第二章 第六十五話 異変~トラブルの連続~
お待たせしました!
~アレグサンダーside~
グランに頼まれてフレッドと二人で薪を拾いに来た。
ここの森には何度か騎士団の大規模演習に参加させてもらった時に来た覚えがある。
その時はここまで静かな森ではなかったのだが……
「なあフレッド、少しこの森は変だと思わないか?」
「うーん……そういわれてみれば確かに少し静かすぎるかもな」
「私もそう感じた。ここの森にはふつうは聞こえてくるであろう鳥のさえずりや獣の声、魔物の気配など生命の音がない」
「もしや……また、スタンピードか?」
「それか何者かが大規模な魔法を発動している可能性もあるな」
「何にせよ不気味なことに変わりはねぇな……。早めに野営地へ戻るとするか」
「賛成だ。ある程度薪も集まったことだし、そろそろ戻るとしよう」
「じゃあせっかくだし競争しないか?身体強化魔法のみ使用可能で、先に野営地についたほうの勝ちだ」
「いいだろう。まあ、また私が勝つだろうがな!」
「俺もグランに鍛えられてるんだ!この前の大会みたいになるとは思うなよ?」
そういった私とフレッドは身体強化魔法を発動しようとし、それを何者かに阻害された?
とっさに近くにあった木に向かってほかの技能も試してみる。
……全てが不発。
どうやらフレッドも同じのようだ。
二人で周囲を警戒し、全力でグランから教わった索敵魔法を発動する。
なぜかこちらは発動が成功し、周囲の状況を把握する。
「どうやら囲まれているみたいだ、フレッド」
「そうみたいだな、だが俺とアレグがいるんだ。負けることはないさ」
!?何者かがこちらへすごいスピードで迫ってきている!?
「フレッド!」
「ああ!」
警戒していた先に現れたのはグランが今朝契約した神獣、ハクであった。
***
~グランside~
グランはハクとフブキに指示を出すと早速行動を開始した。
グランはティナの魔力反応を探りながら転移を使用し、ティナたちのもとへと移動しようとした。
……が、転移は発動しなかった。
グランの転移魔法は先の学園生徒会長戦を経て進化していた。
名前は変わらないが、転移使用者が一度訪れたことのある場所と、転移使用者が知覚できる魔力反応があるところの付近に転移できるようになった。
今グランが発動したのは、ティナの魔力反応を追って座標を設定した。
そのためティナの魔力反応が途切れていることになる。
本来魔力反応とはとても隠匿や完全な消去が難しいものであり、高位の術者が隠匿魔法を発動させたとしても少しは魔力反応が残るものである。
また魔力反応が消えるときは魔力が完全になくなった時、つまりそのものが亡くなる時である。
よってグランの力量を超える術者が隠匿魔法を発動し、グランがティナの魔力を一時的に感じ取れなくなっているだけか、圧倒的な強者や魔物を前にティナたちが為す術もなく敗北したかの二択になる。
「みんな無事でいてくれよ……!」
グランは転移での移動を諦め、強化魔法を多重発動し、森を駆けていった。
***
~???side~
「聖女様、各員配置完了いたしました。また大規模認識阻害魔道具、魔力阻害結界、全能力低下の広域デバフ魔法、ベルセリア領にて捕縛された盗賊の頭から回収した技能封印の広域発動、全抵抗の発動も併せて完了しました。」
「ご苦労様です。あなたも持ち場に戻ってください。……ご武運を」
「はっ!聖女様もご武運を」
「……やれやれですね。あの御方も人使いが荒いです。……まあ、与えられた仕事はこなしますけど。さて私のほうも仕上げといきますか。固有技能聖域発動 対象指定:朝比奈陽翔」
***
~ティナside~
私とカノン、シャミア、サリーネはグランに頼まれて周囲の探索を行っていた。
私とカノンはグランと一緒に冒険者として旅をしたことがあるのである程度探索の心得はある。
また私は昔から故郷の村の周囲にある森でよく友達と遊んでいた。
そのため森に関してはこの中の誰よりも詳しいと自負している。
何なら森に関しての知識はグランにも負けてないんじゃないかなぁ……
それはさておき、シャミアとサリーネは森の中を歩いたのは初めてなのか、興味深そうに周囲を見回しながら楽しそうに歩いていた。
私たちが今回の探索で見つけたものはたくさんある。
薬草、果物、山菜などの森の恵みから道中で倒した魔物の素材まで本当にたくさんだ。
見つけたものはグランがくれた魔法鞄に収めていく。
そうこうしているうちにだいぶ野営地から離れてしまったみたいだ。
結構時間も経っているし、そろそろ戻ったほうがいいかも。
私は三人を見ながら話し始める。
「カノン、シャミア、サリーネ!そろそろ戻ろう」
「!結構遠くまで来たみたいね」
「本当ですね!森の中を歩くのは新鮮で時間を忘れてしまいました」
「私もお姉様たちと探索できてとても楽しかったです!お兄様は料理もとてもお上手ですし、あまり遅くなるとほかの皆さんも待たせてしまうので早めに戻りましょう!」
「じゃあスマホの転移を発動させるから私の周りに集まってね!」
「「「了解」です」」
「準備はいいね?転移」
転移は発動しなかった。
……スマホが壊れた?
いやいやそんなことはないはず……
「あれっ?」
「転移できませんでしたね」
「……なんかこの森ちょっとおかしいかも」
「「「ティナ?」」お姉様?」
「さっきからちょっと静かすぎない?もうちょっと生き物の気配とか匂いとかがしてもいいのに……」
「確かに言われてみるとティナお姉様のいう通りかもしれません。さっきから周囲の魔力も感じられません……」
「お嬢ちゃんたち、ちょーっと気が付くのが遅かったかもな」
「「「「!?」」」」
「……あなたは?」
「俺はグラハム教枢機卿のクリフっつーもんだ。そこの神狐族の嬢ちゃんに用があってきた。っと、ああ王女様たちにそこの貴族の嬢ちゃんもついでに一緒に来てもらおうか」
「……っ!……こんな少女たち相手にずいぶんとたくさんのお仲間を連れてきたのね」
「大の大人が恥ずかしくないのですか?」
(だめっ!技能は使えないし、魔法も使えない……)
(このままだと私たちは……)
突然私たちの周りに現れたのは武装した神官風の男たち。
その数はなんと20人近くだ。
転移も封じられてるし、なぜだか技能も発動できない。
でもこの中でスキルと魔法を除いた武術が秀でているのは私だ!
カノンやシャミア、サリーネをどうにかして守らないと!
きっともうすぐグランが来てくれる!
そんなことを考えているのが伝わったのかクリフは笑みをこぼした。
その後、私たちはとんでもない映像を見せられてしまう。
それは頼りにしていたグランがクリフの仲間と思われる男たちに敗れている姿だった。
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