#58 ツノゼ星からのテレパシー
「俺たちを捕まえる気か?地球人共!そうはいかんぞ!」
モブリア星人の宇宙船内に到着したアリーヤたちは、船内に3人のモブリア星人を発見する。全員死んでいるように見えたが、彼らは突然息を吹き返す。アリーヤたちも3人も、状況が飲み込めていないようだ。モブリア星人の1人が傍らに浮いていたスパナを掴んで構えた。
「来るなら来い、やってやる!」
1人に同調するもう1人。
「そ、そうだ!俺たちは捕まらんぞ!」
3人目は、2人を制しようとしながらも混乱している。
「まて、まずこの人たちが何でここにいるか訊けって……」
アリーヤは両手を上げた。
「待って待って!救難信号を受けて来ただけだから!捕まえるとかそういうのじゃないから!」
一緒に来ていたリッキー隊員とノア隊員はあきれ顔だった。レベッカとキャスリーン隊員も来ていたが、キャスリーンはガッカリそうに言った。
「やれやれ、事件性は無さそうね」
モブリア星人の1人は警戒を解かずに訊いてきた。
「救難信号……?本当にそれだけか?」
アリーヤはゆっくりと頷いた。穏やかに、敵意が無いことを示すように。
モブリア星人3人は顔を見合わせる。1人が、小さく首を縦に振った。
「……本当、っぽいぞ」
モブリア星人の1人が警戒を解き、スパナを手放した。ぽつりぽつりと、事情を話し始めた。
「俺たちは貿易船の乗務員だ。この航路で商売してたら、突然正体不明の種族に襲われた。気が付いたら自分たちの船の中で3人とも死んでた。なのに今こうして生き返ってる。意味がわからねぇ。」
ノア隊員が、冷静に状況を見ようとデッキ周辺を見回していた。
「船の航行記録を調べれば何か分かるかもしれません。最後のデータが残っていれば、ですが。」
アリーヤはノア隊員の言葉に反応した。
「記録、調べられる?」
ノア隊員は操作盤に向かいながら言った。
「やってみます」
その頃、スコーピオン号の自室でネコのエンジェルの面倒を見ていたホノカ隊員が、窓の外の宇宙空間に、青白く光る宇宙人が張り付いて居るのを目撃した。一瞬の出来事だった。ホノカは窓を2度見した。疲れ目かと思って目を擦り、もう1度見る。やはり何かいる。黄緑色の肌に3つの角、青く光る血管。黄色い丸い目。ぎょろりとした紺色の大きな瞳。その異星人が船外の窓にべったりと顔を押し付けて、こちらを凝視していた。
「ひっ……!」
ホノカが目撃したのはほんの一瞬で、次の瞬間には影も形も無かった。だが確かにいた。ホノカは慌てて手首の通信機を開き、声が裏返りながら緊急報告をした。
「き、緊急報告!船外に異星人らしき影を、も、目視!も、もう消えました、でもたしかに―」
船内に緊張が走った。近くにいたメイティン隊員とカテリナ隊員が、ホノカの部屋へ来る。メイティン隊員がホノカをなだめる。
「大丈夫?ホノカ」
「ええ、私は大丈夫です。アリーヤたちは?」
「近くの宇宙船に救助にいってるわ」
カテリナ隊員が、窓の外に付着しているセルリアンブルーの小さな粒を複数見つける。
「物質を転送した際にできる転送粉だ……我々にに気づかれずに船に入り込む気か―既に内部に潜んでいる可能性もある。」
次の瞬間、アリーヤたちも、モブリア星人も、スコーピオン号の救助隊員全員が眠ってしまった。目が覚めた時、スコーピオン号も、モブリア星人の宇宙船も、ある惑星の大気圏内にいた。惑星ツノゼに、2隻の宇宙船がまるまる転送されたのだ。モブリア星人の1人がパニック状態でビームライフルを乱射した。
「出せ!ここから出せよ!」
リッキーがそのモブリア星人に組み付いて銃口を逸らせた。
「落ち着け!自分の船に穴開けてどうすんだ!」
ふと、アリーヤが頭を押さえた。セリアとノアが心配する。
「どうしたの、アリーヤ」
アリーヤは頭を押さえたままだ。
「惑星の方から、声が聞こえる……」
ツノゼ星からのテレパシーが響く。不快なようでいて、どこか心地よい奇妙な波。アリーヤは目を見開きながら呟いた。
「話し合いたい……危害を加えるつもりはない……?」
その直後、船外モニターに映像が映った。ツノゼ星の簡素な円形の建物の前に立つ、数名の黄色い目の種族が、こちらを待っている姿。アリーヤはその姿に見覚えがあった。
「リーフ……リーフ・フライなの……?」
つづく




