#41 戦慄!宇宙怪獣
「未確認飛行物体が2機、高速で接近中!」
ジュリア副長はリッキーとメイティンを迎え入れた後、アリーヤ班とナリナァ班と連絡が取れずにいた。マドウマ星にまき散らされた妨害電波のせいだった。
スコーピオン号が都市部から離陸しようとすると、遠くから赤い発行体が高速接近してくるのが見えた。宇宙首長竜・グリプトグレイルスとマドウマ星人・クイーン・テルミンだ。やがてクイーン・テルミンとグリプトグレイルスが1つに溶け合い、合体し、50メートルはあろう赤い光を放つ2足歩行型巨大恐竜怪獣に変貌した。
テルミンの意思を持ったその恐竜型怪獣は、マドウマ星全域と、スコーピオン号とアリーヤに対してテレパシーのような通信を送って来た。
『我が名はテラー・テルミン!全宇宙を統べるべく誕生した!逆らう者は薙ぎ払う!』
アリーヤは確信した。
「ローラやギルズ星のウルカスと一緒だ……指輪の光に操られている!」
マドウマ星の都市をずっしりと、象のような足取りで歩く宇宙怪獣テラー・テルミン。鎖骨が赤く光ったかと思うと、口から赤い光線を吐いて都市部を火の海にしていく。ジュリア副長は戦慄を覚えた。
「何だあの怪獣は……あんなのにどう立ち向かえば……」
『今、私に逆らうマドウマ市を焼き払った。スコーピオン号、そしてアリーヤ。ガルグイユの手下も。指輪を持ってこなければ、宇宙全域が散ることになるぞ!』
あたまの中に響く、テラー・テルミンの脅し文句。指輪の力の影響で、テラー・テルミンの欲望も増大していた。この文句に屈すれば、宇宙は無くなる。アリーヤは叫んだ。
「そんなこと、させない!!」
森の静けさの中に、隊員たちの荒い息遣いだけが響いていた。首元のカメラに戻した指輪が微かに熱を帯びる。アリーヤの意思に呼応するように。テラー・テルミンも何かを感じ取ったらしい。アリーヤのカメラの中身の指輪が光った。アリーヤ自身の体も、ピンク色の光に包まれた。近くに居たフロルたちもマクア星人たちも、眩しさのあまり目を背けた。その間にアリーヤは、光の力で怪獣テラー・テルミンのいる街へと飛んで行った。街で暴れるテラー・テルミンに、ピンク色の光のパンチを浴びせる空飛ぶアリーヤ。テラー・テルミンが咆哮を上げた。
『今のは何だ?アリーヤ・カルティエ。抵抗するつもりか?この反逆者め!』
テラー・テルミンのテレパシーに屈せず、アリーヤも言い返す。
「私は空飛ぶピンク・スコーピオン、隊長!!アリーヤ・カルティエ!!今のは暴力反対パンチだよ!!」
『矛盾してるぞ、馬鹿な小娘!』
テラー・テルミンの口が大きく開く。光線を放つ気だ。
空から轟音が降って来た。金属を引き裂くような甲高い音。次の瞬間、怪獣テラー・テルミンの頭上を青白いビームが走った。テラー・テルミンの複眼が目を回す。
『何者だ!』
ビームはテルミンには当たらなかった―わざとだ。威嚇射撃。マクア星人の兵士たちに動揺が走る。都市のビル群の間からジェットパックの噴射炎がちらつき、装甲服に身を包んだ人影が一番高いビルから飛び降りて来た。ネイビーピューマはヘルメットのバイザー越しにテルミンをチラ見し、次にアリーヤへ視線を移した。ネイビーピューマはアリーヤに言い放つ。
「ずいぶんと間抜けな顔をしているな、スーパーヒーロー気取りめ」
「……ピューマ!」
ネイビーピューマはビームガンを片手に抱えたまま、自然とアリーヤたちとテルミンの間に割り込む位置に立っていた。背中越しでもわかる。アリーヤを庇っている。テラー・テルミンがネイビーピューマに問う。
『貴様は何者だ!』
「賞金稼ぎだよ。こいつらに用があるのはこっちも同じでね。」
『なんの用だ?』
ネイビーピューマはふっと笑った。
「暴力反対パンチのネーミングには俺も反対だ。だが、お前による暴力支配を打ち破る一撃だ」
『な、なんだと!?』
一瞬、テラー・テルミンの口の中がぶくぶくと揺れた。ネイビーピューマは察したように、アリーヤに指示を出した。
「あんなに巨大な生物だ。表面は固いが、体内の組織はまだ出来立てで不安定だ。そこを傷つければ……」
アリーヤが返事をする。
「体内に入り込んで中から引き裂けって?楽勝だね」
アリーヤはそらを高速移動し、怪獣の鼻の穴に入り込む。
「ネイビーピューマの科学的な助言を無駄にはしない!……でも、後で服を洗濯しないと」
怪獣テラー・テルミンが鼻からアリーヤを追い出そうとするが、アリーヤは怪獣の中にどんどん入って行って、怪獣の体内の核となる首長竜グリプトグレイルスを、怪獣の肺の中で見つけ出した。
「首長竜ちゃんと全宇宙の生命救出作戦、1人で開始!」
首長竜グリプトグレイルスは怪獣に生命エネルギーを吸い取られて弱っていた。
アリーヤは10メートルの巨大首長竜を光の力で持ち上げ―怪獣の肺から接続期間を引きちぎり、怪獣の鼻の外へとそのまま飛んでいく。
「鼻からじゃ首長竜が通れない!口から脱出するよ!」
50メートルの巨大怪獣の口から、10メートルほどの小さな首長竜、そして身長140センチのスーパーヒーロー・アリーヤが飛び出してきた。
核を抜き取られた怪獣テラー・テルミンは赤い光線を吐いたが―狙いは定まらず、光線の威力も弱まっていた。アリーヤはそのままグリプトグレイルスを森の沼に返しに行った。残った怪獣テラー・テルミン。身体のあちこちから赤い光が漏れ出ていた。
『や……いやだ、まだ……死にたくない……』
テルミンの本音が漏れ出た。目の前にはビームライフルを構えたネイビーピューマが居る。
「悪いが、手遅れだ」
ネイビーピューマはビームライフルのトリガーを引いた。
つづく




