらずら連なってはおるまい。

 ま、冒険者の街カイハージではさほど珍しい見目でもないので道中何事もなくギルドへは着いたのだけれど。


「あ! アラシェさま! 依頼ですか? 売却ですか? ……それとも、私ですかー!?」


 ギルドに入ったら絡まれた。

 なんでそんなにテンション高いのセンカさん。

 ちょっと呆れ目でセンカさんを眺めていると、隣に居たライ金嬢がすっと前へ出て、


「ふふん。残念でしたわね! 今日はそのどれでもありません。クラン員の追加に参りましたわ!」


 と言う。貴女も張り合わなくていいから。


「ライ金嬢の言う通り、クラン員の追加に来たよ。手続きお願い出来るかな?」


「わかりましたー」


 駆けていく後ろ姿を見る。

 センカさんって、割と冗談っ子なところがあるよね。普段は真面目然としててそんな雰囲気微塵もないのにね。

 案外、私のことを親密な人判定して冗句をぶん投げてくるのかも、なんて考えると気恥しさが勝るけれど。



 諸々の手続きをして。


「はい、では。えーっと、フェルデナさん、ゼラさん、クリスさん、コロンさんの四名ですね。確認しました」


「うん。ありがとう、センカさん。じゃ、またあとで」


 センカさんに挨拶。


 そうしたら、ギルドから出る。



「で、ライ金嬢。何かある?」


 ライ金嬢の顔には帰りたいって書いてあるけれど、まあ社交辞令的に聞いておく。


「とりあえず拠点(ホーム)に戻りましょう」


 とばかりに既知の言葉を聞いて、行きと同じ隊列でもって帰路につくものとする。



 というわけで、何事も無く帰宅。

 ……──とは、ならなかった。



 それは、家へあと数百メートルといったところで発覚する。


「ねぇ、ライ金嬢。クリスちゃんとコロンちゃん、どこ行った?」


「ここに居……ませんね。居ませんわね!?」


「僭越ながら。ライ様、二人はギルド前の露店街周辺から姿が見えません」


「もっと早く言って欲しかったですわっ!」



 そう。補助術士姉妹が迷子になったのだ。なっていたのだ。


「とりあえず戻ろう。ギルドまで駆け足!」


 走りながら情報をまとめる。


「そう言えばそうでしたわ! あの姉妹は揃いも揃って方向音痴ですの! 正直さっぱり忘れていましたわ!」


 方向音痴らしい。


「こちらでも改善を図っていたのですが、力及ばず」


 フェルデナさんは分かっていたらしい。早めに言ってくれぇ。

 と、ここでゼラさんが──


「ライお嬢、失礼しまーすっ! 《アッパーテンペスト》ッ!」


「! ちょっと、それはやめなさいと何度も何度も──ふわぁっ!?」


 ライ金嬢の制止の声もほどほどに、地面から産まれた大きな大きな石の大腕がライ金嬢を真上に打ちあげた。なかなかの高度だ。

 あ、落ちてきた。……けれど、アフターサービスも完備のようで、先程の大腕が手のひらを開いて以て受け止めの姿勢としていた。


 落ちてきたライ金嬢は石の腕に抱かれている。

 目立つのは冷や汗。あとはお怒りのご表情。


 ゼラさんが悪びれもない顔でライ金嬢に尋ねる。


「場所、分かりました?」


 ライ金嬢の怒りはとどまるところを知ったのか、もはや半ば呆れ混じりの怒声が響くことになった。


「あなたに学習能力というものが無いことは分かりましたわ! 減給ですわ、減給!」


 火の勢いが弱まったのを察知したフェルデナさんが、油を注ぐなどしてチキンレースをしているのもいとをかし。


「僭越ながら。給与はクランから支払われますので、ライ様がそれを左右なさることは難しいかと」


 そうして再点火したライ金嬢が地団駄を踏み、


「そんなこと百も承知ですわよ!!」


 ビシリと石畳にヒビが入ってこの話はおしまいだ。



 石畳から生えていたゼラさんの大腕スキルがヒビをどうにかこうにか直して、状況はようやくニュートラルに戻りつつあった。


 そうして、私がいま一番気になっていることを聞きえる情勢となって。


「ところでライ金嬢。見つかったの? 姉妹」


「見つかりましたわよ! 北の裏路地、突き当りで右往左往していましたわ!」


 と言うなり、おもむろに屈みゼラさんの両足を掴むライ金嬢。


「うりァっ!!」


 そしてそのまま、円盤投げの如く大空(北側)にぶん投げた。


「ふぅ。スッとしましたわ」


 つかぬ事を聞きますけれど、あれ、着地できるのでしょうか。まあ出来るから投げたんだろうけどね?




