#45 レジスタンスのコア
誕生日に、ミカがカメラをくれた。ミカが毎日貯めてたお小遣いで、買ってくれたものだった。その日は親友とママが、盛大に祝ってくれた。とてもうれしかったけど……数日後、ミカは突然、姿を消した。1年後―
地球の大気圏外、つまり宇宙空間に静止した宇宙船がある。司令官ナンバー06は部下ジュリアを呼んだ。
「例の任務は順調だろうな?」
「はい」
「よろしい。では、逃走したレジスタンスのスパイは?」
「現在、探索中です。」
朝。地球のとある町。アリーヤ・カルティエは寝室で、ある夢にうなされていた。
「うーん、冥王星から侵略者が、恐いよう……」
母親のローザが彼女を起こしに来た。
「起きなさい、宇宙オタク!」
飛び起きるアリーヤ。ローザは朝食を用意する。
「夢でも見たの?ゴハンを食べなさい」
朝食と身支度を済ませたアリーヤは、自転車カゴにカメラとゴーグルを入れ、ミカと一緒に行った丘へと出かけた。そんなアリーヤを見送るローザに、近所の人が話しかけた。
「おや、お宅のアリーヤ、今日もあの丘へ行くんだねえ?」
ローザは答える。
「日食を撮りに行くんですって。まったく、こんな時だけはしゃぐんだから。前まで家にいたあの子とだって、小惑星が何だの、冥王星が何だのってそんな話ばかりしてたのよ……」
「あの子もアリーヤと仲が良かったねえ。行方は分からないのかい?」
ローザは静かに口をひらいた。
「いいえ……」
そのころ、アリーヤはいつもの丘に到着し、日食用のゴーグルで太陽を見ていた。太陽は丸い大穴があいたように見える。
「見えた!よぉし、撮るぞぉ!」
アリーヤがさっそくカメラを構えると、太陽がある方角から、小さな丸いものが落ちてきて、彼女のおでこにぶつかった。
「痛ッ!」
後ろの芝に倒れるアリーヤ。すると、バレーボールくらいの大きさの物体は、アリーヤに向かって話しかけてきた。
「大丈夫か?ケガは無いか?」
ビックリするアリーヤ。ボールのような物体は、3つある黄色い目を光らせる。
アリーヤはなんとか返事をすると、太陽をゴーグルで見たが、日食は終わった後だった。
「日食が終わっちゃった!そんな、ガックリ……」
アリーヤは落胆した。そんなアリーヤにボール型の人物はこう問いかける。
「落胆している所ですまないが、隠れ家を提供してくれないか?」
困惑気味のアリーヤは、現状が呑み込めないながらも、そのボール型の人物を、自身の家の個室に招いた。ボールはコアと名乗った。
「ぼくはコア。こことは別の宇宙から来た、人工知能搭載型ロボットだ。凶悪な宇宙帝国から、宇宙の平和を守るためにやってきたんだ。」
ボール型の人物・コアは語った。アリーヤは訊き返す。
「で?どうして日食の撮影の邪魔したの?」
「あれは事故だよ。ところで、キミは、ぼくの姿を見ても驚かないようだね」
「まあ、今時は科学技術が進歩してるし、人工知能も珍しくないからね。最初は驚きましたけど」
アリーヤの反応をよそに、コアは続ける。
「僕の世界の人類は、銀河征服を企む宇宙帝国デッド・オリオンによってほとんど壊滅させられてしまったんだ。生き残った人類も、ヤツらによって資源発掘などの強制労働を強いられている。そして、デッドオリオンは新たな領域を得るために、キミたちの住んでるこの宇宙の地球に来た。ヤツらは間もなく、地球への総攻撃を始めるだろう」
アリーヤの表情が変わった。
「デッド・オリオン!?」
「知っているのか?」
ミカは初めて会った時、デッド・オリオンから逃れて来たと言っていた。まさか―
「ねぇ、コア。ミカって子、知らない?私と同じくらいの女の子なんだけど」
「シルバーアリス星のミカ姫の事か?ミカ姫ならデッド・オリオン帝国のオリオン18世と結婚した。ぼくが見るに、あれは政略結婚だろう」
「政略結婚……」
「デッド・オリオンと屈託して利益を得たいシルバーアリス星人が、ミカ姫の意思を無視して結婚させたのさ」
アリーヤが拳を握りしめた。
「助けなきゃ―」
おしゃべりなコアは続ける。
「大丈夫だ。ボクを含むレジスタンスが、デッド・オリオン壊滅を目指し、計画を立てている。問題は、レジスタンスは時空移動の装置を持っていない事だ。ボクはデッド・オリオンの宇宙船に侵入し、この宇宙へ来た。デッド・オリオンを倒すには、ヤツらを一旦元いた宇宙に戻してから、攻撃する必要があるんだ。元の宇宙に戻った瞬間に時空移動システムを破壊すれば、ヤツらは二度と襲ってこない。時空移動システムの製造技術は、遠い昔に失われているからね」
アリーヤはコアの話を胸に秘めながら、居間へ向かった。
一方、デッド・オリオンの宇宙船。
「リスト中の地球人を捕獲し終えました」
部下のジュリアの報告に、満足げな司令官。
「よろしい」
「スパイの居場所をキャッチしました」
「始末しろ。ついでに地上へ侵攻するぞ。」
つづく




