#48 廃墟の戦士
その惑星は赤く輝き、ソドムと名付けられている。アリーヤが戦った、宇宙帝国デッド・オリオンの基地がそこにあった。デッド・オリオン幹部であり地球へ派遣されていた、司令官ナンバー06と、その部下ジュリアが、基地に帰還した。オリオン座のマークをつけた玉座に座るオリオンの帝王デッド・オリオン18世。オリオン18世のそばには、うつろな瞳のミカがいた。
「ナンバー06、地球侵略に失敗したそうだな」
「は、面目ありません」
「我らの目的は銀河征服!時空移動システムにしても、我らが新たな領域、領土を得るために使用したのだ。それを破壊されたばかりか、レジスタンスの攻撃で船3隻を失った!これが父上に知れたら、デッド・オリオンの恥さらしよ!より多くの資源を発掘し、保有する事によって、我らは栄えるのだ!」
「覚悟は致しております」
「言ったな?ナンバー06。お前は謹慎処分だ」
宇宙。それは光と闇が混ざり合う世界。ピンク色に発光する飛行物体が、緑豊かな惑星ブルームへと向かっていた。
セリアとリリイ、エドナは医学研修生である。3人は、惑星ブルームの森林でピクニックをする事にした。
「キレイな森ね」
「あそこに川も見えるよ!」
リリイとエドナは、はしゃいでいる。
「2人ともはしゃいじゃって。川なんかコロニーにもあるでしょ」
セリアは遠くから、2人の様子を見ている。
3人は宇宙の人工居住地・スペースコロニーから来たようだ。
2日前、リリイとエドナは惑星ブルームにある森林でのピクニックを企画し、セリアも参加することになったのだ。
「くっだらない!森なんて何がいいの?スペースコロニーの最新の設備の方が、断然いいに決まってるわ!」
そんなセリアをよそに、2人は川で遊んでいる。リリイとエドナは、森で洞窟を見つけた。リリイが言う。
「この洞窟、何かいるかしら?」
エドナが返事をした。
「幽霊が出たりして」
2人の会話にうんざりしたのか、セリアが口をはさんだ。
「幽霊ですって?バカバカしい!入ってみれば?」
セリアたちは洞窟へ入っていった。リリイが腕時計型の機械で地面を照らす。
「見て!足跡があるわ!」
洞窟を照らすと、何者かの足跡が続いていた。するとその奥の地面には、落とし穴のような、大きな穴があった。セリアは言った。
「あら、幽霊は穴に落ちちゃったようね!無様だわ!」
セリアがそう言った瞬間、彼女は足を滑らせ、そのまま、落とし穴に落ちてしまった。穴の向こうは洞窟の出口になっており、そこには苔の生えた森が広がっていた。セリアは完全に迷ってしまった。と、そこへ惑星ブルームのウチュウジカが駆け寄ってきて、セリアに対して威嚇した。ブルームのウチュウジカはこの星に生息する爬虫類。緑の眼は怒りに染まり、今にも突進してきそうだ。セリアは戸惑う。
「ちょっと、何!?」
「静かに!」
ふと、彼女の背後から声をかけた者がいる。
「そっと、立ち去るよ」
2人は静かに後ずさりした。ウチュウジカは襲ってこず、やがて森の奥へと去っていった。
「命は、大切にね」
セリアを助けた少女の言葉の意味が分からず、セリアはつい聞き返した。
「はぁ?何言ってんの?」
少女は言った。
「命には輝いててほしいの。星空の輝きと、一緒でしょ?」
セリアに声をかけたその人物の案内で、彼女はリリイ、エドナと合流出来た。
「Hi! 私はアリーヤ!旅人さ!」
アリーヤは空腹に困っていた。森の中で謎の木の実を見つけたが、警戒して食べずにいた。リリイは言った。
「その実は毒の実よ。食べちゃダメ」
リリイは、アリーヤにパンやサラダなどをご馳走した。
その代わりにアリーヤは、リリイやエドナ、セリアの集合写真を撮り、3人に与え、こう言った。
「記念にどうぞ」
写真を受け取り、エドナはたずねる。
「アリーヤはどこから来たの?」
「地球だよ!宇宙を平和にするために、旅をしてるんだ!」
アリーヤは答えた。
「宇宙の平和?」
「そう!みんなの笑顔を守ります!」
少々とまどったようだが、リリイやエドナとすっかり打ち解けたアリーヤ。ただし、セリアだけは彼女と打ち解けようとはしなかった。アリーヤはセリアたちのテントへと案内され、そこでセリアたちと過ごすことにした。