 ゼラさんが姉妹を連れて帰って来るまで、特にすることは無い。できることも無い。まあ、つまるところ暇なので。


「とりあえず、センカさんの顔でも見てくるよ」


「分かりましたわ。ではフェルデナ、わたくしたちはここで待機です」


「承知致しました」




 ガチャリと扉を開け、中に入る。


「センカさんただいまー!」


「おかえりなさいアラシェさま! 私ですか? 私ですか!? それとも……普通の依頼ですか?」


 扉近くまでセンカさんがとんできた。

 最初はテンションマックスだったけど、周りの目が刺さって段々と下火に。ちょっと顔を赤らめている。

 そんなセンカさんに、ちょっとしたイタズラを仕掛けたいと思います。


「んー、今度はだね。──」


 センカさんの後頭部に手を回して、逃げられないように固定。

 耳元で、ささやくように。


「センカさんに、会いに来たよ」


 と、言ってみる。


「ふえっ!?」


 と一声悲鳴(?)をあげると、センカさんは腰が抜けたようにしなだれかかってきた。

 顔は真っ赤だし、息は少し荒い。

 ……このままじゃあ私も動けない。立ちっぱなしは辛いよ。


 仕方ないのでセンカさんをお姫様抱っこで運ぶ。ちょうどよく首元に手が回されていたので案外楽に持ち上げられたのは、偶然か必然か。



 ん、レフジーズの席の隣が二つ空いてるね。ちょうどいいし借りに行こう。


「ここ、借りてもいいです?」


 と聞くと、


「おう、いいぞいいぞ」


 と、返すこれがリーダーらしいけど影の薄いイスーク。


 とはいえ、葉物の漬物並にくたらっとして自立できないセンカさんを椅子にほっぽる訳にもいかない。

 結局姿勢はあまり変わらぬまま、着席となった。



「お熱いこって。皆見てるぜ」


 囃すこれが最年長らしいけど影の薄いトソーリ。


 実際周りの視線を感じないこともないけれど。そんなこと、センカさんがふにゃらっとして可愛いからに決まっている。



「おうおう、俺の若い頃みてぇだなあオイ。いやまだ俺は若いが?」


 そしてこれが最年少らしいけれど影の薄いワッケナ。


 私たちの方が仲良しだよねーとひとつ冗談で返したいところだけれど、彼の言葉に呼応してセンカさんの顔の赤みが増した気がするのでそれでよしとしておいた。



「兄ちゃん、これでも見とけや」


 そして坊主だが影の薄いボズーがチラシを一枚差し出してきた。


 視界の端で確かに主張する青髪に逸れる気を何とかなだめつつチラシを見る。



「えーっと、クラン対抗戦?」


 チラシの一番上にでかでかと題された単語を読み上げると、レフジーズの誰かしらが補足してくれる。


「そうとも。ギルド主催のお遊びだ。渡界人のクランも増えてきたらしくてな、顔見せを兼ねたレクリエーションだとかなんとか」


 なるほど。でもチラシで来るってことは強制参加では無いのかな?


 おっとと、センカさんがぐらついて危うく落としそうになった。

 ので、抱き直して片手でがっちりホールドしておく。



「参加は自由なんです?」


「まあそうなんだがな。……でもよ、参加していい成績でも残せばギルドからの(・・・・・・)覚えが良くなる(・・・・・・・)だろうし、特例でランクアップ(・・・・・・・・・)とかもあるかもだろう」


