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ピンク・スコーピオン!!  作者: 水柴ロク
44/61

#44 親友・その名はミカ

挿絵(By みてみん)

朝が来た。ミカが起きると、キッチンのテーブルには目玉焼きとベーコン、そして食パンが置いてあった。ローザがミカに声をかけた。

「おはよう、ミカ。机のそれ、食べて良いからね」

ミカの目が輝いた。久しぶりの朝食だったのだろう。少女はおいしそうに、朝食を食べた。

机の向かいで食事をしていた9歳のアリーヤは、テレビを観ながら言った。

「地球ってイヤな所だよ。イジメはあるし、差別もあるし、……戦争だってある。毎日たくさん人が死んでるの。ニュースで見たよ」

アリーヤを咎めるローザ。

「地球に来たばかりのミカに、そんな話はしないで、アリーヤ。地球にだって良いところはあるのよ、ミカ。」

ローザははテーブルの植木鉢に植えられていたピンクの花を指して、アリーヤとミカに教えるように言った。

「このピンクの花の花言葉は、(大胆)(純愛)(貞節)。私とアリーヤが生まれた町では、みんなが愛にあふれて、優しさと幸せを願って飾られるのよ」

ローザがそう言うと、ミカはピンクの花を食い入るように見つめ始めた。

「ダイタン、ジュンアイ……」

ミカは1つづつ、つぶやいた。ミカは左手に、指輪を着けていた。どこへ行くにも、薬指に着けたその指輪を、手放さなかった。アリーヤがミカに何故と聞いても、ミカは答えなかった。ミカは優しい性格だった。玄関にネズミが現れるとエサを与え、台所に小さなクモがあらわれると、指に乗せて会話をしていた。ピンクの花を見るたびに、ローザからもらったカメラで何度も同じ写真を撮っていた。アリーヤはミカの奇行の数々を、朝食のコーンフレークを食べながら毎朝見ていた。

ある日、ミカとアリーヤが外を歩いていると、1匹の蝶が飛んできた。蝶の存在が珍しかったのか、ミカはそれを追いかけて、アリーヤと離れ離れになってしまった。1人になったアリーヤは、公園で小動物をいじめる不良の集団と出くわした。アリーヤは走って行って、3人の不良の前にでて両手を広げた。不良の1人が文句を言った。

「アリーヤじゃねえか。正義面しやがって。お前から遊んでやろうか?」

その頃、蝶とはぐれたミカは、アリーヤがそばに居ないことに気が付いた。

「アリーヤ、どこ?」

ミカは左手の薬指を見た。

公園でアリーヤは、不良集団3人に囲まれていた。悪口を言われて泣いているようだ。先にいじめられていた小動物を庇いながら、アリーヤは、じっと泣きながら耐えていた。

「おい、こいつ泣いてるぞ?泣けば許してくれると思ってんのか?」

不良の1人がアリーヤに怒鳴った。その時だ。公園の入り口に、光る何かが見えた。ミカだった。ミカが左手に着けた指輪が光っている。ミカが叫んだ。

「お前たち、だれ?」

いつものミカではない。怒っている。

「アリーヤがかわいそう!今すぐ止めろ!」

公園全体に、謎の振動が伝わる。不良の1人がそれを察したのか、仲間の不良に耳打ちした。

「おい、なんかコイツやべえぞ……」

ミカが左手をかざすと、アリーヤに怒鳴った不良の1人の両足が宙に浮いた。不良の1人は、身体全体が宙に浮いたまま、両腕を首あたりにあててもがき苦しみ始めた。アリーヤは目を見開いた。不良の内2人は逃げ、残った不良のくちから泡が出た。身体もけいれんしている。咄嗟にミカの前に出るアリーヤ。

「もうやめて、死んじゃうよ!」

ミカはアリーヤに尋ねる。

「こいつ、悪いヤツだよ?どうする?」

アリーヤが首を横に振ると、ミカは腕を下ろした。不良は地面に崩れ落ちた。気を失っていたので、アリーヤは通行人を呼び止めて、不良は病院に搬送された。

ミカは小動物を見てしゃがみ込み、笑顔を作った。

「よかったね。アリーヤがきみを守ったんだよ」

帰り道、アリーヤはミカに言った。

「私さ、変わり者だってよく言われるの」

「アリーヤは、アリーヤだよ?」

「聞いて、ミカ。ミカもちょっと変わってるけどさ、私、背が低くて学校でいじめられるの」

「学校に行くと、いじめがあるの?」

「みんながそうじゃないよ?趣味とか、好きな物とか、聴いてる音楽のことでも馬鹿にされるんだ」

ミカが怒って言った。

「そんなの、アリーヤがかわいそう!学校なんて行かなくていいよ!」

「ありがとう、ミカ。でも、教育は受けないと、ダメなんだ……」

「キョウイク……?」

「教育っていうのはね、言葉を習ったり、算数の問題を解いたりするんだよ!」

「それは、必要?」

「うん。生きていくためには、必要なものだよ」

アリーヤの答えに、ミカは考え込みながら歩いた。2人は小動物を安全な所に送り届けたあと、家に帰りついた。

夜になった。ミカはアリーヤを起こし、外へ連れて出た。少し高い丘の上に、星空が広がっている。アリーヤは寝ぼけた顔で言った。

「私も宇宙に行けたらな……」

ミカが言った。

「アリーヤ、地球、キライ?」

ミカはアリーヤの目を見て言った。

「アリーヤ、明後日誕生日だよね、何か欲しいものはある?」

「んー、宇宙」

アリーヤはふざけて言った。しかし、ミカの答えは意外なものだった。

「わかった、アリーヤ。一緒に宇宙へ行こう!宇宙には、ここよりも楽しい場所がある。青く美しい宇宙を、心を込めて君に差し上げよう!」

ミカは薬指の指輪を外して、空に投げた。びっくりするアリーヤ。ミカは何か呪文を唱え、祈りをささげた。すると指輪はミカの手のひらに戻って来た。

「これで宇宙は、きみのものだよ!」

ミカが微笑んだ。アリーヤもつられて笑った。星空がきれいだった。

つづく

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