「私たち、医者の卵なの」
リリイが言った。
「昔、スペースコロニーで事故があってね、多くの人が死んだわ。私たち3人はまだ小さかったから、その時は何もできなかった。でも、あの悲劇をもう一度起こさないために、医者になる道を選んだの。アリーヤは、なんで宇宙の平和を守ろうと、思ったの?」
アリーヤは答えた。
「星空だから」
「星空?」
「私さ、人を探しているんだ。その人は、ひとりぼっちのアリーヤに、親友になろうって、言ってくれたんだ。宇宙のことを教えてくれた。カメラもくれた。」
2,3秒沈黙したあと、アリーヤは話を続けた。
「命は星空なんだよ。キラキラ輝いていて、命の中には宇宙があるの。あらゆる生命と仲良くしたい。命という宇宙を消したくない。世界や宇宙を平和にしたい。みんなのキラキラをもっと見たいから!」
リリイとエドナはアリーヤの話を聞いて、にっこり微笑んだ。リリイは言った。
「私たち、似ているようね」
セリアを除く3人は夜までおしゃべりをして、笑いあった。セリアはすでに布団にもぐり、寝ていた。
テントのその様子を、足跡の主であろう人影が、森の奥で見張っていた。
夜、その人影は動き出した。人影はアリーヤ達のいるテントに侵入し、近くにいるエドナの手を取り、彼女をさらった。
「だれか、助けて!」
エドナが叫んだ。リリイがその様子を目撃し、セリアとアリーヤに伝えた。
「大変!エドナがさらわれた!」
セリアは頭をかきながら、リリイに言った。
「コロニーのケーサツに届け出すにも遅くなるし」
アリーヤは立ち上がる。
「私がエドナを助けに行くよ!」
リリイが止めに入る。
「まって、アリーヤ!危ないわよ!」
リリイが止めるのも聞かず、森へと進むアリーヤ。
けもの道を見つけ、やがてアリーヤは宇宙人の本拠地であろう廃墟にたどり着いた。
「ふつう、廃墟には持ち主が居るから入っちゃダメなんだけど、ここには警察も居ないし、エドナを助けなきゃ!」
そう言って入口に入るアリーヤ。そこで、暗闇で青白く発光する奇妙な宇宙人に、アリーヤも捕まった。
「私はリーフ・フライ。アーラヴォルノ族のヒ…いや、誇り高き戦士だ」
アリーヤは叫んだ。
「エドナを返して!」
リーフ・フライと名乗った謎の宇宙人。
全身が緑色で、3つの角と、黄色い大きな目をしている。手には特殊な形をした刀を持っているが、彼女はなぜ、エドナをさらったのか?
「どうして、エドナをさらったの?」
「我々アーラヴォルノは戦闘民族だ。私は権力争いに一度敗れ、この星に逃げてきた。しかし宇宙船が壊れ、食料も尽きたのだ。この娘と交換だ。そちらの食料を全て貰おうか」
リーフ・フライはアリーヤの手をひき、エドナが閉じ込められている部屋へと連れて行く。エドナは部屋の地べたに寝そべっている。気を失っているようだ。
アリーヤはリーフ・フライが腕に装着している特殊な形状の刀に心底おびえながらも、声をふりしぼった。
「私は今、食料はもっていません。ですが、この一件は平和的に解決させます。」
リーフがたずねる。
「平和とはなんだ?それは食べられるのか?」
アリーヤは答える。
「平和は食べ物じゃない。でも、必要なものだよ」
リーフはため息をついた。
「食べられるもので無いなら意味は無い。帰って貰おうか」
刀を揺らすリーフ。
アリーヤはリーフに言った。
「あなたが今欲しいのは食べ物なんだね。でも、それを理由にエドナを犠牲にして良いワケがない!それに、リリイやセリア達から食料を貰ったって、直ぐに底を尽いちゃうよ!ピクニック用の分量しか無いんだし!」
リーフはその言葉にいらだちを覚えた。
「交渉決裂だ、帰れ!」
アリーヤは叫ぶ。
「話を聞いて!例え食料が来ても、それがあなたの体に合うかわかんないでしょ!リリイたちが持ってるのは地球人に合う食料なんだし!」
「ええい、まだ言うか!私は気が短いのだぞ!」
リーフは言い返す。アリーヤは激怒した。
「この分からず屋!」
その瞬間、アリーヤの持つカメラがピンク色に光り輝く。
「また!?」