「あぁ、なるほど。参加するメリットがあるんだ」


 うーむ。今のクラン人員は、私、ライ金嬢、ヒトリモ、フェルデナさん、ゼラさん、クリスちゃん、コロンちゃんの七人。

 そのうちセンカさんにも入って欲しいのだけれど、どうにか非戦闘職的な役職が見つからないかなあ。


 それはさておき、規模はそれなりに小さい方だと思うのだけれど。


「クランの人数が少ないんですけど、大丈夫ですかね?」


「あぁ、気にすることじゃない。うちは三十人弱居るが、逆に多くて困ってるくらいだ」


「人数はそんなに関係ない、と?」


「そうだな。……ちゃんと紙読んだか? クランから数人選び出して競争を何度かするだけだぞ」


 ……言われてみれば。結局のところ全然読んでなかったや。ごめんさい。


「すみません、読んでなかった。このチラシ、貰ってもいいですか?」


「いいとも。いいがよ、あちこち束が置いてあるの見えなかったか? ご丁寧に『ご自由にお取りください』っても書いてすらあるだろうに」


 ほんと? ……ほんとらしい。辺りに束がたくさんある。

 なんで見えなかったんだろう。……なんて疑問に思っていたのも束の間。


「センカちゃんばっか見るのはいいが、周りにも気ぃ向けろやな」


 なんて指摘をされてしまえば、もう恥ずかしさとかそういう概念で語れる羞恥の度ではない。


 ……そっか、そういうことだったのか。

 いや、確かに地の文にセンカさんばっかり出てきてたかも。うぅ。



 あーもー、顔が赤くなる感じがする。

 ……三十六計逃げるに如かずだ。どうこう言い繕うより逃げてしまった方が上手いこと話が進む気がしてきた。


 私はそのまま、ダッシュでギルドを後にした。




 ギルドから出て、ロータリー中心のギルドを囲むように広がる露店群を抜けて、そうしてライ金嬢と合流だ。


「ライ金嬢、今戻った!」


「ゼラはまだですわ。……ところで、センカ嬢は勤務中では? 連れてきたのでして?」


 と言われ、ようやく気づいた。

 センカさんを抱きっぱなしだったことに。


 そろそろ自立歩行できるんじゃないだろうか。

 ちょうどセンカさんの耳元が近いので、小声で聞いてみる。


「センカさん、立てる?」


 すると、センカさんは小さく首を振った。ダメらしい。


「足腰の疲れで早退だって」


「ふーん。そうですの」


 絶妙に興味のなさそうなライ金嬢であったとさ。




 しばらくして。ゼラさんが帰ってきた。


 両手でクリスちゃんコロンちゃんと手を繋いでいる様は何となく三姉妹のように映る。

 いや、ゼラさんは長身なんだけどね。なんというか表情にあどけなさが抜けない感のある人だからね……。


「ただいま戻りましたー!」


 と、快活な声で帰還の報告をするゼラさん。


「よくやったわ。そのまま目を離さないでおいてちょうだい。さて、アラシェ。今度こそ拠点に戻りましょう」


「了解」


 というわけで、何事も無く帰宅。──と、相成りました。




 センカさんの家に帰ってきた。

 そろそろセンカさんも立てるらしいので、下ろして。そんでもって、メイドさん四人の部屋を決める。


 センカさん家はヤケにデカいので、一人一部屋でもまだまだ余りが生じる。まあ私とセンカさんは一緒だし、クリスコロン姉妹も一緒がいいって言ってたけれど。


 ヒトリモが帰ってくるまで若干やや暇なので、リビングでごろごろしている。

 といったところで、玄関の方から戻ってきたらしいセンカさんがライ金嬢に話しかけた。


「……ライさん。あのですね。あの、傘立てに入っている二本の白い棒なんですが、なんですか?」


「いえ、何の話だか分かりませんわ」


 と。何の話かと思い玄関まで行って見ると、証言通り二本の白い棒が傘立てに突き刺さっていたのである。おおう。


「……あ、それでして? ……知りませんわね」


 手に持つと、やたら重い。

 あまり太さはないけれど、見た目に反してかなり重く、持った感じ硬さもある頑丈な棒。長さはだいたい80センチといったところ。


 とまあしばらく悩んでいたところ、キッチンあたりから出てきたらしいフェルデナさんが答えをくれた。


「僭越ながら。かの棒はクリスコロン姉妹が拾って帰ってきたものです。本人ら、もしくはゼラならば事情がわかるかと」


「あら、そうなのね。じゃあゼラを呼んでくれるかしら」


 と、ライ金嬢がお願いをするとフェルデナさんは二階にいるらしいゼラさんを呼ぶのだけれど、


「承知致しました。……ゼラーっ! 来てー!」


 など、勤務時間外なので半分くらい素らしい一声が出てくる。 

 ライ金嬢も何も言わない辺り、多分日常的にこんな感じなんだろう。

 センカさんと目配せをして、苦笑する。


 バタバタと音を立て、勤務時間外のゼラさんがやってきた。


「はーい。呼ばれましたゼラです!」


 そこへライ金嬢が件の疑問を投げかけるのだけれど、


「あの謎の白い棒はなんですの?」


 返ってくる答えはなんともこう、曖昧なもので。


「あー、あれですか。本人たちは杖って言ってましたが。……よく分からないです!」


 そうして、勤務時間外のメイドたちはお役御免となった。


「分かりました。あなたは寝てていいです。おやすみなさい」


「おやすみなさーい」


