#57 謎の少年のモンタージュ
「少年の身長は150センチくらい、白いカッターシャツと、黒いズボンを履いてた。髪色は黒で、15歳くらい。敵の攻撃をバリアで弾いたり、赤いビームを放ちます。ホノカと出会った地球の学校に問い合わせても、例の少年は居ませんでした。つまりその学校の生徒じゃない。」
スコーピオン号の会議室。少年のモンタージュ写真は、アリーヤとローラ、セリア他の目撃証言を元に作成された。船医のセリアが入って来た。アリーヤは話を続ける。
「セリアの証言によると、少年がビームを放ってセリアが気を失う前に、あることを言われたそうです。」
セリアが言った。
「そうね。―あんたは医者でしょ?ぼくを治してくれないの?とか。ローラが操られる前ね」
会議室のメンバーが顔を見合わせた。フロルがセリアに訊く。
「その少年、ケガしてたのか?」
セリアは肩をすくめる。
「さぁね。一瞬の出来事で分かんなかったわ」
バルドが立ち上がった。
「セリア、てめぇ、なんでそんな重要なことを言わねぇんだ!」
セリアが怒って反論する。
「重要かどうかなんて私に分かるわけないでしょ!こっちだって忙しいのよ!」
ケンカを始めた2人を静するジュリア。
「味方同士で言い合っても仕方ありません。バルドもセリアも、落ち着いてください。」
ナリナァがアリーヤに訊いた。
「アリーヤ。その少年と指輪と魔神、何か関係あるのかい?」
アリーヤは今度は3秒黙ってうなずいた。
「私の勘なんだけどね、あの少年が、魔神そのものなんじゃないかなって」
会議室が静まり返る。アリーヤは持論を展開した。
「魔神である少年は、ある理由でケガをしていて、指輪の力が必要だった。それで我々や他の宇宙の組織とか国に、指輪を集めさせてる。一部の指輪の所持者を操って、願いを叶えるとか言って、指輪を集めたい欲を掻き立てて……」
会議メンバーはアリーヤの話を聞きながら考え込んだ。アリーヤの持論は続く。
「少年は指輪のかけらを持っていて、ローラに渡した。その後、私やセリアの所へ来て、不審な言動を取った後、ローラを操って幽霊のように消えたよね。おまけに船内の監視カメラにも、例の少年は映ってなかった。つまり、我々の理解を超えた存在である可能性は否定できないんじゃないかなーって……どう?」
アリーヤは会議メンバーに訊ねた。マイクがぼそっと言った。
「どうだかな。ヤツがおれらを出し抜いたのは確かだ。だが、魔神本人って証拠にはならねーだろ。」
マイクは身を乗り出した。そして、今度はハキハキと喋った。
「監視カメラにだけ映らない光学迷彩持ちの種族かもしれん。バール王子のクローンを作りまくる種族も居るんだ。アリーヤ、君はその指輪に操られたか?この船には指輪が4つもある。おれが魔神なら、まず指輪を全部奪っていくぜ」
フロルが右手を上げた。
「そいつが魔神本人かはともかく、理解を超えた存在ってのはなんとなく分かるぜ。おれもバルドも、少年を現場で見たからな」
メイティンが言った。
「問題は少年が何者かっていうより、例の少年が来た時の対処じゃない?」
メイティンがそう言った瞬間、遠い宇宙の彼方からSOS信号が届いた。会議を中断し、一同は操縦室へ行く。ジュリアが通信員のヴィナに訊く。
「どうしたんですか?」
ヴィナは答えた。
「モブリア星人の宇宙船からSOS信号です!惑星ツノゼ付近に漂流しています!」
アリーヤは指示を飛ばす。
「宇宙船を助けよう!ピンク・スコーピオン・ハリー・ゴー!」
ツノゼ星付近。モブリア星人の宇宙船はゆっくりと回転しながら、漂流していた。外傷は見当たらなかったが、救難信号を受信したアリーヤは転送機で慎重に内部へ侵入した。船内は薄明るく、非常灯だけがぼんやりと通路を照らしていた。船内は無重力状態で、モブリア星人の3つの遺体が操縦室に浮いていた。モブリア星人は地球人に似ているが、肌が灰色で、額に小さな角が1つある。船医のセリアと、その助手パフにも着いてきてもらっていた。2人は慎重に遺体を観察した。
「呼吸も脈も無いわね。完全に……」
その時だった。中央に浮いて居たモブリア星人飛行士の胸がびくりと動いた。続いて左の1人、右の1人。まるで録画の巻き戻しのように、脈も体温も正常に戻って行く。3人とも同時に目を開けた。モブリア星人3人は自分の体を触りながら困惑顔。
「あれ‥‥‥・俺は死んだはずじゃ……」
「生きてる……何で?」
1人が周囲を見回し、アリーヤたちを見てぎょっとする。
「地球人!?なんでここに!」
アリーヤは護身用のビームガンを構えたまま固まってしまった。
「え、えぇ……?」
つづく




