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第八話:#そろそろ爆ぜろアラシェ


前回のあらすじ


ヒトリモをいじり倒した。

そしたらセンカさんにバレた。

ゔぇ!?

 第八話:#そろそろ爆ぜろアラシェ



 前略。センカさんに男装がバレました。


「んん。どうしてわかったの?」


「……実は初夜、アラシェさまが寝たあとに色々思い立ちまして。その時に……」


「色々と、言うと?」


「色々は、その、色々なんです! ごめんなさい!」


 いったい私の身に何があったんだ……。

 寝ている間に人体改造でもされてしまっていたのだろうか。そんなことはないと思うけど。


「それと、アラシェさまが気にして隠していたのに踏み込んでしまって、ごめんなさい!」


 と、寝転がったままなのでいまいち締まらない謝罪を、頭に?を浮かべつつ聞いている。


「……でも、私は気にしませんよ? アラシェさまの、あの……胸が慎ましやかな事は!」


 ふーん?


 ……何の話?


「待って待って。私の男装と胸囲に何の関係が?」


「何って、アラシェさまは胸が小さい女性と思われる事を嫌って男装していたのではないのですか?」


 えー。なんて理論の飛躍。

 そんなに気にしてないからね。うん。

 男装も結果的になってしまっていたわけだし。


「そんなことは無いよ。男装してたのも成り行き上。あっちの方が都合が良さそうだったからね。ま、そこまで貫き通す気もなし、バレちゃったなら仕方がないよ」


「本当にごめんなさい……」


「気にしないでいいよー。ほら、おいでおいで」


 センカさんを抱き寄せる。少々潤んだ目がなんともかわいらしい。



「アラシェさまはやはりいい匂いがしますね。いい匂いがします。……胸板から」


 あ?


「……冗談です、アラシェさま。ふふっ」


 と、センカさんはちょっとイタズラっぽくはにかむ。

 ……顔が良いな? この女。


「それでは、おやすみなさい。アラシェさま」


 と言って、その良い顔を近づけて来て──頬にキスをして。

 そして、寝入った。


 寝入ったと言っても、流石に一瞬間に寝られる人間など居ないわけで。暗闇でも分かるほどセンカさんの顔は上気して赤くなっている。


 ……どきどきしている。私の心拍が。もしかすればセンカさんにもこの音が聞こえているのかな。


「……ふぅ」


 少し、覚悟を決めるように短く息を吐く。

 ……煩悶で寝られないかもしれない。けど、女は度胸とも言うし。


 だから──私からも頬にキスをした。


「おやすみ。センカさん」



 ─────────────────────



 あー、寝坊した。寝られないかもとは思ったけど、あそこまで目が冴えるとは思わなかった。

 それはセンカさんも同じようで、二人して寝返りもぞもぞの民だった。

 たまーに、ちらっと手が触れたりするだけでなんとなく小っ恥ずかしくて目が冴えるし、目を開けたらあっちも同じタイミングで目を開けたのか、目が合ってなんとなく気まずい思いをしたりで、さっぱり寝付けなくて……。


