#33 賞金稼ぎの無謀
「冥王星から侵略者が来る。逃げろ、イリーゼ」
暗い宇宙船の中。ネイビーピューマは夢にうなされていた。青空に3つの太陽。大地は黄色い砂漠。紺色服のアフリカ系男性が、目の前に立っている。その顔は逆光で見えない。
「パパは、逃げないの?」
幼き日のピューマ……イリーゼ・カルティエがその「父親」に訊ねる。
「ごめんな、イリーゼ。戦争が終わったら一緒に暮らそう。ローザとも、アリーヤとも」
「いつ帰って来るの?」
「明日の正午には帰るよ。」
少女はその「父親」が帰ってこないことを知っていた。毎日見る夢だからだ。
「うそつき」
「何?」
「帰ってこないくせに、もう会えないくせに、ウソついてんじゃねぇよ!!」
イリーゼはそこでハッと目を覚ました。周りにいた賞金稼ぎの仲間たちが一斉に彼女を見る。ドラコが訊いた。
「スティーブの夢か?」
「……ああ」
仲間の1人、モーリスが文句を言う。
「あのさ、親父さんが死んだからってそう毎日怒鳴るなよ。親父さん、死んで何年だよ」
ドラコがモーリスのこめかみにビームガンを突きつけた。
「口を慎め、モーリス。お前の頭が吹っ飛ぶぞ」
モーリスは薄ら笑いを浮かべた。
「スティーブの二の舞ってか?」
ドラコが顔をしかめる。
「俺たちの目的を忘れたか?」
完全に起きたイリーゼ……現ネイビーピューマが仲裁に入る。
「無駄弾を使うな、ドラコ。」
ドラコはビームガンを下げた。船を操縦していた宇宙ロボットのナーガが、船内放送で知らせをした。
「間もなくマクア星に着く。ガルグイユは不在」
モーリスとパーシーが笑った。
「おいおい、ガルグイユが居ねぇのかよ!王様用の弾だぜ!」
ピューマは顔をしかめた。ドラコが言った。
「指輪は無さそうだな。大事なものは近くに置いてるモンだ。ガルグイユだってそうだぜ」
ピューマはドラコを見た。
「ヤツの帰りを待つ」
ドラコは動かず答える。
「了解、お嬢」
マクア星の城の前。地表に降り立つ小さな宇宙船。ネイビーピューマを筆頭に、武装した賞金稼ぎたちが7人出てくる。ビームガンを構えるマクア星人の兵士達。まるで待ち構えていたようだ。ピューマが腰のホルスターからビームガンを抜いた。マクア星人たちのビームが、ピューマの耳元をかすめる。背後の宇宙船が爆発した。戦闘の合図だ。ネイビーピューマはヘルメットをかぶり、お返しに近くに居るマクア星人の顔を撃ち抜いた。戦闘の開始だ。ドラコがマクア星人2人のビームを避け、打ち返す。城の前はマクア星人の死体の山ができた。大臣らしきマクア星人が現れる。ネイビーピューマが銃を向け、訊いた。
「ガルグイユはどこだ?」
「王様に用ですか?賞金稼ぎさん」
「仕事をもらいに来た」
目の前の部下の死体を眺めながら、マクア星の大臣・ジンロはにやりと笑った。
「悪いが今、王様は留守でねぇ」
「関係ない。指輪を持ってきた」
「12個集めれば何でも叶うっていう、指輪ですよね」
「欲しいだろ?」
「仕方ない。お通しします。あなた方の実力は今、見させて頂きましたので」
ジンロはネイビーピューマたち7人を城内に迎え入れ、門番に死体の山の片づけを命じた。
ピューマはマクア星の空を見た。太陽は1つだ。ふと、ドラコに訊いた。
「おい、ドラコ」
「なんだ、お嬢」
「太陽が3つの星ってあるか?」
「……さぁな」
「スティーブは死んだ。だが俺がネイビー・ピューマの名を継いだ。俺の心の中で、スティーブ・カルティエは生きてる」
ドラコが笑った。
「珍しくおしゃべりだな。夢のせいか?」
ネイビーピューマ……イリーゼは間を置いて、答えた。
「かもな」
ピューマたちは客室に招待された。ジンロがガルグイユの予定を言う。
「王様は現在バザラジア星においでです。あなた方の事は知らせておきますので、3日ほどお待ちを」
ドアが閉まった。ピューマは武装を解かず、壁に背を預ける。
「臭くないか?」
仲間の一人・ブルーティクスが返事をした。青い服を着た、スキンヘッドの男だ。
「どんなニオイだ?」
ピューマはブルーティクスを無視してモーリスに話しかける。
「昨日ガルグイユに連絡入れたのは、お前だ。モーリス」
モーリスはびくりとする。ドラコが横目で見る。ピューマが続ける。
「ただ寝てるだけと思ったか?マヌケめ」
モーリスがビームガンを取り出した瞬間、ピューマはモーリスの眉間にビームを撃ち込んだ。叫びにならない叫びをあげて、倒れ込むモーリス。ピューマはモーリスの死体から通信機を取り出し、ガルグイユに直接連絡を入れた。
「俺は賞金稼ぎだ。今すぐ来い。でないと、マクア星が死体の山になるぞ」
ピューマはそう言って、通信機を地面に落とし、踏みつぶした。
「そういう無謀、嫌いじゃないぜ」
ドラコが笑って言った。ピューマは指輪を3つ取り出し、ドラコを見て言う。
「指輪は潰す。そのうちな」
つづく




