#55 マイクのリベンジ
イスガルド共和国のバール王子は武闘派で有名だった。12歳にして銀河格闘技界のチャンピオンに輝いた。17歳の頃には宇宙テニス界の覇者バブルス星人マァロンがイスガルド共和国に訪れ、マァロンとの宇宙テニスの試合でバブルス星との交友を深めた。そのバール王子のクローン体が、数日以内に100体以上量産させられ、謎のカー星人の手先としてイスガルド共和国に魔の手を伸ばしていたのだ。レベッカ隊員はため息をついた。
「油断ならない話ね、惑星パピリに来たのも、侵略の下見って所でしょ?」
シャモナーは笑って言った。
「よく分かったな、小娘。そしてそのプリンス・バール・トルーパーを積んだカー星人の宇宙船団が今、惑星シェムザへと向かっている!イスガルド共和国も、ピンク・スコーピオンも終わりだ!」
すると遠くから毒針のようなものが飛んできて、シャモナーの首元を貫いた。驚くフロルとレベッカ。2人が振り向くと、灰色のフードの男が人込みに消えていくのが見えた。追いかけようとするレベッカを静するフロル。
「深追いは危険だ。それより、アリーヤに報告しよう」
マイクが戻って来た。フロルが訊く。
「バール王子のクローン体は?」
マイクは首を振った。
「それがよ、いきなり溶けて無くなっちまった」
「溶けた?」
「そこに居る死体のようにな」
マイクに言われて、フロルがシャモナーの死体を見ると、シャモナーの肉体は跡形もなく溶け、緑色の毒液と針だけが残っていた。
「単なる侵略なら、こんな手の込んだマネはしない筈だ……カー星人ってやつらの目的は別にある!」
その頃、惑星イヅにいたスコーピオン号には緊張が走っていた。バール王子のクローン体、すなわちプリンス・バール・トルーパーがスコーピオン号を乗っ取ろうとしていた。アリーヤは隊員たちに、プリンス・バール・トルーパーを刺激しないよう指示した。クローンとは言えバリバリの武闘派だ。攻撃されたらケガじゃ済まない。マイクからの連絡で、バール王子を量産した存在の正体は分かった。アリーヤは慎重に、このたくさん居るバール王子の弱点を探ろうとしていた。アリーヤはいくつかの質問をした。
「あなた達を製造したカー星人は何者ですか?」
クローン・バール3号が答える。
「いい質問だねっ!我らプリンス・バール・トルーパーの創造主・カー星人は35年前に惑星イヅを買い取ったんだ!そこへ来たのがあのイスガルド共和国さ!」
クローン・バール6号が割り込んでくる。
「カー星人はバール王子の血液採取に成功し、特殊クローン生成剤カーパラで、我々は生成され急成長したってわけ!今にイスガルド共和国含む惑星全体が、カー星人の配下に収まるって話さ」
アリーヤは続いて質問をした。
「どうしてバール王子を量産する必要が?」
すると目の前のプリンス・バール・トルーパーたちの目つきが変わった。黙り込んでいる。クローン・バール2号が答えた。
「君が知る必要は無いっ」
パピリ星では、マイクたち別動隊が、パピリ星人達に進路を妨害されていた。ピンク・スコーピオンの小型シャトルが珍しかったのか、ミラーボールのように光るパピリ星人が小型シャトル周りに集まり、ダンスを踊っていた。マイクが苛立っていた。フロルが言った。
「これじゃシャトルに入ることも、出発することも出来ねぇな、勘弁してくれよ」
ムルミン隊員がシャトル内から偽のアナウンスを流す。
「えーこのシャトルは、10秒以内に爆発します、木っ端みじんです、なのでピンク・スコーピオンの隊員をシャトルに入れてください。10,9,8……」
そんな嘘がパピリ星人に通じる筈も無く、ムルミン隊員のカウントを茶化して一緒にカウントを始める。しびれを切らしたレベッカが、空に向かってビームガンを撃ち始めた。