「おはようのうございます。二人して寝坊とは、随分とまた高貴なご身分でいらっしゃること」


 結局、早起きの私ですら起きたのは昼前。ライ金縦ロ嬢がティータイムと洒落込んでいる頃だった。

 遅起きのセンカさんは無理矢理起こした。


「返す言葉もございませぬ……」

「ヒトリモちゃんは既に工房とやらに向かいましてよ。あなた達はわたくし特製の朝餐をお召しなさい。さっさと!」


 ……ヒトリモちゃんってなんだ。あっちはあっちで何があったんだ。



 お貴族様の作る朝食って、一体どんなものか。とは思っていたのだけれど。

 偏見だけれど、ふつう、専属の料理人を雇っているだろうし。基本、貴族そのものは料理ができるわけでは無いのだろうとか考えていた。のに。


「これは……貴族の料理ではないですね」

「そうだね。……自給自足の村で作ったのかな……?」


 平凡を逸しない彩りのお料理が並べられたテーブルにつく。

 しかし、やけに美味しい。もぐりもぐり。




 朝の支度を整え(もう昼だけど……)ギルドに出勤。

 まあ、出勤するのはセンカさんだけで、私とライ金縦嬢は特に用事もなにもない。



 センカさんに行ってらっしゃいをして別れる。


 さて、どうしたものか。と、悩む姿勢は見せているけれど。


 暇な時することはひとつに決まっている。

 ──そう、レベリングだ。レベラゲだ。



 ヒトリモは工房に行っているので不可能。

 私についてはカイハージ街周辺ではもうできないだろうし。

 ライ金縦ロ嬢がすごく暇そうなので、彼女にしようかな。

 ……いちいち金縦ロ嬢ってつけるの面倒になってきたかも。


「うん、よし。ライ金嬢。レベル上げに行こうじゃない」


 短縮形の金嬢(敬称)で行こう。

 ライ金嬢は憮然とした表情で答えた。


「レベル上げに異はありませんが、その呼び方はなんですの」


 まあ、尤もな反論ではあるけれど。


「金嬢、ってつけた方がかっこいいし可愛いよ? ライ金嬢」


 と、諭してあげると満更でもなさそうな表情で、


「でしたら、まあ……」


 と言ったので。

 あなたは今日からライ金嬢だ。末永くよろしくね。



 さて、カイハージ街東の平原先にある森までやってきたわけだけれど。


 森の入口辺りで今回のプランを練っていく。

 まずは現状把握。


「ライ金嬢は腕力と防御がそれなりに高かったよね」


「ええ、まあ。同レベル帯では随一と自負しておりますわ」


 うんうん。良いでしょう。

 ヒトリモを連れていった時より奥に進んでお犬様辺りを狩っていこうかな。


「じゃあ……そうだね。森の奥まで行って、オオカミ狩りをするよ」


 ライ金嬢に目配せをすると頷いたので話を続ける。


「弱らせたらそっちに送るから、適宜トドメをさしてまわってね」


 ……要領を得ない顔のライ金嬢だけれど、始めればじきに分かるでしょう。

 とりあえずライ金嬢を連れて森の奥地へと向かうのだった。


 森の奥地にやってきて。少し開けた広場の中心にライ金嬢を待機させている。

 木々の間に潜むお犬様(キング・ウルフ)のして(・・・)、そうしてライ金嬢の方へ追い立ててトドメをさしてもらえば十分だろう。



 うろついていたお犬様に手頃な石を投げ、こちらを認識したらミッション・スタートだ。


 飛びかかってくるのに合わせて一歩前進、タイミングを合わせ脇の下へ手を回し、勢いを残したまま地面へ脳天逆落とし(バックドロップ)


 ふぎゃん。と鳴いて転がっていくお犬様の体勢が整わないうちに追撃をしてしまう。

 アイテムボックスから弓を取り出し、回復矢(りぺや)で狙撃。

 回復矢(りぺや)はダメージ判定ののちに回復判定を持つ矢で、簡単に言えばみねうち(・・・・)みたいなことが出来るようになる矢だ。


 さて、満身創痍のお犬様には集合場所へ先に行っていて貰いましょうか。


 首根っこを引っ掴んで広場の方へ放り投げて、一丁上がり。ライ金嬢が装飾過多(ごてごて)の斧で倒したのを見届けて、次のオオカミを探しに行く。



 しばらく同様に繰り返したところ、お犬様が枯渇した。


 ……私がβテストで乱獲した時はそんなこと無かったけど、本実装の仕様は別なんだろうか。


 とりあえず、ライ金嬢と合流して──と考えつ広場に向かうと。



 ライ金嬢がどす黒い色をしたオオカミに狙われているところだった。マズい状況かもしれない。


 って、ああ!

 ……ライ金嬢が力負けして首根っこを咥えられている。

 で、あろうことか。どす黒イヌはどこかへと向かっていくではないか。


 最悪の可能性を考えたくはないけれど、まずは追わなきゃ始まらない。



 こちらに目を向けることなく走るオオカミを追いかけて、そうしてやってきたのは美犬っころの祠だった。

 八日間も居たので地形は把握済みだと思っていたけれど、別にそんなことはなかった。森は恐ろしいところだなぁ。


 なんて、暢気なことを考えていられるのはライ金嬢に差し迫った危機が一旦落ち着いたからだ。

 黒いオオカミは祠へとライ金嬢を寄せ置いて、そうしてライ金嬢ごと祠を結界でおおってしまったのだ。

 半径3m程度の半球の結界に閉じ込められたライ金嬢はいまいち状況を飲み込めていないようだが、彼女に関する危険は失われたと言っても大丈夫そうだ。


 そういうわけで、黒いオオカミ──黒い身体に血のように赤い斑点があって、すごく怒っていて犬歯が剥き出しの、せっかくだから怒犬っころとでも呼んでみようか──はこちらへと向き直った。

