第二章 第六十七話 霊約~誓約と盟約~
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グラハム教の武装集団から襲撃を受けているグランたちは、聖女リーシアによってその能力を封じられていた。
グランを捕らえるため、イリナとエリナは攻撃を絶え間なく仕掛けてくる。
それを技能なしで捌いているグランも尋常ではないが、流石に疲れてきたのか、隙を見せてしまった。
「しまっ……!」
「「これで終わりです!」」
二人の持つ剣がグランを貫く寸前にグランの周囲を光が包み込んだ。
周囲の景色が白く染まり、イリナ、エリナの姿が見えなくなったタイミングで二つの人影が見えた。
二人の存在をすっかり忘れていたグランは、状況も忘れて微笑みかけた。
「ありがとう。また助けられちゃったね、陽菜、茉菜」
「当然です!はる兄を守るのは妹の役目ですから!」
「そうそう!まったくはる兄さんはすぐ危ないことに首を突っ込んで……」
「……ごめん。でもみんなを守るために必要だったから」
「わかってるよ、はる兄は無意味に何かをする人じゃないから」
「とにかく今はあのむかつく女どもをぶっ潰しちゃって!」
「前には伝えられなかったけどこの力は長く発動できるものじゃないから……」
「早めに解決方法を見つけてよね!」
「了解!じゃあ早速やっちゃうよ!」
グランは久しぶりに会った陽菜と茉菜に感謝を伝え、二人から離れた。
これからすることは正直グランでもうまくいくかどうかわからないものだ。
その名を精霊霊約。
文字通り精霊と霊約を交わし、自身の力とするものである。
精霊契約は精霊魔法を使用する際によく交わしている簡易的なものだが、精霊霊約は簡易的な契約ではなく、魂レベルで結びつき、両者が死ぬまで永遠に続くものである。
「我求む。古より共に歩みし偉大なる精霊よ、我の望みに答え、今ここに顕現せよ。我が求むは霊約なり。悠久の時を共にし、苦楽を分かち合う者となれ。」
グランが召喚呪文を唱えると魔法陣が構築され、膨大な魔力が吸収されていく。
「私たちも手伝うよ!」
「魔力をはる兄さんに譲渡するね」
陽菜と茉菜から魔力を受け取り、さらに魔力を魔法陣に注いでいく。
やがて魔力の奔流が落ち着き、あたりが色を取り戻し始めた。
グランの周りではいぶかしそうにこちらを見てくるイリナ、エリナと驚きの表情を隠しきれないリーシアがいた。
「私を呼んだのは……あなた?」
「そうだよ。僕はグラン・レア・ベルセリア。君の名前は?」
「私?私の名前は……何だろう?もしよければグランに名前をつけてほしい」
「僕が?うーんそうだな……君の名前はヒナタ。……どうかな?」
「ヒナタ……すごくいい名前!私はヒナタ、ヒナタ・レア・ベルセリア」
「喜んでもらえて何よりだよ。さあ、ティナたちを助けに行こう」
「今ここに霊約は締結された。我らの愛し子グラン。我ら汝と共にあり」
「どうかした、ヒナタ?」
「ううん、何でもない。さあ、行こう?」
***
~リーシアside~
私たちはグラハム教にとって必ず障害となるであろう人物、グラン・レア・ベルセリアを排除するために、ダイナースへと向かいました。
偶然彼とその仲間たちは旅行中だったようで、森の中にいたのでそこで襲うことにしました。
とはいえ、彼はSSSランク冒険者。
またほかの仲間たちも彼に鍛えられ、全員が最低でもBランク程度の実力の持ち主。
そんな相手に真正面から挑んだところですぐに負けてしまうのは明らかです。
そのため私たちには今回協力者がいました。
そのものは個人的に彼に恨みがあるとか。
彼の婚約者である神狐族の娘を攫い、引き渡すことを条件に協力を取り付けることができました。
協力者が提供してくれたものは各種結界魔法と大規模認識阻害魔法を発動できる魔道具を複数個と、有名な盗賊団団長が所有していた固有技能技能封印を封じ込めた宝珠です。
どうやら協力者は他人が死んだ際にその者が持っていた技能を宝珠として取り出すことができる固有技能を持っているみたいです。
彼とは敵対したくないものです……
そんなこともあり今回の襲撃を実行しましたが、まさか貸していただいた魔道具はほとんど通用せず、宝珠を使用した技能封印もほとんど意味をなさないうちに彼が無効化してしまいました。
さらに私の聖域も一度発動しているはずなのにステータスは半減、技能もほとんどが制限を掛けられずにいました。
もう一度重ね掛けし、やっとすべてを封じたと思ったのに……なんであなたはまだ手札が残っているんですか……。
イリナとエリナが彼に止めを刺そうとした時に彼を守るかのように光が発生しました。
二人が持つ破壊と再生の技能をもろともしない不可思議な光の結界が収まるとそこには神々しいまでに美しく淡い少女が立っていました。
その少女もかなりの実力者みたいですね。
今、彼と少女は私たちが周りを囲んでいるにも関わらず、呑気に話しています。
どうやら今回の襲撃は私たちの負けみたいです。
***
~グランside~
陽菜と茉菜の手助けもあり、精霊を召喚することに成功したグランは召喚された存在が人型だったことに驚いていた。
基本的に人型の精霊は最上位に位置する精霊とされており、仮に精霊霊約で呼び出そうとしても召喚に応じてくれる存在ではない。
原因としてはグランの称号、精霊より愛されし者の影響だと考えられるが、それにしてもである。
グランは少女にヒナタと名付け、霊約を締結させた。
その副産物として様々な能力が追加されたが、ひとまずこの場を切り抜けるべきだろう。
「行こう、ヒナタ!みんなを助けに行こう!」
「わかった、グラン。あとでみんなのことも紹介してほしい」
「了解!とにかくここを切り抜けるよ捕縛魔法」
グランはひとまずリーシア、イリナ、エリナ以外の襲撃者を捕縛魔法で拘束した。
「私もっ!原初魔法 模倣」
「!?聖域が……破られた?」
「聖女様!私の技能も封じられています!」
「私も同じです!」
「ナイスヒナタ!ってことでおとなしくお縄につけ!捕縛魔法!次元牢獄!」
グランはヒナタが放った原初魔法 模倣によってリーシアたち三人の技能が無効化されたことを知ると、さっそく捕縛魔法を使い、逃げられないように次元牢獄を発動し、完全に封じ込めた。
「ありがとう、ヒナタ。おかげで助かったよ」
「どういたしまして。でも霊約に関係なくグランは私たちの愛し子だから、本当にピンチになったら助けに来ていたよ」
「多分称号のことかな?まあ、なんにせよこれからもよろしくね、ヒナタ」
「こちらこそこれからよろしく、グラン」
「じゃあ、ティナたちを助けに行こう!」
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