「お前ら一緒に爆発してぇのかぁ!!」
レベッカの叫びと共に、パピリ星人達はようやく逃げ出した。
そのままマイクたちは、惑星イヅではなく、シェムザのイスガルド共和国に向かった。フロルが言った。
「今の俺らの任務はバール王子の安全確保だからな……アリーヤたち、生きててくれよ」
イスガルド共和国に到着する別動隊。バール王子が出迎えた。
「これはこれは!ピンク・スコーピオンの皆さん!1年ぶりですなぁ!」
レベッカがバール王子に掴みかかって叫んだ。
「お前は本物?」
バール王子の口元がにやりと歪んだ。
「お忘れじゃないかな?お嬢さん。おれはたくさん居るんだよ?」
イスガルド城の門の中から、背後からも、偽の量産型であるプリンス・バール・トルーパーが出て来た。さすがに焦るレベッカ。
「ヤバ……」
マイクがバール・トルーパーの1人に質問をする。
「本物はどこだ?」
クローンはにやりとして城を指差した。
「イスガルド王共々、2分後にドカーンッ!!さっ……バール王子とイスガルド王の指紋に反応して開く扉があってね、その扉の向こうには、イスガルド共和国の支配を左右する2つの神器が眠っているんだ。その扉をクローンである我々が開けようとカー星人は計画した。でもカー星人のクローン技術じゃ無意味だったね。扉は開かなかった。」
「それで城ごと、ドカーンってか」
「質問は終わりか?城がもうすぐ爆発するぜ?」
「じゃあ、もう1つ。」
レベッカが掴みかかっていた個体に、マイクは目を向ける。
「お前、ホントに偽物か?」
そのバール王子が目を見開く。
「な、なんだと?」
「どうしてカー星人なんかと手を組んだ?」
そのバール王子が慌てふためく。
「お、お前には関係ない!父上は90年以上王位を我にくれぬのだっ!こうするしかっ」
「なるほど、お前は本物だったか」
マイクとフロルは本物以外の30体のバール・トルーパーにビームガンを撃った。門の前では宇宙半魚人のムルミン隊員たち怪力派が、バール・トルーパーと戦っていた。マイクは腕を鳴らして本物のバール王子に向かって叫んだ。
「1年前にお前とケンカしたよな、バール。あの時の決着、着けようぜ」
本物のバール王子が後退りする。
「決着だと?地球人が、舐めるなぁぁ!!」
本物のバール王子がマイクに向かって飛びかかる。両者とも一歩も引かず、キックやパンチが繰り出される。マイクが笑っている。
「ははっ、お前やっぱ強えなぁ!」
「強いだと?おれは12歳にして銀河格闘技界のチャンピオンに輝いた!地球人に負けるものか!」
戦いが続く最中、フロルとレベッカは城の内部に忍び込んで、小型レーダーに映った爆弾の箇所に向かっていた。爆弾を見つけるレベッカ。
「あったぞ、フロル!」
爆弾の横で手を縛られ、口をテープでふさがれたイスガルド王が座り込んでいた。レベッカが叫ぶ。
「あと10秒だ!」
レベッカは爆弾を持って城の窓から爆弾を空に放り投げる。フロルは爆弾にビームガンでビームを当てると、爆弾は空中で大爆発を起こした。マイクと戦っていたバールが振り向く。
「くそっ!失敗か!」
すると、振り向いたバールの顔面にマイクのハイキックが決まった。不意打ちに対して倒れる本物のバール。倒れたバールは気絶した。マイクはふーっと息を吐いた。
「よそ見してんじゃねーよ」
こうして、イスガルド王の息子バールは、カー星人による国家転覆・侵略行為に加担したとして、他のクローン・バールたちと共にイスガルド警察に逮捕された。イスガルド国に向かっていた宇宙船団は方向転換し、宇宙の彼方へ帰って行った。イスガルド王は悲しみに暮れた。
「馬鹿息子め……なぜ裏切った……」
惑星イヅから無事に帰還したアリーヤが、イスガルド王の肩に手を置いた。
惑星シェムザの夕陽が真っ赤だった。
つづく