 そして、ライ金嬢とこちらを交互に見てくる。


 ……もしかしたら。

 ライ金嬢は私を逃がさないための人質にされてしまったのかもしれない。


『取り返したくば闘え』と、そういうことなんだろうか。

 ……お望み通り、戦って差し上げましょう。




 そんなこんなで、戦うことになって。

 怒犬っころ(あちらさん)も乗り気のようだから、まあ間違った選択ではないようなのだけれど。


 問題はもっと根本的なところにあった。

 そう。怒犬っころ、すごくつよかったのだ。


 とにかくすばしっこくて、そうして無くなった隙も見事に潰されている。

 目新しいモーションは数少ないけれど、旧来のモーションより数段速い。上に、従来あった安地がことごとく消されてしまっているのだ。



 怒犬っころの引っ掻き。

 すごく素早い。モーションは今までの犬っころと大差ないから見切れるけれど、安地だった蹴り脚の反対側の地面から氷魔法の大棘が生えるようになっていた。


 怒犬っころのダッシュ。

 モーションは従来の移動行動のそれなのに、怒犬っころの走った軌道上は草木がなぎ倒されてしまっている。美犬っころなんかのタックルと謙遜ない威力がありそうだ。



 引っ掻きをなんとか避けて攻撃しようと思えば、流れるようにタックルに繋いでくる。

 それも避けるしかない。で、避けたから。反撃しようと思えば氷魔法の氷弾で隙潰し。

 数少ない新規モーション、氷魔法の大技。怒犬っころの前方に薄水色のでっかい魔法陣が出現して、時間差でそこからこれまたでっかい氷の塊が出現するのだ。

 この大規模範囲攻撃魔法を避けて、そうしたら矢を射る隙があるもので。さて打ち込んだら見切られて避けられた。納得いかない。

 距離を取ろうと選んだ暴射も怒犬っころの超スピードには敵わず。ぴったり張り付かれて距離変わらなかった時の絶望感よ。


 ラチが明かない。

 ライ金嬢が餓死するまで避けるか、それとも私が攻撃に引っかかって死ぬかの二択しか見えない。いわんや怒犬っころを倒すビジョンなんて。


 さてどうしたものか。

 一度近接攻撃に無理矢理カウンターを合わせたらあちらから攻めては来なくなった怒犬っころと膠着状態を維持したまま、打開策を考える。


 とりあえず破城弓をしまおう。弓矢ではとても敵わない。

 とはいえ、私が使える武器というのも限られているわけで。とりあえず、矢作成でゴブリンナイフを作り出して持っておくことに。

 投げるだけだったらそんなに大きな隙は要らないからね。ひとまずちょっとずつでもダメージを与えていきたいなぁという魂胆である。


 こちらが弓をしまったのを見て、攻勢に出てきた怒犬っころ。その片足での引っ掻きは速いけれど十分避けられる。

 そうして避けたのちにナイフを一本顔面に投げつける。上手く行けば当たってくれるタイミングだけれど……。

 怒犬っころはナイフを噛み砕くことでこれを回避。うぐう。


 ……どうにもならなかった。うん。


 顔を狙ったのは失敗だったかな。そうだよね……後隙中でも顔は動かせるもんね。


 なんとか私以外の場所に注意を逸らせられればまだ何とかなりそうなものだけれど、いかんせん私はソロプレイヤーなので……。


 なんて思考を棄てている場合じゃない。

 考察をしよう。ナイフに対して反応した。という事実。

 ……ナイフ投げはあちらにとって回避の必要のない攻撃ではない。イコール、ナイフが効くかもしれないってことだ。


 隙のひとつひとつを咎めるつもりでナイフを飛ばして攻めていこう。それが今一番現実的な勝ち筋だ。



 氷魔法の氷弾を放ってくるのに合わせて一投。……避けられた。というか氷弾は隙がないタイプの牽制技なので仕方ないのよ。

 そうして今度はあちらがこちらの(思考の)隙を咎めに距離を詰めてきて、引っ掻きを繰り出してくる。しっかり避けて、今度は軸足へ一投。

