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ピンク・スコーピオン!!  作者: 水柴ロク
39/61

#39 森の悪夢

挿絵(By みてみん)

「美味しそ~!アリーヤとマイクも来ればよかったのに!」

王宮の豪華な晩餐の席で、レベッカ・ホランド隊員は目を輝かせていた。ナリナァは隣のレベッカを杖で小突く。

「食うんじゃないよ、馬鹿。」

「え?なんで?」

「150年生きてりゃね、こういう場で出される飯にゃ裏があるって知ってんのさ」

「でもさ、ローラとデックスは食べてるけど、何ともないよ?」

「な、何だって!?」

デックスとローラは晩餐をすでに食べ始めていた。

「こらデックス、その食べ方はお行儀悪いよ?」

「そうなの?おいらたちデラウマ星人は、いつもこの食べ方だよ?」

ナリナァはがっくりとした。班を分けるときの人選ミスだ。

「ウチュウエビチリ、おいし~!」

レベッカがウチュウエビチリを頬張っていた。ナリナァは飽きれて言った。

「もう好きにするがいいさ……あとで便秘になっても、あたしゃ知らないよ」

大広間の扉が開き、マドウマ星のクイーン・テルミンがゆったりと姿を現した。従者が花びらを撒き、楽団がマドウマ流ファンファーレを鳴らす。女王はにこやかにナリナァたちに歩み寄った。女王の複眼がうねうねと動く。

「おお、救助隊の皆さま。我がマドウマ星の自然と料理を楽しんでいただけておりますかな?」

ナリナァは女王の複眼をまっすぐ見据えた。

「自然の方だけど、翼竜共がずいぶんと行儀がいいって隊長から知らせがさっきあってね。飼い主がいるんだろう?」

クイーン・テルミンの複眼が一瞬だけ泳いだが、彼女はすぐに笑みを取り繕った。

「ははは、あれは野生ですよ。すこし人懐っこいだけでして」

「人懐っこい獣はね、獲物を囲い込むように飛ばないんだよ」

「それよりお食事は?口にあいませんか?」

ふん、と鼻を鳴らしたナリナァ。

「口に合わないんじゃない。信用してないだけさ。」

クイーン・テルミンは笑顔を崩さないまま、だが複眼が冷たく光った。

「それは残念。せっかく腕によりをかけたのですが」

そのとき、広間の外から慌ただしい足音が近づいてきた。息を切らして駈け込んで来た大臣が女王に耳打ちする。クイーン・テルミンの複眼がぐるぐると回転した。-今度は隠しきれない動揺だった。

「……失礼、少々席を外します」

その背中を目で追いながら、小声で呟いた。レベッカにだけ聞こえる音量で。

「おい、今の見たかい?あいつら何か隠してる」

レベッカはキョトンとした。

「食べないならナリナァの分も頂戴よ」

デックスがナリナァの皿を見る。

「レベッカ!おいらと半分こしよ!おいらまだお腹へってるんだ!」

ローラがデックスを静する。

「こらこら、デックス。マイク隊員が怒るよ」

「あ、大丈夫よ、ローラ。全部デックスにあげるから」

「やったぁー!ありがとうレベッカ!」

「お礼ならナリナァに言わなくちゃ」

ナリナァが机にひじをついた。

「……ダメだこりゃ。」

女王と大臣は廊下の奥へ消え、声を潜めて話し込んでいた。「予定が狂った」「アリーヤが来なかった」「ランフォリンクスが失敗した」―断片的な言葉だけが漏れ聞こえてくる。

アリーヤたちが調査を続けていると、今度はマドウマ星の巨大ウチュウバラがその触手を伸ばしてリッキー隊員をからめとったのだ。植物と動物のキメラのような異形が土の中から姿を現す。隊長は優に3メートルを超えていた。花弁のような頭部がぐるりと回転し、捕食口が開く。

「うわぁぁぁ!リッキーが捕まった!」

リッキーの脚に巻き付いた蔦状の触手は万力のように締め上げ、じわじわと体内に引きずり込もうとしている。巨大ウチュウバラは1匹ではなかった。地中から次々と新しい個体が這い出してくる。3匹、4匹―隊を完全に包囲する形だ。

「リッキーを離して!」

アリーヤはビームピストルを構えたが、撃てばリッキーに当たる距離だった。巨大ウチュウバラの捕食口から酸性の消化液が滴り落ち、足元の草を溶かしている。時間が無い。

フロルが叫んだ。

「畜生、こいつらも誰かに操られてんのか?」

森の上空では、あの首タグ付きのウチュウランフォリンクスが相変わらず岩の上からこちらを観察していた。助ける気配はない。見ているだけだ。アリーヤは考えを巡らせた。

(何とか皆を助けなきゃ……考えろ……考えるんだ)

歯を食いしばり、必死に頭を回す。

(リッキーは足を掴まれてる……他のみんなも……あの蔦、熱に弱い?いや、わかんない。でも、ウチュウバラって確か……)

2年前、ウペンド・モヨに教わった知識が頭の片隅に引っかかっていた。乾燥に弱い種が多い――そうだ。

「フロル!火!森に燃え移らない程度の火をこいつらの根元に投げて!」

フロルは作戦を察したようだ。

「了解!」

フロルがビームガンを小型バーナーモードに切り替え、火を点火し、ウチュウバラの株元を炙ると、植物怪物は甲高い子どものような悲鳴を上げて、リッキーの拘束を緩めた。その隙に他の隊員がリッキーを引っ張り出す。アリーヤが叫ぶ。

「根元がダメなら上から!花の部分を狙って!」

残りのウチュウバラに隊員たちの集中砲火が浴びせられる。火と光弾で3匹が沈黙し、最後の一匹は森の闇へ逃走した。リッキーは足に酷い火傷を負ったが命に別状はない。

「やるじゃん隊長!」

だが、これは自然の襲撃ではない。ランフォリンクスといいバラといい、あまりにタイミングが出来すぎている。何者かの意図が透けて見えた。

つづく


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