第二章 第六十四話 不穏~嵐の前の静けさ~
お待たせしました!
グランたちが水都へ向けて出発してから数時間が経ち、日も暮れてきた頃、そろそろ野営をする場所を探すことになり、馬車を減速させた時だった。
「日が暮れる前に野営を組もうか。今日はここで1泊しよう」
グランがそう呼びかけると馬車に乗っていたみんなが降りてきた。
「グラン!今さらだけど何この馬車!王家で使っているものよりも断然快適だわ!」
「お姉様!快適なんてレベルの話じゃありません!これは世の中の常識を大きく変えるいわば革命です!」
「どうしたの?2人とも落ち着いて」
「落ち着いてなんかいられません!」
「そうよ!あなたはなんてものを作ってしまったの!?」
シャミアとサリーネが話していたのは馬車のことだ。
グランが工房で購入した馬車はもはやただの馬車とは呼べない代物へと生まれ変わっていた。
もちろん外見は普通の馬車だ。
しかし内装は外見から想像できないほど広く、またグランが王都で買い漁った家具や小物、インテリアを設置し、まるで家のようになっていたのだ。
グランは馬車を改造する際に外装には大量の防御魔法や各種結界魔法を重ねがけし、内装には時空魔法を使用して、車内空間を拡張していった。
また、回路を使用し、電気と水道を通したため、利便性は向上した。
むしろその辺の貴族が所有する屋敷よりも豪華な内装にシャミア、サリーネのみならず、ティナ、ナミア、エリザベートも放心してしまい、しばらく馬車のリビングでソファに座っていた。
ちなみにフレッドリックとアレグサンダーは作成過程を見ていたためそこまで驚きはなく、カノンは実家の馬車が同じように改造されていたのを見ていたためこちらも驚きはなかった。
また、馬車内の部屋には扉がいくつもあり、それぞれの個室やキッチン、お手洗い、挙句の果てには男女別の大浴場までついていた。
この事を知った女性陣はさらに驚きつつも喜び、自分の部屋を選びに探検へ行ってしまった。
そんなこんなで泊まる場所を確保した一同はシャミアとサリーネの希望により、外で夕食の支度をしていた。
「てっきりテントでも張って野営をするものだと思ってたから、ベッドで眠れるのは嬉しいね!」
「そうね、ナミちゃんの言うとおりだわ。これもグランのおかげね!」
「しかもあの冷蔵庫も……グランは、よくいろいろ作ったよね!」
「あれは本当にたまたまだよ。まさか魔石が自分で作れるとは思わなかったからね。雷属性を付与した魔石と回路の魔法を使えば電化製品が使えるし、氷属性の魔石を使えば、冷凍庫も問題ないからね」
「しかも驚きなのが、魔石を作るのがナミちゃんが一番上手だったことね。まさか魔法無効化が上手く作用して魔力を溜められるなんて」
「いやーそんなに褒められると照れるね//」
「ひとまず夕食の準備だけしちゃおうか」
「「了解!」」
グランたちは野営の準備をするにあたって、役割分担をして全員で夕食の準備をしていた。
グラン・ナミア・エリザベートは調理、ティナ・カノンは周辺の警戒や見回り、シャミア・サリーネはティナやカノンと一緒に見回りをしながら薬草や木の実などを採集していた。
またフレッドリックとアレグサンダーには薪になりそうな木の枝や木の葉を集めてもらっている。
ちょうどよく転生組三人が揃ったので色々共有するチャンスだと、ハクやフブキも交えて話をしていた。
ハクとフブキにはグランたち三人が転生者であること、神々と交流があること、ステータスがそれに付随して人間離れしていること、またこれらのことを他の人たちには話していないことを共有した。
「なるほど、主様たちはそんな経緯でこちらの世界に……」
「もし叶うのなら我らも是非グラン様の世界に行ってみたいのだ」
「いや……流石に難しいんじゃないかな?地球では馬を連れて歩いている人は見たことがないし、何より僕らも行方不明扱いになっているからね」
「そうね……もう少し小さくなれるのならあまり目立たずに行動できそうではあるけどね」
「確かに犬なら結構ご近所でも見かけた気がするし、小型犬ぐらいのサイズになれればごまかせるかもね!あとは絶対にかわいいと思う!」
グランたちがかつて住んでいた地球の思い出話をハクとフブキに語っていると、エリザベートが何かを思い出したかのようにハクとフブキに問いかけた。
「それよりもさっき召喚したときに、ハクがティナとカノンのことを見て、神狐族の娘と聖者の末裔って言っていたけど、どういうことなのかしら?あと加護のことも言ってたわね」
「ああ!確かに言ってたかも!神狐族の娘と聖者の末裔かぁ……気になるね」
「あれに関しては言葉通りの意味であるよ。グラン様は人の身でありながら力量だけで見ればほぼ十柱の神々と同じ域に達しているのだ。しかし神へと成るには神格や魂の格がまだまだ足りていないのだ」
「ですが主様は神威を無意識でも扱えるほど大量に発しています。神威はある程度のイメージや、その使用者の想いに応じて効果が変わるものなので、きっと主様のナミア様やエリザベート様、ティナ様やカノン様を大切に想う気持ちが今回の加護へと繋がったのでしょう」
「「グランが大切に想ってくれてる……?」」
「それはもちろんそうだよ!みんな大切な友達だと思っているけど、やっぱり二人は前世からの付き合いで大切な幼なじみだからね。二人とも家族みたいに感じているよ」
「「……///」」
(この様子を見ているとナミア様をはじめとした皆様の想いが届く日は遠そうですね……)
「!みんな話はここまでにしようか。どうやら厄介なことに巻き込まれそうだよ」
「グラン様!これは……」
「ああ、囲まれているな……」
グラン達が加護の秘密や、ティナとカノンについて話をしている最中、グランの警戒信号に反応があった。
どうやら少し遅れてハクとフブキも気が付いたみたいで、二頭とも険しい表情をしていた。
「ハクはフレッドリックとアレグサンダーを呼んできてくれ!フブキはナミアとエリザベートの護衛をしつつ周囲を警戒していてくれ!僕はティナたちを迎えに行ってくる!」
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