 ……深く刺さったけれど、怒犬っころには気にする様子はない。


 ムカついたので隙に関係なく顔面に一投したけれど、噛み付きで対処されて。


 溜飲が下がらないのでもう一発行ったろかーなんて思っていたら、その怒犬っころの顔面……と言うよりは目、片目に深々と牛刀大のナイフ然とした刃物がぶち刺さっていた。


 思わず目(ナイフは刺さっていない)をこすって確認したが、怒犬っころの目にはナイフが刺さっている。

 私のナイフじゃ、ない。

 ゴブリンナイフは赤銅色のダガー、両刃で刃渡りは10cm無い程度だけれど、刺さったあのナイフは目測倍ほど大きくて、そうして片刃だ。


 怒犬っころはあらぬ方向を向いてひと声咆哮。

 そうすると、そちらで木の上の葉が揺れて。スタっと綺麗な着地で影が降りてきたのだ。


 人影は、クラシカル・メイドさんだった。


 そのメイドさんは至って事務的な声で、


「助太刀します。アラシェ氏」


 と言った。


「……それはどうも。助かります」


 チラりと横目で見るに、身のこなしは今まで出会った誰よりも熟練だ。

 なんというか暗殺的というか、音もなく忍び寄るというか。つまるところ、一挙手一投足に気品と殺意と静謐さが見て取れるのだ。


 それにメイド服はモノホン、露出ゼロ。生地が厚くて洗うの大変そー……いや違う。そういうこと考えてる場合じゃなかった。


 でもまあ、こうして人数が揃ったわけで。することはもはやひとつ。挟撃だ。



 悔しいがナイフ投げの技量ではこのメイドさんに敵わないらしいし、破城弓をアイテムボックスから再度取り出し装備して。


 メイドさんが回り込むのに合わせ一射。

 あちらに気を取られた怒犬っころは、頬の辺りに矢の直撃を食らう。

 そうして矢の出元(こちら)を向いた隙にメイドさんがナイフをぽんぽん投げる。


 メイドさんにヘイトが移り、私には矢を射るべき隙が回ってきたわけだ。


 さあ。新技を披露しようか。

 逆手に矢を番え、引き絞りつつ順手に戻していく。これをそのまま射撃する。

 矢は回転力を得て、推進力と貫通力がアップ。

 これこそが、弓術スキルの射撃法・貫通射。


 現実的じゃない? だってゲームだもの。仕方がないのよ。



 メイドさんに攻撃が行く前に中てられた。

 怒犬っころの前足付け根あたりに刺さる。普通の射撃より深く刺さったけど、通り貫けるまではいかない感じかな。威力的には上々。


 そうして、怒犬っころの視線が私を捉えたそも隙にメイドさんがナイフを数本当てる。


 さて、二面作戦は効果覿面だ。怒犬っころは右往左往といった感じで何をするにも気が散る状況。

 かと言って黙ってれば私たちが蜂の巣にするから行動は継続しなきゃならない。


 メイドさんが疲れたら私がフォローに入ったり、私が集中的に狙われてるとメイドさんはガン無視してずっとナイフ投げてたりと、まあそれなりにいい連携で怒犬っころに攻撃を続けた。


 が、ここで問題が。


「あっ、逃げるな卑怯者!」


 この怒犬っころ、尻尾を巻いて逃げ始めたのだ。

 これには私もメイドさんもびっくり。

 近くによってもらって、作戦会議。


「氏にも自分にも、流石に追いつく事は不可能でしょう。……しかし、なんとかして結界を解いてもらわねばなりません」


「……私にいい考えがある。とりあえず、結界近くで待っててもらってもいい?」



 と、ひとことでメイドさんは割と素直に従ってくれた。

 あちらはあちらでどうにかしようと結界にナイフをぶつけまくっているが、甲高い音が響くだけで結界はビクともしないようだけれど。

 ……中のライ金嬢がめっちゃビビってるからほどほどにしてあげて。



 さて。


 自分のMPから矢を生み出すスキル・矢作成で母矢(おもや)を作り出し、先程と同様に貫通矢を射る射法で、射た直後に分裂して増えるスキル・拡散射も交えて、かつ必ず中る必中の矢を射てみたのだけれど。

