#37 危急存亡の序章
宇宙戦争が終わり2年。この宇宙には、ガルグイユ率いるマクア帝国はじめ、全宇宙に平和が来たとは言えなかった。そんな宇宙を変えるべく、アリーヤ・カルティエは再び立ち上がった。地球人、宇宙人関係なく宇宙全域を救う為に。この宇宙の笑顔を守る為に、アリーヤ・カルティエは立ち上がった!行け、アリーヤ!宇宙に平和をもたらすのだ!
「うぃーす!宇宙平和目指すぞー!」
アリーヤは食堂で変なポーズをたくさんとって、カメラで自撮りをしていた。ホノカとローラ、デックスとニールがポカンとする。ホノカが訊いた。
「急にどうしたの?アリーヤ」
「んー?なんとなく自伝でも書いてみようかと思って。ほら、私たちの活躍をもっといろんな宇宙の方々にも知ってほしいじゃん。ホノカ達も写真撮っていい?」
ニールがローラに耳打ちした。
「最近、アリーヤは惑星間ブログを運営してるんや。バミリオン星が提供してる、タダのやつ使って、日々の活動報告しとるで」
ローラは顔をしかめた。
「誰が見るの?それ」
デックス隊員がハイテンションのアリーヤと同じポーズをして言った。
「隊長!おいらの活躍も、かっこよく書いておくれよ!」
スコーピオン号はヴェルデ星のコロニーから救助依頼を受けた。操縦室に来たアリーヤの軽い声が館内に響いた。
「ヴェルデ星のコロニーからの救助依頼でーす!よし、行こっか!ヴェルデ星って雨降ってるんだっけ?みんな傘もってるー?」
救助隊100余名がざわついた。「ヴェルデ星」という単語に反応する者、雨具を探し始める者。救助に向かうというのに、まるで遠足の空気だった。腰の曲がった小さなブルーム星人ナリナァが、杖を突きながらゆっくりとアリーヤの前に歩み出た。シワだらけの顔をしかめ、鋭い目でアリーヤを見据える。
「アリーヤ、よく聞きな。ヴェルデ星から救助信号が届いたってことは、ただの事故じゃないよ」
ナリナァの言葉に、周囲の隊員たちが静まり返った。
「ヴェルデ星は今、マクア帝国の勢力圏との境界線上にある。あそこに指輪の気配をかぎつけたのか、それとも単なる略奪か。どっちにしろ、着いた途端にドンパチって可能性もあるんだ。」
ナリナァは、アリーヤが首から下げたカメラをちらりと見た。
「……あんたのカメラには不思議な指輪が入っているね。それを使う判断は、最後の手段にしな。カメラはともかく、中の指輪が危険だ」
スコーピオン号がヴェルデ星のコロニーに到着する。船がワープをし終わった時の衝撃が船体を揺らし、隊員の半分が座席にしがみつく。窓の外に広がるヴェルデ星。赤い大きな球体は、美しくも不穏だった。ヴェルデ・コロニーの姿が見えてくる―が、様子がおかしい。移住区画の一部が崩落し、港口には宇宙船の残骸が漂っている。着艦した瞬間、焦げた金属の匂いが鼻を突いた。
「……ひどい」
コロニーに入った先で、1人のヴェルデ星人が駆け寄ってくる。皮膚が惑星の環境に適応した深い青色で、額から汗が滝のように流れている。その表情は明らかに怯えていた。
「地球人……もしかして、救助隊の方ですか?」
アリーヤは答えた。
「そうです。何人いますか?」
「中枢ブロックにまだ2人が……あと、マドウマ星人の兵士がコロニーを封鎖しているんです!」
ヴェルデ星人の1人をニールに任せた後、アリーヤと他隊員は環境適応スーツを着て中枢ブロックに行く。あたりが燃えているが、マドウマの兵士は見当たらない。ファルコン隊員とメイティン隊員が、ガレキの中から2人のヴェルデ星人を発見した。ガレキをどけて救出する。ヴェルデ星人エミは、ファルコン隊員に向かって叫ぶ。
「ベネットとブルーノは無事?私たち、マドウマ星人に攻撃されたの……」
3人のヴェルデ星人は応急処置が施され、担架で船へと運ばれていった。
アリーヤたちは3人のヴェルデ星人に事情を訊くべく、医務室へ行った。中枢の制御パネルを調べるため、特殊デバイスでデータをダウンロードした。
エミの話によると、3人はマドウマ星人に惑星ヴェルデを制圧され、3人はその種族に怯えながら毎日を送っていたという。エミの言葉を聞いて、ナリナァが眉をひそめた。杖の先で床をとんとんと叩きながら、老婆は低く唸る。
「ちょっと待ちな、お嬢ちゃん。マドウマ星人が攻撃?あの連中は先代の頃から筋金入りの平和主義民族だよ。こっちからケンカ売ってもあくびで返されるようなやつらだ」
アリーヤも会話に入る。
「……じゃあ、これやったのマドウマ星人じゃないってこと?」
ナリナァは首を振った。
「さあね。ただ、目の前の情報だけで決めつけるのは早い話さ。」
医務室を出たアリーヤ。先ほどの特殊デバイスをカメラに繋ぎ、ヴェルデ・コロニー内部の映像が無いか確認する。カメラに映像が映しだされた。
「ねぇ、ナリナァ、これ見て。監視カメラの映像。」
ナリナァは画面をのぞき込み、目を細めた。
「再生してみな。」
映像が映し出された。最初にコロニーへ突入してきたのは―赤と黒の軍服。マクア星人だった。「マドウマの旗」を掲げた部隊が、ヴェルデ星人の民間人を追い回しながら施設を破壊していく。そしてその混乱の最中、本物のマドウマ星人らしき数名の女性グループが港から逃げるように離脱していく姿も映っていた。武装はしていない。丸腰だ。
「……え、ちょっとまって。これって―」
「ガルグイユがマドウマ星人に罪をなすりつけたんだろうね。古典的なだが、効果的なやり口だよ」
シンジ隊員が歩いてくる。
「通信で、あるマクア星人がマドウマ星に行ったとの情報が一方的に送られてきました。逆探知しますか?」
アリーヤは少し考えて言った。
「マドウマ星へ行ってみよう」
ナリナァの静止も聞かず、スコーピオン号の操縦席に座るアリーヤ。ワープの準備をした。
「マドウマ星へ行くよ!ピンク・スコーピオン!!ハリー・ゴー!!」
スコーピオン号は宇宙を飛び立った。
つづく




