#3 旅人
その惑星は赤く輝き、ソドムと名付けられている。
かつてアリーヤが戦った、宇宙犯罪者デッド・オリオンの基地がそこにあった。
デッド・オリオン幹部であり地球へ派遣されていた、司令官ナンバー06と、その部下ジュリアが、基地に帰還した。
「リストに御座います、地球人の子どもを全員連れてまいりました。」
06は得意げに、デッド・オリオンのボスに報告をした。オリオン座のマークをつけた玉座に座るオリオンのボス。
「ふん、子どもか。強制労働所まで連れて行け。」
「は?と、申しますと……」
「さっさとつれて行かんか!いいか?ユルグとドグマを失望させるな」
ボスは叫んだ。ナンバー06は不服そうに、さらって来た200人を強制労働所まで連れていくよう、部下のジュリアに命令した。
06とジュリアは廊下を歩きながら、その場を去った。
「ふん、リストだと?そんな役にたたん指示を誰が出した?我らの目的は銀河征服!時空移動システムにしても、我らが新たな領域、領土を得るために使用したのだ。それを破壊されたばかりか、土産は役に立たん地球人の子どもとは、これがユルグに知れたら、デッド・オリオンの恥さらしよ!より多くの資源を発掘し、保有する事によって、我らは栄えるのだ!」
組織のボスはそう言って、ナンバー06を謹慎処分にした。
宇宙。それは光と闇が混ざり合う世界。ピンク色に発光する飛行物体が、緑豊かな惑星ブルームへと向かっていた。
セリアとリリイ、エドナは医学研修生である。3人は、惑星ブルームの森林でピクニックをする事にした。
「キレイな森ね」
「あそこに川も見えるよ!」
リリイとエドナは、はしゃいでいる。
「2人ともはしゃいじゃって。川なんかコロニーにもあるでしょ」
セリアは遠くから、2人の様子を見ている。
3人は宇宙の人工居住地・スペースコロニーから来たようだ。
2日前、リリイとエドナは惑星ブルームにある森林でのピクニックを企画し、セリアも参加することになったのだ。
「くっだらない!森なんて何がいいの?スペースコロニーの最新の設備の方が、断然いいに決まってるわ!」
そんなセリアをよそに、2人は川で遊んでいる。
リリイとエドナは、森で洞窟を見つけた。
リリイが言う。
「この洞窟、何かいるかしら?」
エドナが返事をした。
「幽霊が出たりして」
2人の会話にうんざりしたのか、セリアが口をはさんだ。
「幽霊ですって?バカバカしい!入ってみれば?」
セリアたちは洞窟へ入っていった。
リリイが腕時計型の機械で地面を照らす。
「見て!足跡があるわ!」
洞窟を照らすと、何者かの足跡が続いていた。
するとその奥の地面には、落とし穴のような、大きな穴があった。
セリアは言った。
「あら、幽霊は穴に落ちちゃったようね!無様だわ!」
セリアがそう言った瞬間、彼女は足を滑らせ、そのまま、落とし穴に落ちてしまった。
穴の向こうは洞窟の出口になっており、そこには苔の生えた森が広がっていた。セリアは完全に迷ってしまった。
と、そこへ惑星ブルームの宇宙ジカが駆け寄ってきて、セリアに対して威嚇した。ブルームの宇宙ジカはこの星に生息する爬虫類。緑の眼は怒りに染まり、今にも突進してきそうだ。セリアは戸惑う。
「ちょっと、何!?」
「静かに!」
ふと、彼女の背後から声をかけた者がいる。
「そっと、立ち去るよ」
2人は静かに後ずさりした。宇宙ジカは襲ってこず、やがて森の奥へと去っていった。
セリアに声をかけたその人物の案内で、セリアはリリイ、エドナと合流出来た。
「Hi! 私はアリーヤ!旅人さ!」
アリーヤは空腹に困っていた。
森の中で謎の木の実を見つけたが、警戒して食べずにいた。
「その実は毒の実よ。食べちゃダメ」
リリイは言った。リリイは、アリーヤにパンやサラダなどをご馳走した。
その代わりにアリーヤは、リリイやエドナ、セリアの集合写真を撮り、3人に与え、こう言った。
「記念にどうぞ」
写真を受け取り、エドナはたずねる。
「アリーヤはどこから来たの?」
「地球だよ!宇宙を平和にするために、旅をしてるんだ!」
アリーヤは答えた。
「宇宙の平和?」
「そう!みんなの笑顔を守ります!」
リリイやエドナとすっかり打ち解けたアリーヤ。
ただし、セリアだけは彼女と打ち解けようとはしなかった。
その様子を、足跡の主であろう人影が、森の奥で見張っていた。
夜、その人影は動き出した。人影はアリーヤ達のいるテントに侵入し、近くにいるエドナの手を取り、彼女をさらった。
「だれか、助けて!」
エドナが叫んだ。
リリイがその様子を目撃し、セリアとアリーヤに伝えた。
「大変!エドナがさらわれたわ!」
セリアは頭をかきながら、リリイに言った。
「コロニーのケーサツに届け出すにも遅くなるし」
アリーヤは立ち上がる。
「私がエドナを助けに行くよ!」
リリイが止めに入る。
「まって、アリーヤ!危ないわよ!」
リリイが止めるのも聞かず、森へと進むアリーヤ。
けもの道を見つけ、やがてアリーヤは宇宙人の本拠地であろう廃墟にたどり着いた。
「ふつう、廃墟には持ち主が居るから入っちゃダメなんだけど、ここには警察も居ないし、エドナを助けなきゃ!」
そう言って入口に入るアリーヤ。そこで、暗闇で青白く発光する奇妙な宇宙人に、アリーヤも捕まった。
その頃、惑星ソドムでは……
「何、ナンバー06が捕まえた捕虜が逃げた?」
オリオンのボスが叫んだ。
「ナンバー06が捕らえた200人のうち、7人が逃げた模様です」
オリオン幹部であるナンバー01が答えた。
「ええい、捕まえろ!」
デッド・オリオンのボスは、怒りのキモチでいっぱいだった。
つづく……
注・廃墟には持ち主がいるので、入らないようにしましょう。誰かが廃墟に連れ去られたら、ケーサツを呼んでね。
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