 トドメを刺すどころか足止めすらもできなくて。


 ちなみに視界だけは遠見で確保しているので、もうすでに見えているだけで届かない位置まで逃げ去られてしまっているのも分かっている。



 ……しかたがない。

 これもいいタイミングだと思って使ってみようか。使い所もないと思ってた、あの(スキル)を。



「スキル:自爆:月読命(つくよみのみこと)(がおんいいつけ)──」


 自爆スキル。多分自分で自分を射殺(いころ)した時に貰ったと思うんだけれど。

 その中には三つの発動方法があった。

 今回は二つ目。月読命令。私の魔力、つまりMPに類する物を爆発させる。爆発は周囲にダメージを与える。それだけの効果。


 多分、私の体も爆ぜるので。結界とメイドさんから少々距離を取って。


 で、計画としては。

 私の矢は矢作成でつくったものだけれど、作成時にはMPを消費した。

 つまり、いま怒犬っころに刺さりまくっているあの矢は私の魔力で出来ているというわけなのだ。

 しっかり矢が怒犬っころに突き刺さっているのはリアルタイムで確認中だ。


 そうなると、いま怒犬っころの体には爆弾が刺し詰められているようなもので。


 ……こうも条件が揃っていると、かみさまかなにかそれに類するものが私を爆ぜさせたかったのかと思ってしまうよね。



 まあ、それは置いておいて。とにかくやってみよう。

 MP全消費の都合上、遠見が切れて倒してかどうかわからなくなってしまいそうだけれど。でも、倒せれば結界が失せるだろうし指標はある。



 さあ、やろう。


「──発動!」



 ─────────────────────




 凄まじい爆音でした。爆音の凄まじさと言ったら、もはや凄音の爆まじさと言っても過言ですわ申し訳ありませんの。

 音の中心は我が好敵手、アラシェ。何らかの手法により彼自身が爆発したのです。


 ……いえ。爆発したと言っても五体は満足の様でしたが。彼は地面に倒れてしまっていて、さらに周りの地面は大きく抉られておりますこと。


 そして、その凄音、もとい爆音と共に、わたくしを囲っていた結界は消え失せてしまったのです。



 兎にも角にも、一時は囚われの身になった……なんだか久しぶりに貴族令嬢らしいことをしましたわね。身をやつしてからは久々ですのよ。


 それに給料事情で解雇したはずの私の専属メイド、フェルデナにも会えました。いえ、お給与は全額支払っておりますので催促だとかそういう事情では無いと思いたいのですが。



 不満そうな、そして不安そうな顔でフェルデナが言うことには。


「ライ様。ご無事でなによりです。……ですが、もうあのような不甲斐ない男について行くのは止してくださいませ」


 と、そういうことらしいのですけれど。


「心配しなくても大丈夫よ、フェルデナ。それに結局、アラシェが倒したじゃない。あの悍ましい赤狼を」


 わたくしの言葉にも言い返してくるさまで、


「しかしそうといってもですね、一部終始を拝見しておりましたが、あれはあの男のせいでありましょうよ」


 と。

 どうにも納得のいっていなさそうなフェルデナです。


「もう、そう気にしなくてもよいのです。わたくしもこのようにかすり傷ひとつないのですから」


「しかし……!」


 そう心配してくれるのは、とても嬉しいのですけれど。このままでは話し合いは平行線。少々強引な手を打つことにするのです。


「それよりフェルデナ、わたくしお腹が空きましたの。幾度もの困難艱難を乗り越え上達したわたくしの料理の腕前を披露しましょう。ついてらっしゃい」


 そうして、わたくしはぶっ倒れたアラシェを肩掛けに持ち、帰路へと着いたのです。



《用語解説》


〇そろそろ爆ぜろアラシェ

 爆ぜた。


〇色々

 なんかこう、色々あった。

 全くこれっぽっちも関係ないけれど、このゲーム内での言語体系は現実日本に準拠している。そのため、ことわざ概念も問題なく通用する。

 例を挙げるなら、『犬も歩けば棒に当たる』だとか、『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』だとか。

 もちろん『なんとやら』用法もしっかり通じる。『馬鹿と煙はなんとやら』や、『据え膳食わぬはなんと(・・・・・・・・・・)やら(・・)』など。


〇ライ金嬢(中略)咥えられている。

 首裏の 鎧を食まれて 宙ぶらりん。


〇怒犬っころ

 《名も無き怨狼》

 クイーン・ウルフ変異体。狼の怨念が依代を得て顕現した姿。

 メタ的に言えば狼狩猟数により出現する大ボス。


〇それなりにいい連携

 (初対面にしては)それなりに(悪いとは)いい(切れない)連携。


月読命(つくよみのみこと)(がおんいいつけ)

 自爆スキルの第二法。MPを全て消費し爆発を起こす。いわゆるマダ〇テ。いや、いわゆらない。

 使用MPが多い程高い威力になるので、使うならさっさと使う方がいい。

 しかしこのゲームの仕様上、使えば長時間の気絶(スタン)は免れない。


〇フェルデナ

 ライ金嬢専属メイド。対人戦闘力はアラシェにも劣らない。得物はナイフ。一日戦い続けても無くならない程の量を隠し持っている。らしい。

 勿論身の回りの世話もできる。

 名前の由来はフェルディナンド・マゼランによる。


〇お腹が空きましたわ。

 こうは言っているが、ライ金嬢は結界内で悠々と昼食(持込み)をとっていたりする。


〇ぶっ倒れたアラシェ

 ゲームの仕様でMPが0になると気絶状態になる。


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