第二章 第六十二話 出発~いざ水都へ~
お待たせしました!
色々なことがあった一日だったが、無事に買い物を済ませた一行は翌日の出発に向けて早めに解散した。
みんなと寮の前で分かれたグランは自身の部屋に戻り、旅行の準備をするのであった。
するとティナから電話がかかってきた。
「もしもし、今時間大丈夫?」
「どうしたのティナ?急ぎの用事なら今からそっちに行くけど」
「ううん……そんなに大したことじゃないんだけどね?」
「?」
「グランって水都に行ったことあるかなってふと思ってさ?ほらグランの転移って一度行ったことがあるところか、行ったことのある人に記憶だけもらって転移する感じでしょ?」
「あっ……」
***
翌朝寮の前に集合した全員を見渡しながら、グランは告げた。
「この中に水都行ったことあるよーって人いる?」
「私はないかなぁ……」
「私もないわね」
「私たちも王都から出たことがないので……」
「お兄様もしかして……」
ナミア、エリザベート、シャミア、サリーネは行ったことがないと告げ、フレッドリック、アレグサンダーは首を横に振った。
一方事情を察したカノンはグランへと問いかけた。
「一つ忘れてたことがあって……僕の転移は一度行ったことがあるところにしか行けないんだ。それか言ったことがある人の記憶を魔法で追体験させてもらえればそれでも転移できるんだけど」
「これに関しては私も昨日思い出してグランに確認したんだけど……誰も行ったことがなかったみたいだね……」
「というわけで行きだけ馬車での移動になっちゃうんだけどみんな予定は大丈夫?」
「俺たちは問題ないぜ!正直馬車での旅もしたいと思ってたからちょうどよかったぐらいだ」
「私たちも問題ないわ。ただ期間が長くなりそうだし少し買い足したいものがあるわね」
「確か王都から水都までは二日ぐらいかかるはずなので一度王城のほうにも報告に行かなきゃいけませんね」
「みんなごめんね……。すっかり忘れていたよ……」
「大丈夫よ。グランのせいじゃないわ」
「そうです!むしろ馬車のほうが旅っぽさが出て楽しそうです!」
「みんな……!ありがとう!お詫びじゃないけどこっちのほうでも快適に旅を楽しめるように工夫してみるよ!」
グランは重大なことを忘れていた。
それは固有技能時空魔法に内包されている転移が、一度訪れた記憶のある場所へその魔力反応を目印に座標を設定し転移できるということだった。
流石にグランでも前日の夜に思い出してから水都まで行くことは不可能であった。
幸いこの連休が一週間近くあり、水都まで二日間でたどり着くため、帰りは転移で帰ってくるとしても問題なく旅行に行ける。
全員が馬車での移動に賛成してくれたこともあり、男性陣は馬車と道中の食料の手配に、女性陣は足りないものの買い足しに向かった。
王都西門に集合することにして一度解散したグランはフレッドリックと馬車の手配へ向かった。
「すいませーん!馬車を一組買いたいのですが……」
「おっ!いらっしゃいグラン!今日はどうしたんだ?」
「実は……」
「そういうことならこいつだな。ちょいと高いが魔法銀を混ぜ込んだ鉄製だ。頑丈さで言ったらこいつが一番よ。おまけに軽量化の付与もしてあるからな」
「じゃあそちらを一つとあとは……」
グランとフレッドリックが訪ねたのはグラン行きつけの工房だった。
グランが何か大きなものだったり、作成に人手が必要なものを作るときに利用している。
本来であれば工房の使用はその店の職人のみなのだが、以前グランが作成した魔道具をこの店に持ち込んだところ技術提供をする代わりに工房を貸してもらったのだ。
それ以降こうして付き合いが続いている。
二人は工房の商品を見ながら馬車やそれ以外で役に立ちそうなものも購入していく。
最初は乗合馬車で移動しようと思ったのだが、王女様が二人もいるのでは流石に無理だと考え、いっそのこと自前で馬車を持つことにしたのだ。
「じゃあ全部で大金貨3枚だ」
「ありがとうございます!また今度工房をお借りしてもいいですか?こちらにいる彼に魔剣を作るので……」
「おう!大歓迎だぜ!魔剣は……出来ればこっちにも下ろしてくれると嬉しいが……」
「今は手持ちの素材もそんなにないのでそちらとお礼はまた別の機会にお願いします。ではまた!」
店を出るとフレッドリックは驚いた様子でグランに話しかけた。
聞けば今の店は王都でもかなり有名でその店主はとても気難しく、頑固なことで知られているらしい。
そんな彼と親しげに話していたのに驚いたらしい。
その後食料を調達しているアレグサンダーと合流し、王都西門へと向かった。
「まさかグランがあの店の店主と知り合いだったなんてなぁ」
「やはりグラン殿はすごいね。私も頑張らなければ……」
「ちょっとしたきっかけがあって仲良くなっただけだよ。それよりそろそろ馬車の方を完成させちゃうからちょっとだけ離れてて!」
「そういえば馬はどうするんだ?」
「そこをちょっと工夫しようと思うんだ。でもまずは内装を改造して、外装もいじろうか、2人とも手伝って!」
「「了解」」
***
「それでこれができたと……」
グランたちが馬車と食料を調達している間に服や雑貨などの日用品を買い足していた女性陣が王都西門にやってきた。
そこには疲れ果てたフレッドリックとアレグサンダーが転がっており、近くにはグランと鉄の箱があった。
グランに案内されて鉄の箱のなかに入ると外見からは想像できない広さの部屋が広がっていた。
また部屋にはいくつか扉がついていて、それぞれの個室や、お手洗い、挙句の果てには大浴場までついていた。
「相変わらずグランが規格外のことをやったのは理解したわ。ただ馬はどうするのよ」
「馬は買うより召喚したほうがよいかと思ってさ。全員そろったみたいだし今から召喚しようと思うよ」
グランはエリザベートに対し、そのように回答し、魔法を唱え始めた。
以前グランはエリザベートの従魔化を魔法で真似しようとし失敗に終わったが、今回は召喚魔法で試してみたのだ。
エリザベートの従魔化と異なるのは魔力の消費量である。
エリザベートの従魔化は召喚時と契約時に魔力を消費し、顕現維持には魔力を消費しないが、グランの召喚魔法では契約時に魔力を消費しない代わりに召喚時と顕現維持に魔力を消費する。
そのため召喚魔法は一度契約した後は必要時に召喚するのが一般的だ。
グランが魔法式に魔力を込めるとそこには純白の如き白い毛並みを持った白馬が2頭顕現した。
「我らを呼んだのは貴様か?」
「ああ!僕はグラン。よろしくな!」
「ああよろしく頼むぞ。一つ尋ねたいのだが、貴様とそこの2人から神威を感じるのは一体……」
「「「?」」」
「ちと失礼するぞ」
そう言うと白馬はグラン、ナミア、エリザベートを観察し始めた。
グランたちは白馬を不思議そうに見つめながら混乱していた。
無理もないだろう。
誰だって馬がいきなり話しだしたら驚く。
それは召喚したグランも同じだった。
先程までは特に違和感を覚えず、普通に会話をしていたが落ち着いた今疑問が一気に押し寄せてきている。
(どういうことだ!?普通の馬を呼び出したはずが神々しさを覚えるほどの白馬が2頭も……)
グランは白馬に気づかれないように鑑定魔法を発動した。
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