 勤務時間外のゼラさんは去っていった。

 それでいいのかゼラさん。

 まあいいか。


 さて。結局疑問は疑問のままだけれど。

 ライ金嬢の次手は、


「クリスとコロンに聞くしかないですわね」


 もちろん本人へと聞くことだ。



「そのようでございますね。お呼び致しましょうか?」


 フェルデナさんが同意して、もう一度アレをしようとしているけれど、


「いえ、いいですわ。わたくしが聞いてきましょう」


 ライ金嬢はじきじきにききにいきたきようだ。


「承知致しました」


 と、フェルデナさんがライ金嬢を見送って、私たちは本当に暇になってしまった。



 とりあえずリビングに戻りましょうかと目配せが一通り終わったかとおもったそのとき。


「ただいま帰った!」


 玄関が開き、ヒトリモが帰ってきた。

 と思いきやこやつ、フェルデナさんの顔を見るなりやたら馴れ馴れしく話しかけおる。


「ナイフの姉ちゃんじゃないか。縁なんて、奇妙なこともあるものだな」


 急になんだら言い出すのでフェルデナさんもさぞ驚いているものかと見ると、どうやらフェルデナさんもヒトリモを知っているらしく。


「ああ、あのお店の。ご無沙汰しております」


 さすがにこの関係性にノータッチとはいかなくて。とりあえずヒトリモに聞いてみると。


「……ヒトリモはフェルデナさんと知り合いだったの?」


 んー、と。しばし悩んでから言葉を発した。


「知り合いって程じゃないとも、まあ、なんだ。顔見知りくらいだ」


 ま、同じクランになるのだしひとまず紹介ぐらいは済ませておいた方がよいでしょう。


「へぇ。とりあえず、フェルデナさん。これがヒトリモ。魔法士兼細工師」


「細工師は副業だ! 本職は魔法士。なに、よろしく頼むぞ」


「よろしくです。ヒトリモさん」


 ぐっと握手を交わす二人。


「ところでヒトリモ。あと三人程新入りがいるから。そこんとこ上手くやってね」


「一番風呂以外はどうにでもしてみせるさ!」


 この女めんどくさ。




 とりあえず、夜ご飯を作って。

 で、食べる時には八人が一堂に会するわけだ。


 人も一気に増えたし、ここらで一度、アレをしなきゃならないだろう。

 あんまり好きじゃないけど仕方ない。

 ──自己紹介の時間だ。


「私はアラシェ。このクラン……クラン──」


 さて、後回しにしていた大問題はこいつ。クラン名。



 ──まあ、もちろん決まってないんですよね。




【用語解説】


〇フェルデナ

 素は『ちょっと声のデカい姉』キャラ。

 だからといって、寡黙なメイドキャラが似合わない訳では無い。

 むしろ、そちらもハマり役であったりする。

 過去に、ヒトリモが工作スキルのレベリングで作った大量のナイフをまとめて購入していた。


〇ゼラ

 底抜けに明るいタイプ。いつでも素。

 (ライ程ではないが)腕力に自信あり。

 ライと違い、攻撃魔法も使える。が、何故か全て拳型になって出力されるため、拳法術(拳術+法術)という役職を勝手に作って名乗っている。

 名前の由来はフェルディナンド・マゼランより。


〇クリス

 少女。いわゆるヒーラーであるが、実戦経験は無い。

 実力は、年齢の割に上々。ただし、一般的な冒険者パーティーに入ってしまえば並といったところ。

 今後の成長に期待すべし。

 なお、攻撃魔法に関しては妹コロン共々適性なし。自衛手段に乏しい。

 名前の由来はクリストファー・コロンブスより。


〇コロン

 幼女。いわゆるバッファーであるが、実戦経験は無い。

 実力は上々。補助と名のつく魔法は既に殆ど扱える領域にある。しかし、MPが足りない。

 今後の成長に期待すべし。

 名前の由来はクリストファー・コロンブスより。


〇それとも、私ですかー!?

 YE……NO! NO! NO!


〇僭越ながら。

 主にフェルデナ→ライの会話で使用される。

 フェルデナはとりあえずこれ言っときゃ何とかなると思っている。


〇アッパーテンペスト

 岩の大腕で下から突き上げる魔法。


〇給与はクランから〜〜

 雇えないなら仲間にすればいい理論により、ライの追っかけだったメイドも実質的な再雇用にありつけた。

 そのため、ライとメイドは立場上同じ地位ではあるが。


〇レフジーズ

 正しくは理不尽レフジーズ。パーティー名。

 皆似たり寄ったりの口調であるが、特に区別する必要は無い。


〇クラン対抗戦

 一種目につき数人を選び出し、それぞれで競争。

 合計得点で順位を決める、一種のレクリエーション。

 メタ的に言えば、第一回イベントであり、カイハージ街以外の『始まりの街』でも同様のイベントが開催される予定である。


〇"ギルドからの覚えが良くなる"

 メタ的に言えば、上位入賞クランにランクが上がりやすくなるボーナスを与えること。

 "特例でランクアップ"も同様。


〇耳元が近いので、小声で聞いてみる。

 Over Kill !!


〇二本の白い棒/杖

 クリスとコロンの姉妹が持ってきた()

裏路地にある何らかのお店で貰ったとかなんとか……。


〇クラン名

 未定。

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