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ピンク・スコーピオン!!  作者: 水柴ロク
49/61

#49 エデン・コロニー

挿絵(By みてみん)

1人の人工知能がそこで浮いていた。人工知能の名は、コア。コアのバレーボール型の体は、戦いによって傷つき、意識はもうろうとしていた。

デッド・オリオンを探していた、レジスタンスのパトロール部隊が、コアを回収してくれた。コアはすぐに、レジスタンスのエリック司令官の元へ連れて来られた。

「アリーヤ……」

もうろうとする意識の中で、コアはアリーヤの名を口にした。

「アリーヤとは誰だ?」

レジスタンスの司令官が訊く。

「彼女は勇者です」

コアはそう言い、活動を休止した。

エデン・コロニー。それは宇宙をただよう巨大な人工物。人間が宇宙に住むために建造した人工居住地である。そんなエデン・コロニーの数ある住居の中に、ある青年が住んでいた。名は、イトウ・マイク・リデル。当時の年齢は15で、日系の青年だ。彼は街の中をさまよい歩いていた。

「ミノリ……俺はこの先、どうすればいいんだ」

彼はそう呟いた。エデン・コロニーには数千もの種族の宇宙人たちが住んでいる。その多くは、人間とはかけ離れた姿かたちをしていて、地球人はごく少数。

道の向かいから、高身長のウィーヴィル星人が歩いて来て、マイクの肩にぶつかった。

「レエカ・ヘ・ウキュツィー!」

ウィーヴィル星人の若者は、マイクに宇宙語の文句を言ったが、マイクは相手にしなかった。

地球人以外の多くの種族は、エデン・コロニーでは殆どが、幸せそうに暮らしている。しかし、コロニーに住むごく少数の地球人達は、満足な就職先も、生活用品も殆ど手に入らなかった。

「見ろ、地球人だ。エデン・コロニーでデモや暴動を起こす、やっかいな連中だ」

「地球人には近寄るな」

そんな文句が、エデン・コロニーでは蔓延しているとマイクは痛感した。地球人に対する偏見や差別が根強いのだ。マイクはふと、深い川の流れるとても大きな橋を見た。彼は思わず、その橋に近づいた。 

「ここにおれの居場所は無い。ミノリ、まっててくれ」

彼は、橋の柵を乗り越えると、闇に吸い込まれる様に、そこから飛び降りようとした。その時―

「だめだよ」

ふいに、マイクは腕をつかまれ、つかんだ人物は自らのもとへマイクを引っ張った。その小さな少女は言う。

「そんな事しちゃダメ。」

マイクはその手を振り払おうとした。

「離せよ。お前、誰だよ」

「イトウ・マイクさんですよね?私はアリーヤ。旅人よ。」

エデン・コロニーのマイクの住居に、アリーヤは招かれた。

「なぜ、おれを助けた?」

マイクの問いに、アリーヤは答える。

「飛び降り現場を見かけたら、見過ごしてはおけないよ。あんな事はやめて。」

「この人工居住地に、おれの居場所はもう無い。地球人は迫害され、他の宇宙人は栄える……そんな世界はまっぴらだ。おれはミノリの所へ行こうとしたんだ。それをお前は」

「アリーヤ」

「アリーヤは邪魔したんだ。これ以上生きて何になる?」

「マイクさん、ミノリとは?」

アリーヤはたずねる。マイクは、自らの部屋のすみに置かれている、古ぼけた写真を取り出した。そこには、一組の少女と少年が写っていた。

「ミノリはな、おれにとって仲間より大切な人だったんだ。だが、宇宙船で宇宙を駆け巡ってる最中、ミノリとおれは、何者かの襲撃を受けた。おれは助かったが、ミノリは……」

泣き崩れそうになるマイク。片手で、顔を覆う。アリーヤは事情を知り、マイクの肩に手をのせた。

「辛いよね、くるしいよね、でも、自分の命を捨てないで。」

「アリーヤ、キミに何が分かる……キミは過去に、大切な人を失った事があるか?せっかくの思いで、おれとミノリはここまで来たのに……おれにはキボウは無い……」

その言葉に、アリーヤは言葉を返す事が出来なかった。

(天下の剣豪と呼ばれるイトウ・マイクは、大切な人を失った喪失感と、周囲の宇宙人たちによる偏見や差別にくるしんでいる。

リーフ・フライは彼を私の仲間にしろって言った。けど、こんなに傷付いたひとを、私は助けられるかな……)

 次の日、朝方に目を覚ますマイク。なにやらキッチンから、美味しそうな匂いが流れてくる。

「何の匂いだ?」

マイクがキッチンへ行くと、そこにはクリームシチューを作るアリーヤの姿があった。

「Hi,マイク!朝食だよ」

「お、おう。」

クリームシチューを頬張るマイク。

「うまい……これ、キミがつくったのか?」

「ここにある食材で作ったんだ。お金は家賃込みで払うから、」

「ここに居座るつもりか?」

「しばらくね」

「すきにしろ。ところで、キミは食べないのか?」

「クリームシチューの気分じゃないの。後で食パン買ってくるよ」

「エデン・コロニーにパンは無い。」

「そうなの?じゃあ、何食べようかな……」

「料理は、習ったのか?」

「小学生の頃に、習ったよ。今回はそれを再現しただけ」

「そうか。ミノリは、料理はしなかった。おれが料理担当だったからな。」

マイクは、物思いにふけった。

「今度は、おれが作るよ。何を食べたい?」

ふと、マイクの住居の窓を覗き込む、大きな巨体がいた。

アリーヤはハッと気付き、マイクにそれを伝えたが、外に出るとその巨体は消えていた。

つづく


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