#47 地球の勇者
アリーヤは脱出ポッドを操縦し、敵の船に狙いを定める。
(昨日まで何もない日常だったのに、いきなり宇宙人が攻めてくるなんて……手の震えが止まらない)
敵宇宙船の全長は、20メートルを超えている。
「あれに突っ込むの?」
「ああ。」
アリーヤは脱出ポッドを起動した。
「お願い、うまく行って!」
ポッドはまっすぐ、敵船に突っ込む。アリーヤはコアを抱え、敵船の外壁を脱出ポッドで破壊し、宇宙船内部の廊下を走る。
「何事だ!?」
デッド・オリオンの司令官が叫ぶ。部下は状況を言う。
「船内部に侵入者!時空移動マシンの方角へ移動中!」
「阻止しろ!」
指示を出す敵司令官・ナンバー06。
「敵は任せろ!キミは走るんだ!」
走ってくる敵をコアがビームで蹴散らす。やがて、廊下の突き当りに部屋が見える。
「あの部屋だ!」
一方、敵指令室。兵士が司令官に連絡をする。
「敵が部屋に到達しました!」
「何だと!?」
時空移動マシンの前まで来たアリーヤとコア。そのマシンの前にレバーが付いている。
「そのレバーを引くんだ!」
コアの指示で、アリーヤは時空移動マシンのレバーを思い切り引いた。
「オリャーッ!!」
すると、デッド・オリオンの船は青白いイナズマに包まれ、町から消える。
はるか彼方の宇宙空間に、デッド・オリオンの船が現れた。
「もう一度マシンを起動しろ!」
敵司令官は指令室で命令するが、コアが光線でマシンを爆破する。
「マシンをやられました!」
「お、おのれぇぇぇーーー!!」
敵司令官の叫びも知らず、廊下を走るアリーヤ。コアと共に脱出用のポッドに乗り込み、宇宙船から脱出する。
「ふうっ」
アリーヤは息をついた。
「やったな、アリーヤ!人類はきみが救ったんだぞ!」
「みんな無事ってことだね!」
アリーヤは微笑んだ。すると、アリーヤたちの目の前に銀色の四角い大型宇宙船が現れる。
「敵!?」
「違う!あれは味方だ!」
宇宙船は、敵に向けてレーザー光線を発射する。敵の司令官は叫ぶ。
「レジスタンスか!」
レジスタンスの攻撃で、デッド・オリオンの船はほとんど撃沈する。
2~3あった敵宇宙船は爆破され、残り一機となった。
「我々の勝利だ!」
「うん……」
アリーヤの反応に、コアは訊ねる。
「どうした?」
「人がたくさん死んでる……」
彼女はそう言って、悲しそうな表情で、戦場を見ていた。敵の司令官は、部下に命じた。
「あの脱出ポッドを撃て!」
アリーヤたちが乗る脱出ポッドが、オリオンの船に撃たれ、爆発した。
アリーヤとコアは生身で宇宙空間に放り出され、二人は引き離される。
「アリーヤ!」
コアは叫ぼうとするが、アリーヤには届かない。そのままコアは、暗闇へ消えていった。その時、アリーヤのカメラがピンク色に光り、アリーヤの全身をその光で包んだ。光るカメラは、アリーヤをその光でつつみながら、外見が冥王星に似た謎の惑星にアリーヤを連れて行く。砂漠に仰向けに倒れているアリーヤ。
「きみの夢は何だ?」
「写真家になることだよ」
「どうしてきみは……写真家を目指す?」
アリーヤはとある惑星で目を覚ました。うす暗い青空、そして砂漠が広がっている。
「うわあ、ここはどこ?天国にしちゃ、殺風景なトコ……ママやコアは無事?」
すると、アリーヤの手元にあるスマホに、メッセージが1件入っている。
発信者名はエヴァルドとある。
「エヴァルド……?」
彼女はメッセージを読んだ。
「ピンクの光・指し示す場所に、君は行くべきだ。そこにきっと、希望があるから。」