戸惑うアリーヤ。遠い森にあるアリーヤの宇宙船が、天高く舞い上がり、物凄い勢いで大空を飛び立った。同じ時刻、リリイと周辺の村のブルーム星人達は、青い夜空から、怪獣が鳴くようなけたたましい鳴き声をきいた。
「あれは何!?」
リリイが指さす方向には、空を横切るアリーヤの宇宙船の姿があった。それは動物のサソリの怪獣ように見え、らんらんと光るピンク色の鋭い目のようなヘッドライトがある。その怪獣のような宇宙船は、暗い森の奥から出現し、リーフとアリーヤ達のいる廃墟にたどり着き、リーフをそのピンクに輝くライトで威嚇した。その様子にたじろぐリーフとアリーヤ。アリーヤはびっくりし、その場で転んでしまった。と、同時に宇宙船は機能を停止し、その場の空中に静止した。
「何者か知らんが、邪魔はさせんぞ!」
するとアリーヤのズボンのポケットから、1つの実がこぼれ落ちる。
アリーヤは森で拾った毒の実を、ズボンのポケットに入れたままだった事を忘れていた。紫色の5センチ程の実を、手に取るリーフ。
「なんだ、食べられるものがあるでは無いか!これを貰っていくぞ!」
アリーヤはそれに気づき、リーフを止めようとする。
「ちょっとまってよ!その実はダメ!毒があるの!」
リーフはそれを信用せず、その場で実をかじった。
リリイは、アリーヤ、エドナの安否を心配しながら、その場を動けずにいた。1時間が経過しようとしていた。
すると、遠くの森から声が聞こえた。
エドナが手をふっている。
「おおーい!」
「エドナ!無事だったのね!アリーヤは?」
エドナのすぐ後ろで、瀕死状態のリーフ・フライをかかえ歩いてくるアリーヤ。
「リリイ!解毒剤を用意して!じゃないと、この人が死んじゃう!」
それを聞いたリリイとセリア。リリイはアリーヤにたずねる。
「アリーヤ、それ、エドナをさらった宇宙人でしょ!?」
セリアも反発する。
「ほっときなさいよ、そんなヤツ!」
セリアの反発に、アリーヤも反論する。
「ううん、放っておけない!たとえ私たちと違う宇宙の民族でも、同じ命だもん!お願い、リーフ・フライを助けて!」
セリア、リリイ、エドナは下を向いた。
「どうしたの……?」
アリーヤは3人にたずねた。
リリイが口を開いた。
「解毒剤は、無いのよ」
「無い?……無いって、どういうこと?」
「私たち、ピクニックに来ただけだから、医療用具はコロニーに置いてきたの」
「じゃあ、この人は……リーフ・フライは助からないの?」
「助かるよ」
ふと、背後から女性の声が聞こえる。
アリーヤ達が振り向くと、そこには80歳ぐらいの、白髪のあるアフリカ系女性が立っている。その人物は、リーフ・フライやアリーヤの所へ歩いて来ると、小さな瓶に入ったオレンジ色の液体を取り出した。
「これを飲ませれば、よくなるよ。」
「あの、あなたは……?」
アリーヤは訊ねる。
「あたしはモヨ。あんたが入った廃墟の持ち主さ。」
モヨと名乗る女性は、アリーヤに言った。
アリーヤは驚きを隠せない。
「早くしな!その子を助けたいんだろ?」
モヨはそう言って瓶を手渡す。
2日後、セリア、リリイ、エドナとの別れがやって来た。スペースコロニーから来た宇宙船に乗った3人は、アリーヤに手をふる。
「3人とも、元気でね!」
「アリーヤこそ!」
3人と別れた後、アリーヤはモヨにお礼を言った。
「ありがとうございます、ウペンド・モヨ。なんとお礼を言ったら良いか……」
「そんな事はいいさ、それより、1人で勝手に、廃墟に入らない事だ。友達がさらわれたら警察を呼びな。勇気と無謀は違うからね。あと、あたしの土地に置き去りにしている、変な宇宙船も回収しとくれ。あれはあんたのだろ?」
モヨはにこやかに言った。しばらくして……
アリーヤは自身の宇宙船に乗って、旅をする事にした。
「ところで、この近くにエデン・コロニーっていう宇宙住宅街や商店街があって、そこで食料が調達出来るって!リーフ・フライさん!」
「エデン・コロニーか。聞いたことがある。その街には、天下の剣豪であるイトウ・マイクがいるという。そいつを仲間にすれば良い。」
「そうと決まれば出発だね!みんなを笑顔にするために!」
アリーヤは宇宙船を出発させた。
「必ず助けるからね、ミカ。」
つづく




