#28 ホノカとの再会
惑星・地球軌道上。漆黒の宇宙に浮かぶ白銀の巨体。電脳戦艦プロメは、地球防衛の要にして、人類の叡智の結晶。それが今、人類に牙を剥こうとしていた。
A国。とある高等学校から友人と別れて、一人で下校中の女子生徒がいた。名前はホノカ。黒髪の三つ編みヘアの彼女は、夕暮れの中、車通りの少ない道路を歩いていた。毎日が物足りない。学校生活は苦ではないが、単調な毎日だった。期末テストが終わり、春休みに入ろうとしていた。あと1年で、学校を卒業する。友達ともあと1年でお別れだ。連絡先の交換はもちろんしている。だが、友達も進学とか就職活動で忙しくなるだろう。
「将来ねぇ、どうしよっかな」
卒業1年前になっても、ホノカには将来のビジョンがなかった。安定した生活のためには、将来のことはきちんと考えて行動しなさいと、先生も親も言ってくる。正直、うるさかった。あの人達が敵ではないのは分かる。分かるのだが、分からなかった。自分自身が何者なのか、ホノカは分からなかった。宇宙へ行きたい、と正直に答えたら、宇宙飛行士になりたいならもっと頑張りなさい、あるいは、高校生なんだからもっと現実的な夢を追いなさい、と言われた。空を見上げるホノカ。半月前に転入して、その後すぐに転校した親友がいる。ホノカは親友の顔を思い浮かべた。
「ホノカ」
背後から声がした。ホノカはハッと目を見開いた。聞き覚えのある声だ。振り向いた。
「アリーヤ!」
親友だ。半月前に転校した親友が、そこにいた。アリーヤ・カルティエは、驚きの表情を浮かべるホノカに駆け寄ってきて、ハグをした。
「ただいま、ホノカ。」
ホノカもアリーヤをハグした。
「アリーヤ、戻って来たの?」
「必ず戻るって、言ったでしょ?遅くなって、ごめんね」
「もう2度と会えないかと……」
「大げさだなぁ、ホノカは。ちょっと宇宙に行ってきただけだよ」
2人は歩きながら雑談をした。
「それでね、進路の先生がうるさいの。面接ではおじぎの角度がどうとか、なんか色々言われちゃってさ……」
「そうなんだ」
アリーヤは相槌をうって、ただ聞いていた。ホノカはアリーヤの手を引いて、近くの公園に行こう、と誘った。
「この近くにサヤカ公園があるんだ。そこで話しようよ」
ホノカはコンビニでサンドイッチを買って、公園でアリーヤに半分分けた。
「はい、アリーヤの分!」
「ありがと、ホノカ」
アリーヤはホノカの頬に軽くキスをして、サンドイッチを食べ始めた。ホノカが訊ねる。
「アリーヤはさ、宇宙に行ってきたの?」
「うん。惑星コクガに行って、銀河を救ってから2,3個の惑星で救助活動してた。」
「すごいね。コクガって聞いたことない星だけど、どんな星なの?」
「彫刻が盛んな星だよ。コクガ星人の彫刻家が、他の惑星の依頼主さんをモデルにして、彫刻を彫って売ってるの」
「へぇー、面白い星だね!私も行ってみたい!」
「今からだと10日はかかるよ?」
「あ、それはちょっと困るかも。私、学校あるし。月とか火星は行ったの?」
「月と火星かぁー、そういえばまだ行ってないなぁ」
「へぇー、以外!」
「そう?」
2人が笑いあってると、夕陽が沈んで来た。
「そろそろ帰らなきゃ。アリーヤ、連絡先、交換できる?」
「うん!」
アリーヤは小さなデバイスをホノカに手渡した。スマホではない。ホノカが訊いた。
「これは?」
「宇宙にいても通話ができる宇宙電話だよ。ホログラムで顔も見れる」
「すごいね」
「そこのボタンを押すと私と連絡できるから。出られる時とそうじゃ無い時があるけど、その時は折り返し連絡するよ。じゃ、帰ろっか」
「あのさ、アリーヤ」
「何?」
「良ければさ、今から家、来ない?」
「ごめん。今日はママの家に泊まるんだ」
「……そっか。」
「その変わり、さっきあげた宇宙電話で連絡するから、明日会おうよ!」
「……分かった。」
ホノカは手を振って、アリーヤと別れた。ホノカは自分の心の中の、周囲の大人に対する敵意と一人で戦っていた。表向きは大人たちに従順で、でも、将来の夢も計画も何もないから、アリーヤの宇宙の話を聞いて、彼女がうらやましく思えた。
「私も、宇宙に行きたいな」
ホノカはそう言って、アパートの3階のドアを開けた。
某国。ホノカがいるA国とは遠く離れたこの国には、民間人立ち入り禁止の機密軍事施設エリア・63がある。そこの滑走路に、電脳戦艦プロメがあった。某国大統領は軍人たちにこのプロメの説明をした。
「電脳戦艦プロメは、最新型AIを内蔵した我が国の最高機密である!敵軍も、宇宙からの侵略者も、巨大サメも、このプロメのAIが適切に分析して、狙った的を的確に破壊する。諸君、人間が戦う時代は終わったのだ。これからはこのプロメが、我が国の、否、我らの地球の平和を作るのだ!」
大統領の説明が終わると、軍人の一人が訊いた。
「そのプロメが、他の星に攻め入る可能性は?」
「それは無い。プロメの目的はあくまで地球防衛だ。侵略されたら別だがな!」
大統領が笑い声を上げると、聞いていた軍の人間たちも、一斉に笑い出した。質問者を除いて。
「侵略されたら別……か」
A国の夜。ホノカは部屋で勉強していた。壁にはアリーヤとホノカが並んだ写真が貼ってある。ふと、着信音が鳴る。スマホではない。ホノカはアリーヤがくれた宇宙電話をタップする。すると、ホログラム映像でのライブチャットが始まった。
「やっほー、ホノカ!明日の待ち合わせ場所なんだけどさ」
「すごい!ホントに通話できてる!」
「宇宙の技術はすごいでしょ!ホノカはもう晩御飯食べた?」
「ううん、まだ。アリーヤは?」
「さっき朝ごはん食べたよ!ママの家って遠いからさ、時差があるんだよね」
「んー、よくわかんないけど分かった!明日会えるってことだよね、楽しみ!」
晩御飯を食べたホノカは、久しぶりに会った親友と、夜遅くまでチャットをしていた。
つづく