メッセージはそこで終わっていた。
「ピンクの光?」
何の事か分からない。そう思ったアリーヤは、自身のカメラのレンズから光がもれている事に気づいた。ピンク色の光である。
そのピンク色の光は、地平線の彼方を指し示した。
アリーヤ「この光の、事?」
彼女は地平線の向こうへと歩き出した。
アリーヤが歩いていると、やがて地平線の向こうに、緑が生い茂る森が見えた。
「この森の中?」
彼女は恐る恐る、森に足を踏み入れた。ピンクの光の指し示す通りに森を進んでいくと、洞窟に突き当たった。
「どうしよう、これは何かの罠じゃない?」
そう考えながらも、彼女は洞窟へ入って行った。洞窟の中は薄ら明るく、やがて彼女は洞窟の突き当たりまで導かれた。そこには家ほどの巨大な丸い石のかたまりがあり、鋭い目のような突起物が2つ見えた。その両目の真ん中のピンク色の宝石に、アリーヤのカメラのピンクの光が当たっていた。
「この石が、キボウ?」
そう呟いた瞬間、彼女の身体は光り輝き、カメラと共に丸い石像の内部へと吸い込まれて行った。
暗闇の中で1人しゃがみ込むアリーヤ。暗闇で、ぼんやりと、アリーヤの家が見える。リビングのテーブルに、2人の親が座り、小さいころのアリーヤに向けて、こちらへ来るよう促している。2人の間の席へ座るアリーヤ。紺色服の父親が、小さなアリーヤに問いかける。
「どうしてきみは、写真家を目指すんだ?」
戸惑うアリーヤ。彼女があたりを見回すと、そこはリビングでは無く、父の個室だった。誰もいない、電気もつかないその部屋で、ほこりをかぶったアルバムを見つける。どこかの国の戦場だろうか、アルバムの写真20枚には、11年も前の日付が記録されている。泥道を走る戦車は、敵に狙いを定めているところか。ある写真では子どもが泣き、またある写真では逃げ惑う人々が写されていた。部屋に閃光が走る。
爆発音と共に、家は崩れ落ちた。暗闇を走るアリーヤ。何かにつまずき、それを拾いあげると、それは小さなペンダントだった。
「アリーヤ」
誰かの呼び声がする。
「私は、私の夢は……」
声を振り絞るアリーヤ。
「みんなの笑顔を、守ります!」
カメラはまた光り出す。アリーヤのカメラの光は、カメラ本体を離れ、彼女の頭上に舞い上がると、あたりを照らして行った。そこは宇宙船の操縦席だった。
「何、ここ……」
戸惑うアリーヤをよそに、外壁の石像は音を立てて崩れて行った。それは、動物のサソリを模したような、ピンクの光を放つ宇宙船だった。と共に、アリーヤのカメラから声が聞こえてきた。女性の声だ。
「この宇宙船にたどり着いたアリーヤ・カルティエ。あなたは、こことは別の銀河を救った勇者です。ここの宇宙にはまだ、デッドオリオンなどの魔の手が差し迫っています。今一度、アリーヤ・カルティエのその手で、この宇宙をお救い下さい!……」
音声はそこで途切れた。アリーヤはカメラを見ながら立ちつくした。
「カメラが喋った……ちょっとまって!勇者ってどゆこと!?宇宙を救えって?もう何がどうなってんのぉー!?」
アリーヤの問いに、カメラは答えなかった。
「そっかあ、私は宇宙犯罪者に立ち向かったりして、宇宙を救えたんだ。よかったぁ……ま、帰れないんですけどね。ええい!どうせ帰れなくなったんだ、こっちの宇宙もミカも救ってやるよ!やりますよ!そうと決まれば発進だね!そこら辺の操縦席、いじっちゃおう!」
アリーヤは、操縦席の機械をがむしゃらにいじり始めた。
つづく……




