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ピンク・スコーピオン!!  作者: 水柴ロク
42/61

#42 ピューマの足枷

挿絵(By みてみん)

マドウマ星の朝。都市には昨日大暴れした怪獣の亡骸が横たわっていた。宇宙の賞金稼ぎ、ネイビーピューマがアリーヤの目の前にジェットパックで飛んできて、地面に着地した。立ってるのもやっとのアリーヤだったが、重要と思えることを訊いた。

「ネイビーピューマ……あなたの父親は、スティーブ・カルティエ。そして、あなたの本名は……イリーゼ・カルティエ?」

ネイビーピューマはしばらく黙っていたが、ため息もつかずにヘルメットを脱いだ。アリーヤとよく似た少女の姿がそこにあった。

「ローザ・カルティエから聞いたのか?」

「やっぱり、そうなんだね?姉さんなんだ……」

アリーヤは目を閉じそうになり、倒れそうになる。それをそっと受け止めたのが、装甲服を着たイリーゼの両腕だった。アリーヤの意識がもうろうとする中、イリーゼはおしゃべりを始めた。

「お前が小さい頃はよく、こうやってお前をだっこしたものだ……今は抱きかかえるのがやっとだが」

「姉さんはどうして、宇宙にいるの?」

イリーゼは躊躇なく説明をした。

「順序が違うな……私が宇宙に居るのは必然なんだ。お前にも知る権利がある。話そう」

彼女は話し出した。

「お前と私の父・スティーブ・カルティエの先祖は、今から600年ほど前に宇宙人共に連れ去られた地球人だ。ある惑星を支配していたその勢力との160年間続いた地球人達の独立戦争で、我々の先祖はレジスタンスのリーダーとして惑星クーガーで勝利し、その証である初代ネイビーピューマの称号を得た。」

イリーゼは話を続けた。

「初代ネイビーピューマが亡くなった後、その血筋は代々受け継がれてきた。8代目であるスティーブ・カルティエは、長い旅を経て、夫婦で初代ネイビーピューマの故郷である地球に着いた。だがそこは、戦争が絶えない星だった……」

イリーゼの顔が引きつった。

「初代ピューマの故郷・地球の現状を打開したかったスティーブは、地球で得た知識で写真家となり、紛争地帯に潜り込んだ。その惨劇を地球中に知らせようとしたんだ。だが……地球人のある組織が、スティーブを捕らえて拷問し、そのまま殺した」

アリーヤの目が見開かれる。心に動揺が走る。イリーゼは続ける。

「その後、スティーブの生前の再婚相手であるローザ・カルティエは、クーガー星から来た私の親戚に、私を押し付けた。私は9代目ネイビーピューマとなった。スティーブが亡くなった以上、ピューマの称号を継がざる負えなかった。選択肢は無かった。地球に居た友達と別れ、まだ1歳だったお前とも別れ、クーガー星で訓練が始まり、今の私になった」

アリーヤがショックのあまりしゃがみ込むと、イリーゼもそれに合わせてしゃがんだ。

「私とお前は同じ地球で生まれ育った。なのに私は宇宙に捨てられ、ローザは実の子であるアリーヤ……お前だけを選んだんだ。だがな、アリーヤ。ローザは間違ってなんかない。正しいことをしたんだ。クーガー星の訓練の日々は地獄だった。逃げることも、許されなかった。だが、私のこの身の犠牲1つで、お前の日常を守れるなら、安いものだった。なのに……」

イリーゼの言葉が詰まった。アリーヤが訊ねる。

「なのに……どうしたの?」

イリーゼが低い声で言った。

「なんで、お前が宇宙に居るんだよ……」

イリーゼの頬が濡れていた。アリーヤはそっとその指で、震える彼女の涙を受け止めた。

「姉さん……私にも、理由はあるよ」

「……どんな理由だ?」

と、その時、マイク率いるアリーヤの捜索班が、しゃがみ込んでいる2人を見つけた。イリーゼ―否、ネイビーピューマは、とっさにビームガンを手に取った。

アリーヤはそこで意識を失い、倒れ込んでしまった。次に目覚めた時には、アリーヤはスコーピオン号の医務室に寝転がっていた。セリアが駆け寄って来た。

「起きたわね、アリーヤ」

アリーヤは飛び起きたが、医務室に姉の姿はなかった。

「……ネイビーピューマは?」

アリーヤの質問に、セリアが答える。

「マイクが追い払ってくれたわよ。あんた覚えてないの?あの時マイクがピューマを撃たなかったら、今頃あんた、死んでるわよ」

アリーヤは目を見開いた。姉さんが撃たれた。

「ピューマは今どこに?」

「知るわけないでしょ。逃げてったわよ。マドウマ星からスコーピオン号もピューマも両方逃げた。ガルグイユも来てたしね」

アリーヤがつぶやいた。

「クーガー……」

顔をしかめるセリア。

「何?クーガー?」

「惑星クーガーに行こう!ピューマは全部話してくれた。今度は私が話をする番!!」

アリーヤは、医務室のベッドから起きて、カメラを手に取った。

ずっと寝てたからなのか、首元がやけに痛かった。

つづく

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