#38 マドウマ星人の謎
マドウマ星。地球に似た星で、平和主義者のマドウマ星人達が暮らしている。
が、マドウマ星人クイーン・テルミンと二人の大臣が、怪しい動きをしていた。
「クイーン・テルミン、ヴェルデ星からアリーヤ・カルティエの船が来ます」
「やっかいだな」
三日月形の角が垂れ下がるクイーン・テルミンたち3人のヒューマノイド……マドウマ星人たちは立ち上がり、暗闇でひじを曲げたまま、平手を上にかざした。彼女たち3人の丸い複眼がうねうねと動いた。
マドウマ星の大気は穏やかだった。地球に似た緑の大地と青い海。だがその平和的な風景の裏で、王宮の一室には不釣り合いな緊張が張り詰めていた。
「アリーヤ・カルティエか。あの小娘がヴェルデ星をかぎまわったということは、我々の計画に気付いたかもしれんな」
「ガルグイユの偽装工作は予定通り完了しております。しかし、このままでは我が星が侵略の標的に……」
3人の複眼がぐるぐる回る。クイーン・テルミンが無機質な、しかし感情のこもった声で言った。
「心配するな、むしろ好都合だ。指輪の奪い合いでアリーヤとガルグイユが潰しあってくれれば、最後に笑うのは我々よ」
クイーン・テルミンの傍らには、ヴェルデ星で使われたものと同じ「マドウマ軍」のエンブレムが刻まれた旗が置かれていた。
「歓迎してやれ。盛大に。-罠の中でな。」
マドウマ星に迫るスコーピオン号。その進路上に、不穏な影が忍び寄っていた。
マドウマ星への着陸は拍子抜けするほど平穏だった。管制からは丁寧な誘導、港には花の飾り付き。まるで大切なお客様を迎え入れるかのような待遇だ。ターミナルにはマドウマ星人の市民がずらりと並び、子どもたちが風船を配り歩き、マドウマ星人の楽団が陽気な音楽を奏でていた。アリーヤと隊員たちは戸惑った。アリーヤがナリナァに耳打ちする。
「……なんか、すごい歓迎されてない?」
ナリナァは杖に体重を預けたまま、マドウマ星人市民たちの笑顔を1人1人観察していた。
「それが逆に気持ち悪いね。あたしたちが来るのを知ってたみたいだ。」
その時、市長を名乗るマドウマ星人が近づいてきた。
「ようこそマドウマ星へ、救助隊のみなさん!クイーン・テルミンがぜひ皆さんにお会いしたいと申しておりまして。王宮でささやかなながら宴をご用意しております。さ、どうぞどうぞ!」
ナリナァはアリーヤの耳元でささやいた。
「隊を2手に分けな。全員でノコノコ行くのは……」
アリーヤがにやりと笑って返した。
「全員でノコノコ行くのは馬鹿のやること、でしょ?じゃ、私はマドウマ星の調査をするよ。ナリナァは王宮に行って」
それを聞いて、ナリナァもにやりとした。
「分かってるじゃないか」
隊をアリーヤ班とナリナァ班に分け、アリーヤ班はスコーピオン号に残っているジュリア副長班と連絡を取った。副長がフローラ隊員らと共にマドウマ星全域を簡易スキャンしていた。マヤ隊員が開発した、新たなシステムだ。副長がアリーヤに伝える。
「隊長、惑星マドウマの北部の林に不自然な建造物を確認。」
「そこに何か隠してるってわけね」
「まだ断定はできません。お気をつけて」
通信が切れた。電波が乱れているようだ。
マドウマ星・北部の林に行く、アリーヤ班。林の途中で翼竜・ウチュウランフォリンクスの群れが木々の隙間から飛び出した瞬間、隊員たちは悲鳴を上げた。翼開長5メートルはある翼竜が5頭、旋回しながら急降下してくる。
「うわっ、なんだこいつら!?」
1頭が隊員の肩をかすめ、かぎづめが装甲服を引き裂いた。浅い傷だが血がにじむ。残り4頭は低空を這うように滑空し、隊列を分断しようとしていた。明確な敵意。野生動物の本能的な襲撃ではない―統率された動きだった。アリーヤは隊員たちに指示を飛ばす。
「固まって!散らばったら撃破される!」
アリーヤが叫んだ瞬間、茂みの中にもう1つの影。6頭目-だがそいつは襲ってこなかった。そのウチュウランフォリンクスは隊から少し離れた岩の上に止まり、じっとこちらを見つめていた。首に金属製のタグがぶら下がっている。人工飼育の証だ。誰かのペットか、あるいは―監視用か。
「隊長、あいつだけ動かねぇぞ!」
一方そのころ、王宮ではナリナァ率いる別動隊が豪華な晩餐の席に通されていた。
つづく




